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言葉は一字一句厳選しよう

 あなたは温泉旅館で仕事をしています。そこは都心から少し離れており、観光地としてはあまり有名ではありません。そして建物はお世辞にも新しいとは言えないのです。特に高級旅館というわけでもなく比較的リーナズブルです。自慢は、露天風呂と、地元の新鮮なお魚が食べられるという点。部屋は、和室が中心で、カップルやご夫婦、ファミリーにもご利用いただけます。

 さて、この旅館をどのような「言葉」を用いてPRしましょうか? 例として以下の2つの文章を考えてみました。

1)都心の近くで温泉に入りたいなら××旅館へ
2)この週末は都会の喧騒を忘れて美味しいものを食べながら温泉でくつろごう

 あなたはどちらのメッセージなら「行きたい」と感じますか?

 「1」も「2」もこの旅館の特徴を述べています。しかし与えているメッセージは違いますね。「1」はその旅館を説明したもの。それに対し「2」はその旅館で過ごすとどのようなことができるというイメージを示したものです。

 1つのものを説明する時、様々な表現方法があります。では、「都心から離れている」というポイントはどのように表現できるでしょうか?

A)「都心から離れている」と事実をそのまま伝える
B)「都会の喧騒を忘れてゆっくり過ごす」と旅館で過ごすイメージを表現する
C)「遠くて不便」とネガティブに書く

 「都心から離れている」という言葉を1つとっても、いろいろな表現方法があります。「A」は、事実をそのまま述べています。これは時と場合によって使い分けるといいのではないでしょうか。例えば「東京から当旅館まで○km」などという場合は、事実を書くべきでしょう。「ランチ後に東京を出発すると、ちょうど小腹が空く頃に当旅館に到着するでしょう」と書いても、何時間かかるのかわかりません。ですが「宿泊するとどういう過ごし方ができる」ということを伝えるなら、「A」より「B」の方が適していますね。「B」を読むと「週末はゆっくり静かなところで過ごせそう」と想像できます。一方、お客様に来て欲しいという時に「C」の文章を書いてはいけませんね。これは却下です。

 とはいっても、なかなかどのように言葉を見つけていいのかわからないものですね。では、もしリンゴを紹介する場合、あなたならどのような視点で考えるでしょうか。まずはキーワードを探してみましょう。キーワードを考える時、一方から見ていても情報は得られません様々な面から評価するといいでしょう。

🍎パッと見た印象から判断する
🍎香りから判断する
🍎状態(新鮮、腐りかけているなど)から判断する
🍎産地から判断する
🍎上、横、下から見て状態(真っ赤、まだ青い、傷があるなど)を判断する
🍎切って(蜜がある、いい香りがするなど)判断する
🍎食べて判断する

 1つのリンゴでも、上記のような視点で情報を得ることができます。その中から、お客様に伝えたいこと、さらにお客様が興味を持ってくれそうなキーワードを見つけて、文章にしていくといいのではないでしょうか。

 そして、そのキーワードをより魅力ある言葉に言い換えるのです。家族や友達に伝えるなら「これ、美味しかったよ」でいいですが、それでは商品の特徴は伝わりません。そういう時、類語辞典をチェックするのもアイデアでしょう。似た言葉を探し、さらに魅力的な言葉を見つけるのも一つではないでしょうか。もちろん、普段から業界用語をチェックし、「お客様はこの言葉に反応しやすい」という情報を調査しておくことも大切です。

 書いたら読んでみましょう。スッと読んで理解できますか? あなたが「くどいな」と思うものや、「読みにくいな」と思うものはお客様も同じです。その部分は修正しましょう。もちろん誤字脱字、不適切な言葉の利用、そして違法行為にあたる表現はやってはいけません。その点もご注意ください。

 商品をPRするための文章に「正解」や「間違い」はありません。国語の授業ではないのですから、「正解は……」と突き詰めていく必要はありません。また、多くの人の共感を得ることはできるでしょうが、全員の共感を得ることは難しいでしょう。人それぞれ感じ方が違います。それぞれの人に個性があるように、感じ方にも個性があります。そのため、共感を得ることができない人がいても落ち込まないようにしましょう。めげないことも大切です

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