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これからのデジタルマーケティングに必要なのは、クッキーレスと同意管理ではなくデータ活用のそもそもの考え方という話

データとプライバシーに関する活動を始めて2年半近くが経ちました。これまでにGoogleを始めとしたプラットフォーム企業の動向を追いかけたり、

IAB欧州等のデジタル広告の規格を考えてる人たちにも話を直接伺ってきました。

 (動画:現在IAB欧州でボードメンバーを務めるTimさんとのお話)

※IAB欧州とはデジタル広告関連の企業が集まり研究や企画を考える業界団体です

2年間でデジタルマーケティングで活躍されている各国の皆様に直接お話を聞いて行った結果、デジタルマーケティング業界が考えるべきはクッキーに変わる代替手段や法律に準拠した同意を達成するCMP(同意マネジメントサービス)ではなくデータの活用方法そのものを考え直していくべきだという結論に辿り着きました。

このnoteの記事では、3つの視点からその理由を紹介していきたいと思います。

わかったこと1:今までのデジタルマーケティングはマーケティングというより販促の話

マーケティングを体現されている人にとっては馴染みのある4P(マーケティングミックス)というフレームワークがあります。古くはJames Culliton教授によって1948年に研究され、ハーバード大学のNeil H. Borden教授の「The Concept of the Marketing Mix」の論文で発表されたものです。

(動画:マーケティングミックスの短い歴史)

当初は12の要素を組み合わせたものとして考えられ、そこから少しづつ整理されて今の形に至ります。

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4つのPはマーケティングの教科書を読むとよく出てくるかと思います

マーケティングとは何かの前提を整理した上で、クッキーレスと同意の話を考えていきたいと思います。最近ポストクッキーやクッキーレス、同意管理ツールという言葉を聞く機会がデジタルマーケティングの分野で増えた気がしますが、そもそもクッキーと同意管理とはマーケティングの4Pのどこを担っているのでしょうか?

価格?

クッキーレスと同意管理が便利になると販売価格が変化していくのでしょうか。確かにターゲティングが適切にできるようになると消費者の意識も変わっていく気はしますが、CPA、CPC等の指標以外に商品価格に変化があるようには思えません。

商品?

クッキーレスと同意管理が便利になると商品の形が大きく変化するのでしょうか。これも売りたい商品が先にあってのクッキーレスと同意管理の話になると思うので、大きな変化があるようには思えません。

売り場?

クッキーレスと同意管理が便利になると売り場が変わるのでしょうか。これは可能性がありそうです。デジタル空間だけでなく、私たちが日々暮らしているようなリアルの現場で商品を見てもらうことも増えていくことになります。

販促?

クッキーレスと同意管理が便利になると販促が変わるのでしょうか。販促は一番大きな影響がありそうです。これまではお客様に直接お届けするターゲティングという考え方が主流でしたが、できる限りお客様を特定して商品をお届けするニーズは継続していきそうです。

4つの視点から個人なりに考察してみた結果、特に販促には影響がありそうでした。

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クッキーレスと同意管理の話は、マーケティング活動の中でも売り場や販促に影響がある活動と考えられます。

わかったこと2:100%大丈夫な同意フレームワークはまだ存在しない

現在IAB欧州でボードを務められているTimさんとのインタビューでとても興味深いお話を教えてくださいました。

"それには理由があって、IAB欧州はデータ管理者として定義されてしまい、それ自体にはあまり大きなメリットがないからです。 これから数年間どのようにプライバシーが担保されるのかを議論する機会を設けていくことになると思います。その中で、倫理的にどうなのか、コンプライアンスはどうなのか、ユーザーに理解してもらうにはどうすればいいのかなどが議題に上がると思います。"
"IABは透明性と同意のフレームワークによって、必要な項目を担保できるように取り組んできました。ここからは第二ステージとして、フレームワークの見直しを繰り返すことが必要になりそうです。それ以外にも、様々な意見や考え方が出てくると思います。"
"データ保護監督当局も、正しい判断ができるように人員の増強やデータ分野のエコシステム全体の理解などを進めていくでしょうし、それに合わせて議論も進んでいくと思います。フレームワーク自体を無効化するのは簡単ですが、IABは現状課題を理解した上で、どのような改善が必要かを模索し続けると思います。"

内容はこちらを参照👇

Timさんのお話から考えると100%同意を担保できるフレームワークはまだ世の中に存在していなくて、これから考えていくという話です。確かに毎回クッキーや同意バナーが出てくるたびに、果たして納得して同意しているのかと言われれば少し疑問が湧きます。

わかったこと3:クッキーレスの話はデータ保護の一部でしかない

グーグルがサードパーティクッキー廃止の発表をしてから(延長になりましたが)、クッキーレスの議論がかなり活発に行われてきたと思います。

グーグルがサードパーティクッキーを廃止すると聞いて、GDPR等のデータ保護法の問題があるという話が語られることが多かったのですが、それは本当でしょうか?

参考にフランスのデータ保護監督を行うCNILのGoogleに対する判断理由です。

クッキーという言葉は出てきませんが、透明性や同意に関する話が紹介されています。Googleがターゲティングを行う際にどういった方法を使っているのかわからないので利用者に説明してほしいという話と、しっかりと利用者から同意をとってほしいという話だと内容を確認するとわかります。

クッキー自体も問題の一つではありますが、より重要なのは利用者の方がわからない方法でデータを活用して処理していることが問題で、果たしてそれに同意が可能であるのかということだと考えられます。

これからのデジタルマーケティングに必要なのは、クッキーレスと同意管理ではなくデータ活用のそもそもの考え方という話

3つの理由からクッキーレスと同意管理だけを考えるだけでは、これからのデジタルマーケティングの動きに対応が難しいという話を紹介してきました。

もちろんクッキーレスの話と同意管理は重要な要素だと思いますが、それ以外にも考えることは沢山あります。特にデータを保護する動きと必要性が高まっているので、企業が社内でどのようにデータを利用するべきなのかを改めて考える必要があります。

どのようにデータを利用すべきなのかは、まず利用者の方からどのように同意を取得して納得してもらうかが肝心なので、プライバシーポリシーを見直したり、そもそもプライバシーポリシーを読むところから始めてみるのも良いかもしれません。

最後に

データ保護しつつも、データを利用する事業やプロダクト開発の考え方として「Privacy by Design」と呼ばれる方法があります。これは欧州のデータ保護法のもとにもなっている考え方で、「Privacy by Design」なプロダクト開発も徐々に広がってきています。

(動画:新しいイケアデータプロミスは、お客様にプライバシーと透明性を提供します)

IKEAのケースではお客様のデータを一つ一つ同意をとっていくように心がけるなど、一見無駄なコストがかかっているように思えますが、同意を丁寧にとっていくということはデータ保護の視点からはとても重要なポイントです。

ぜひ、これからのデジタルマーケティングに「Privacy by Design」な取り組みが一つでも増えていくきっかけになれば幸いです。

「Privacy by Design」に関心がある方は、気軽にお声がけください👇










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栗原宏平(Privacy by Design Lab代表 )
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