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スタートアップ国家のイスラエルがコロナ時にデータプライバシーマーケットに注目する理由
コロナ対策が長期化していく中で感染の拡大をいかに防ぐのかというのは大きなポイントになっていきます。
対策の一つとしてデータ活用と個人のデータプライバシーを両立させていくことは大きな課題の一つです。
技術的に解決できる "安全" と信頼に関わる "安心" をいかに担保していくかが問題を解決する上で非常に重要な役割を担います。
第一回はこれまでもスタートアップ国家と呼ばれていたイスラエル発のデータプライバシースタートアップ動向と変化をイスラエル、アメリカのワシントンDCとデータプライバシー、テクノロジー分野で活躍するLimorさんにお聞きしました。
Managing Director of the Israel Tech Policy Institute Limor Shmerling Magazanik データ保護やプライバシー、サイバーセキュリティを始めとして規制や政策に関わり特に振興技術分野で取り組みを行う。デジタル技術を通じた社会や経済の発展に関わり、2018年に設立したイスラエルのテルアビブ拠点の政府シンクタンクIsrael Tech Policy InstituteではManaging Directorとして活動し、アメリカのワシントンDCにあるシンクタンクFuture Privacy Forumではシニアフェローとしてローカルチャプターを立ち上げ新しいテクノロジー分野の政策を考える上でのサポートを行なっています。
データプライバシーを前提とした新たな動き
Kohei: Limorさん。貴重な機会を頂きありがとうございます。今回はイスラエルから繋いでのインタビューです。彼女はデータプライバシー分野の専門家で、政府でのプロジェクトなどにも関わっています。
こういった機会を通じて未来のデータプライバシーの話とそれぞれの国の取り組みに関して話をできれば嬉しいです。
まずは、自己紹介を宜しくお願いします。
Limor: インタビュー招待頂きありがとうございます。私の名前はLimor Shmerling Magazanikです。データ保護やプライバシー、サイバーセキュリティを始めとして規制や政策に纏わる特に振興技術分野で取り組みを行なっています。デジタル技術を通じた社会や経済の発展に関わっています。
2018年に設立したイスラエルのテルアビブ拠点のIsrael Tech Policy InstituteではManaging Directorとして活動し、アメリカのワシントンDCにあるシンクタンクFuture Privacy Forumのローカルチャプターとして立ち上がりテクノロジー分野の政策を考える上でのサポートを行なっています。
(動画:Future of Privacy Forum 10th Anniversary)
ここでは政府関係者や民間企業、市民団体や大学などの専門家を交えてデータプライバシーを前提とした新たな政策立案を支えています。
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プライバシーバイデザインやヒューマンデザインの考え方を基に新しいテクノロジーが人間中心に広がっていくような取り組みを進めています。テクノロジーを実装する際に考えられるリスクアセスメントやそのインパクト計算などを過去の経験などから事前に実施し、考えられるリスク回避選択を通じてテクノロジーが全ての人にとってよりよい形で提供される社会を目指しています。
データプライバシー領域のスタートアップ動向
Kohei: 素晴らしい活動ですね。自分の知り合い含めてイスラエル出身のプライバシーやデータ保護関連で活動されている人が多い印象なのですが、何か理由があるのでしょうか?
Limor: 考えられることとしては2018年からGDPR含めて政府中心にデータ保護に対する取り組みがさらに広がりを見せていることが関係していると思います。カリフォルニアのCCPAや他国でも同様の取り組みが始まっていたりするのでその影響が大きく、これはイスラエル国内でも同様です。
後はスタートアップを取り巻く環境も関係していると思います。既に数多くのイスラエルスタートアップが誕生していて、大手テクノロジー企業のR&Dセンターはイスラエルを中心に展開しているところも多いです。
法律面で大きな変化が起きていることに加えて、テクノロジー環境が整っているイスラエルではプライバシー分野への注目が高まっている一つの大きな理由ではないかと思っています。
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(イメージ:イスラエルでデータプライバシー分野が注目される理由)
データプライバシーを考える際に法律面だけでなく、データを取り扱うプロセスも非常に重要です。法律に準拠するだけでなく、新しいデータ処理プロセスを設計していくことがこれからは大きなトレンドになると思います。
データプライバシーに関連した動きは非常に複雑にも関わらず、データビジネスを行う上では非常に大きなインパクトがあります。エクセルスプレッドシートで管理するだけでは対応が難しく、新しいテクノロジーを活用して各国の複雑な法制度に対応していく必要があります。
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2019年にはプライバシー関連のテクノロジーへの投資が大幅に進みました。これはベンチャーキャピタルや企業もそうですが政府機関なども資金を拠出しています。2019年にはさらにレイターステージの投資、M&Aなども始まっている状況です。
イスラエル発のデータプライバシースタートアップ
Israel Tech Policy Institute、Future Privacy Forumではプライバシーテック分野に関して今は大きな期待を寄せています。例えばDuality Technologiesと呼ばれるイスラエルのスタートアップはマルチパーティ計算技術を開発しており、主にヘルスケアや金融分野での活用を進めていて最近はインテルからの出資を発表しています。
またBigIDと呼ばれるスタートアップはニューヨークに現在本社を置き、既に数百万ドルの出資を受けています。AIを活用したコンプライアンスソフトウェアサービスを提供していて、複数の企業間でのデータ連携の際にアクセス権の設定ができる仕組みなどを提供し注目を集めています。
後はD-IDというスタートアップも出てきています。ここの会社は主に顔認識や生体認識に関する顔画像の非識別化技術を開発していて、日本の凸版印刷とパートナーシップ連携を発表しています。
(動画:D-ID Smart Anonymization)
パートナーシップを通じて日本展開を計画しているということで、データプライバシー関連技術は今後も盛り上がっていくと思います。
ハイファにあるIBMのリサーチセンターやNECもイスラエルにリサーチセンターを構えていてデータプライバシー技術の研究を行なっています。これからデータの活用が拡大していく中でプライバシー関連の技術に関する取り組みは進んでいて、今回のコロナの影響もありさらに加速していくと考えられます。
プライバシーバイデザインの考え方はこれからのデータビジネスを考える上では重要な要素になっていくと思います。
Kohei: ありがとうございます。トレンドが変化してきていますね。プライバシーに関しては私たちも新しい取り組みを始めていますが、10人いれば10人の考え方がありこれといった答えを出すことが難しい分野でもあるかと思っています。
データプライバシー関連の動きの整理
イスラエルはこれまでもスタートアップ国家として注目を集めて来ましたが、データプライバシー関連分野でも次々にスタートアップが誕生しています。
特に法律面での変化は非常に大きく各企業が対策を進めていく中で世界をリードする技術がイスラエルから出てくる可能性があります。
コロナ対策としてプライバシーを前提とした取り組みを率先して始めたことも一つのきっかけになり、データプライバシーに対する関心は今後も高くなっていくのではないかと考えます。
※一部法的な解釈を紹介していますが、個人の意見として書いているため法的なアドバイス、助言ではありません。
引き続きCOMEMO記事を読んで頂けると嬉しいです。
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