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米国大統領選で争点となる民主的な政策立案に求められるものとは?

11月3日のアメリカ大統領選はコロナ下での大きなターニングポイントになる可能性があります。

今回は過去オバマ政権を始めとしてアメリカの政策の立案に深く関わってきて、現在も様々な取り組みを行うQuentinさんに米国の民主主義と政策にまつわる取り組みに関してお伺いしました。

全二回で、第一回は政策を立案する際のエビデンス設計と投票が与える民主主義への影響に関してお伺いしたいと思います。

国際デジタルアカウンタビリティカウンシル 代表          Quentin Palfrey氏                           国際デジタルアカウンタビリティカウンシルでは各国のアプリのモニタリングや調査などを実施。オバマ政権時にはホワイトハウスの科学技術政策で雇用と競争力に関わるシニアアドバイザーとして、アメリカ合衆国商務省では副法律顧問としてそれぞれのポジションを務める。弁護士、政治、政策の専門家。

Kohei: 皆様。いつもご覧頂きありがとうございます。Privacy Talkの時間です。今回はQuentinさんをお招きしてインタビューを行っていきたいと思います。これまでに米国の政策や法律に関連する動きに携わるなど重要な分野でご活躍されています。

視聴者の皆様にはQuentinさんのこれまでのご活躍と現在の取り組みをお伝えできればと思っています。今回はインタビューにお越し頂きありがとうございます。

Quentin: 貴重な機会をありがとうございます。

Quentinさんの紹介

Kohei: まずは、私からQuentinさんのご紹介をしたいと思います。これまで様々分野で取り組まれていて、是非そういった取り組みを視聴者の皆様にお伝えしたいと思います。

Quentin Palfreyさんは独立した非営利組織国際デジタルアカウンタビリティカウンセルの代表を勤められていて、世界中のアプリマーケットのモニタリングや調査、プラットフォーマーや開発者と協力して公正なマーケット作りに取り組まれています。

これまでは経済のイノベーション、雇用創出の分野で特に消費者プライバシーの観点から活躍されています。オバマ政権時代にはホワイトハウスの科学技術政策で雇用と競争力に関わるシニアアドバイザーとして、アメリカ合衆国商務省では副法律顧問としてそれぞれのポジションを勤められています。.

消費者保護の観点からプライバシー法を推し進める立場としてこれまで数多くの動きに関わり、オバマ政権時の米国特許法改正やヒューマニティ特許推進、米国のPCLOB(プライバシーと市民の自由権に関わる監督理事会)の再開などにも取り組まれています。

オバマ政権前にはマサチューセッツ司法長官オフィスでヘルスケア部門のトップを務め、保険や医薬企業に対して何百億もの訴訟、調査を監督し、マサチューセッツの医療制度改革の実行に取り組みました。

それ以外にも複数の非営利組織を運営していて、北米のJ-PAL North America (アブドゥル・ラティフ・ジャミール貧困アクション研究所)ではヘルスケアやモビリティの経済合理性、住宅、教育などの有効性の改善に取り組み、ハーバード大学バークマン・センターインターネットソサエティ研究では医薬品の貧困地域のアクセスをどのように改善すれば良いのかという分野などに取り組んでいます。

これまでも、現在も数多くの分野に取り組まれているQuentinさんとは様々な分野で面白いお話ができることを楽しみにしています。宜しくお願い致します。

Quentin: ありがとうございます。宜しくお願いします。

Kohei: ここからは早速今日のトピックに移っていきたいと思います。先ずはこれまでのご経験に関してお伺いしたいと思っています。J-PALでの取り組みはいくつかYoutubeでの動画も拝見して、人を中心にした様々な取り組みを実施されているのだと理解しました。

ここで少しお伺いしたいのですが、どういった経緯で活動を始めることになり、何をモチベーションとしてJ-PALでは取り組んでいたのでしょうか?

(動画:Building Partnerships to Promote Evidence-Based Policy: Quentin Palfrey)

エビデンスを前提にした政策立案の重要性

Quentin: 質問ありがとうございます。宏平さん。私がホワイトハウスの科学技術政策で仕事をしていた時に政策立案でデータがとても重要な役割を持つということを理解したことから始まります。ホワイトハウスの仕事から離れた後はMITのラボである北米のJ-PALアブドゥル・ラティフ・ジャミール貧困アクション研究所)に移ったというのが経緯です。

このプログラムはとてもイノベーティブな取り組みで、プログラムを立ち上げたのがノーベル経済学賞を受賞した創設者を中心にして(アビジット・V・バナジー氏、エスター・デュフロ氏)、ソーシャルプログラムの効果測定を科学的に厳格な研究を通じて証明したいというところから始まっています。

他のケースでもここで研究されているメソッドは応用できると考えていて、ソーシャルプログラムを科学的に評価できるようになればどういった取り組みが有効で、有効ではないかが判断できるようになります。特に、貧困プログラムに関してはリソースが逼迫しているため政府と慈善活動に取り組む人たちが限りあるリソースで取り組んでいる状況です。

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特に不利な状況にいる人たちに十分なリソースを確保して手を差し伸べることが必要で、慈善活動を大なっていく上では二つの方法があると考えています。まずは指標化です。これまでは厳格にソーシャルプログラムを評価するための指標がなかったので、ラボでは他の科学分野でも活用できるように厳格な方法の開発を進めています。

どのようなプログラムが効果的に機能しているかを判断できれば、必要な助けを提供することができます。慈善活動家や政府はプログラムの立ち上げや拡大していく上で、こういった指標を参考にすれば良くなるようになります。

Kohei: なるほど。そういったアプローチは非常に重要ですね。特にマイノリティと呼ばれる人たちにも平等な方法でアクションを提供するための意思決定ができる仕組みは必要だと思います。

拝見したプレゼンテーションの中でエビデンスという言葉が良く引き合いに出されていて、個人的にはこのエビデンスが非常に重要なポイントだと思っているのですが、一方でエビデンスとなるデータ自体に特定のバイアスがかかってしまう懸念点もあるかと思います。

コミュニティ内で考え方が固まってしまうと特定の意見に流されて意思決定が行われ、必要な人に必要な支援が届かない懸念も考えられます。これまでの活動でより社会全体に必要な意思決定のためのエビデンスを考えた時にどういったアプローチが有効になるのでしょうか?

Quentin: ランダマイゼーションという方法を利用するのが最も良いと思います。医薬の世界では有効性・安全性を検証するためにプラセボ対照二重盲検 (比較)試験を実施して研究したりします。統計的に代表されるグループを抽出するものです。コインを投げて、一方にはプラセボ(偽薬)を、もう一方には医薬を提供します。そしてそれぞれどういった反応するかを確かめます。これは社会問題でも同じように応用して取り組むことがあります。

(動画:Why Randomize?)

例えば、プログラムの補欠人名簿を持っているとしましょう。補欠人に対して候補から外れるように意思決定を判断することもあるかと思います。その時に、”初めの候補で決まったから”、”誰か別の人が選ばれたから” など候補から外れる場合も置かれた状況によって理由が異なる場合が多いです。

この時に事前に無作為に候補者を選定することで、結果に対して複数の因果関係を持って理解できるようになります。(単純に効果があったかなかったかだけでなく、その他の理由も加味して比較する。比較対象の性質を同一化して比較

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その後に実際にプログラムを提供してもらう研究を行います。そこでは、研究を通して十分に対応できるリソースがあってプログラムを提供できる場合と、必要とされるサポートにアクセスできないイメージを理解してもらいます。

これが “検定力”と呼ばれる概念ですね。比較を行うことによってプログラムが成功したかどうかの検証をマトリックスに従って行なっていきます。その後に検証を実施した分類のプログラムに対してさらにリソースを投下するかどうか検討を行います。教育や医療など様々な分野が考えられますね。

もしマトリックスを検証して上手く機能していない場合は、検証結果として判断できるので意思決定ができるようになります。そして、別の項目の検証や取り組みを実施することができるようになるのです。これで不必要なリソースの投下を事前に把握することができるので、リソースが限られる中では成功しているプログラムに重点的にリソース配分ができるようになります。

Kohei: なるほど。確かに包括的なアプローチを考える上で凄く重要な視点ですね。ただ問題点として考えられるのは様々なギャップが存在しているところで、特に経済的なギャップがわかりやすいかと思います。

現在のコロナ下のアメリカではこの観点から様々なところで問題が起きているのではないかと思うのですが、政策や法的な意思決定を行う際にどういったアプローチが最も良いと考えられるのでしょうか?

特に声として上がってこない層に対してのアプローチは非常に難しいと思っていて、この辺りの意見も是非お伺いできると嬉しいです。

コロナ下で求められる民主的な意思決定とは?

Quentin: 私が思うには民主主義的な問題が存在していて、今のアメリカの民主主義は様々な面で再考する点があると思います。

世界の様々な場面で民主主義的な意思決定とは異なる選択肢を支持するよう声も上がってきていますが、その中でも選挙に関するシステムは適切に機能できていない分野の一つだと思っています。現在の大統領の下で行われる意思決定では確かにどれだけの人が登録して投票に参加するかの正しい数値の計測が非常に難しい状況です。

今現在のパンデミックの状況は私たちの選挙の仕組みに対しても新しい取り組みが求められていて、ロシアを敵対する意見や、選挙制度そのものを弱体化させるような動きもあり本当に公正で自由な民主的な選択を行うことが難しくなっています。

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トランプ政権では人口調査の意味合いが変化してきていると思います。

これまでは調査を通じて公正にどう言った人たちが何を求めているのか多様な視点を持って理解できていたので、適切に必要なリソースの提供を実施できていました。

(動画:Supreme Court allows Trump to wind down census early)

共和党ではこれまで何年もの間ゲリマンダーと呼ばれる主要政党が合意の下で互いにそれぞれの候補に有利になるよう選挙区を分割するように取り組んできました。見返りとして選挙キャンペーンの資金サポートを受けていて、多額の寄付者などによってそういった政治のプロセスが歪められているのが現状です。

そして私たちは裁判所のシステムを設置しているのですが、多数派のリーダーがリベラルの立場から候補者を出すことに反対し、司法の場でも共和党による意志の反映が色濃くなっています。これからの数年間は民主的な仕組みと公正な仕組みを社会全体に取り戻していくような取り組みが必要になると考え行動しています。

それ以外にも社会経済における不平等や人種による差別が私たちの経済では生まれています。これによって金持ちと貧困層の格差がより広がってしまうという状態になっているのが現状です。これが経済の様々な場面で生まれてしまっているのです。

政策を決めるにあたっては多くのステークホルダーを前提に設計が必要で、恩恵を受けるトップ1%はトップ10番の中の1%とそれ以外の大多数の人たちという構図になってしまっています。

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これまで私たちの親の世代が築いてきた状況を保つためにはより働く必要があります。今はまさに新しいチャレンジに取り組む状況に来ています。重要な点としては人種による分断も社会の異なる部分で私たちは抱えていて、特に犯罪関連のシステムは不当に判断を下してしまっているケースも多く存在します。

警察が導入するシステムも大きく変化が必要で、現在の教育システムではより多くの不当な扱いを広げてしまう要因になっているので、この分野に関しても経済や政治、社会など様々な異なる分野で公正な社会を目指す取り組みを推進していく必要があります。それによって良い結果を生み出していくことが私たちには必要です。

米国のプライバシー法に関する動きは次回Noteに続きます!

※一部法的な解釈を紹介していますが、個人の意見として書いているため法的なアドバイス、助言ではありません。

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栗原宏平(Privacy by Design Lab代表 )
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