組織開発を加速させるデータ活用について
データやその分析結果の活用は、単なるマーケティングのためだけのツールではありません。
組織全体の地図として活用することで、
部署間の連携を強化し、
組織全体の目標達成に向けた一体感を生み出す効果もあるというのが私の考えです。
そこで今回はデータを地図として活用することで
組織全体でどのようにマーケティング戦略を実行しつつ、
さらにどのように組織開発を進めていくかについて考えてみたいと思います。
データは地図である
前回の記事でも「データは地図である」という考え方を示しました。
ここでいうデータとは、社会全体や現在の経済状況を示す社会的なデータというよりも、
自社で保有する、過去の販売データや顧客データといった社内独自のデータを指しています。
過去から現在まで積み上げてきたデータは、今までの自社の歩みを可視化したものであると同時に、これから進むべき道を指し示す地図ともなりうるという考え方です。
・どんな商品がどんな顧客に売れたのか?
・そのコンセプトがなぜ想定していたターゲット層に響かなかったのか?
・このクリエイティブがなぜその顧客の購買意欲を高めたのか?
といった販売企画に繋がるものもあれば、
・訴求ポイントが結果としてなぜ返品率を高めることになったのか?
・その商品説明がなぜその後のリピート率を低下させることとなったのか?
・自信をもって改良したスペックアップ商品がなぜ旧バージョンより売上を落としたのか?
といった反省を求められる結果となったデータもあります。
こうしてデータが次の仮説の源となり、
これから行うべき道を指し示してくれる。
そして時に、注意するべきポイントや避けるべきアイデアであったり
近道を選ぶのが最善か、逆に敢えて遠回りを選ぶ方が良いか、
といったロードマップとなると私は考えています。
データがなければ、
トップの野生の勘頼みになってしまいますし、
それが本当に最善なのか否かを他の誰も指摘できなくなってしまう。
それは販売戦略の立て方としては非常にリスキーであるとともに、
他の社員たちの思考力を削ぐことにも繋がります。
社員たちは自らのスキルを高めることよりも、思考停止してやみくもにリーダーに従うことを優先することになりますので、
組織としての力を向上させることもできません。
データと言う地図を元に、あらゆるメンバーがアイデアを出し、リスクを洗い出し
プランAだけでなく、プランB、Cも用意できるようにしていくことが大事だと思うのです。
組織の役割分担を明確にする
これは売上利益に直結する部門だけの話ではありません。
会社には営業部門だけではなく、様々な部門があります。
通販で言えば、顧客対応、配送物流、品質管理、商品管理といった業務部門もありますし、
経理、人事、総務、情報システムと言ったいわゆるバックオフィス部門もあります。
ちなみに通販業界には、商品開発や販売企画、広告制作といった販売に関わり、且つメディアと直結する部門を花形として考える傾向があります。
ちなみに過去記事でこんなこともしたためています。
私自身もこうした傾向を自社でどう乗り越えていくのがよいか試行錯誤した時期があります。
考え方を変えたり、ロジックを構成したり、伝え方を工夫したりといくつかのアプローチを重ねましたが、
そこで特に重視したのがデータでした。
売上データ、コストに関するデータ、利益に関するデータはもちろん、
今度実施する新企画に元となった仮説と、その根拠となった過去の販売データや顧客データの分析内容といったものも、全社員が見れるようになっている。見れるだけでなくそこで使われているデータの計算式、意味、意義、目的といったことをすべての部署の社員が理解できている。(理解のレベルには差があったとは思いますが、それはそれでよしです)
こうした情報の可視化によって、部門間の格差をなくし、全社が一体となって業務を推進していく土台を作れたと思っています。
データの活用とその情報公開こそが組織の成長の肝となったのです。
業務部門もバックオフィス部門もそのデータを元に自部署でできる最善策を考え実行することで、その企画の成功に関与する。
個々のデータを元にして、
・顧客対応における想定問答を作る
・配送における最適化を目指す
・品質管理の注意点を事前に対応する
・システム稼働の安定性を事前に備える
・社員のスキルアップや関係性の質の構築を人事が行う
といった具合です。
まさにデータが会社全体の地図となって組織開発そのものの基礎となり土台となって計画の成功に向かって無駄なく効率的に動くことができたと私は感じているのです。
組織的な連携が成功体験を導く
前線を進む企画部門と、後方部門として前線を支える業務、バックオフィス部門がデータによって作られた共通言語としての地図を用いて、一体となって成功に向かって動けている。
まさに組織的な連携によって組織全体が成功体験を積み増していく、MITのダニエル・キム教授のいうところの「成功循環モデル」の循環の軸となったと考えています。
組織開発において、精神論的な働きかけには無理があるというのが私の考えです。
人それぞれの考え方、指向性がある中で、トップの精神論だけで全体を動かすのは難しい時代でもあります。
誰もが納得し、腹落ちできるデータとその分析手法を軸にして組織開発を進めていくことが、これからの組織開発に最も重要なアプローチであると私は考えています。
最後になりますが、
拙書「データってこう見るんだ! LTVを最大化させる顧客データ活用の教科書」が
早くも紀伊国屋新宿本店にて11月22日に先行販売されることとなりました。(11月13日現在)
また11月23日には丸善丸の内本店においても先行販売が決定しました!
データ分析を苦手と考える人は多いですが、データ、特に顧客データの活用法について分かりやすい文章で初心者でも理解しやすい内容に構成されていると自負しています。
業務の前線を進む販売マーケティング部門の方だけでなく、
後方支援を担う業務、バックオフィス部門の方にも役に立つ内容です。
近々アマゾンでも先行予約が開始されるとの情報も届いております。
どうぞ拙書をご参考にいただき、皆様の組織開発にもお役立ていただければ幸いです。