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マニュアルは楽譜と考えてみる

マニュアルとは何か?

マニュアルを整備して、マニュアルの手順に従った業務運営や業務フロー。
作るのは大変だけど、出来れば品質や効率は上がります。
マニュアルは大事だと思います。
作った後の運用はラクだし、成功事例というより経営の基本のひとつです。

だけど、
なぜかマニュアル社会とか、マニュアル人間って聞くと
ネガティブワードのニュアンスが強い。
実際、嫌う人も多いですよね。
やらせてる感、不自由という印象が強くなるのは否めません。

スコアとは何か?

私は、マニュアルは単なる指示書ではなく、楽譜と考えています。

そして部門のマニュアルはパート譜、
会社全体をまとめるとスコアになります。

ここで使うスコアは得点のスコアではなく、
音楽用語のスコア、つまり総譜です。

楽譜は個々の楽器や声域のみを示したパート譜と
全てのパートを一覧にしたスコア(総譜)に分かれます。

オーケストラで言うと、
演奏者は自分のパートの楽譜を見て演奏しますが、
指揮者はすべてのパートの楽譜が並んだスコアをみて指揮します。
とは言え、演奏者はスコアを見ないわけでなく、実際には楽曲のテーマや全体像を捉えるために
当然スコアを見ます。(演奏中にみないだけ)
楽譜に自由はあるか?

スコアイメージ

さて、オーケストラの楽曲は楽譜に従って演奏します。
基本的にアドリブはありません。(アドリブ演奏を指示する記号はあります)
言うてみれば、これマニュアルです。
演奏者はマニュアルに従い、はみ出すこともありません。
指揮者も勝手に音符を加えたり、休符を削るなどあり得ません。
ましてや勝手に作曲して付け加えたら、それはもう違う楽曲になってしまいます。
マニュアル通りです。

でも、でもですよ。
演奏者も楽団にも指揮者にも上手い下手があります。
ソロ演奏者にもあります。
だからコンテストもあるわけで、ライバルがしのぎを削る光景があるのです。
聞く人からしても、
あの人の演奏はうまい、とか、
あのオケは表現力が高い、とかいいます。
この違いってなんでしょう?

演奏者も指揮者も、
マニュアル(スコア)から外れはしませんが、
そこに書かれた音符や演奏記号、発想記号を解釈して演奏します。
クレッシェンド、だんだん大きくの「だんだん」には実は個々の解釈があります。
アレグロ 速く、の速さには解釈があります。
そこに表現力が現れます。
そもそも演奏者には技術もいります。
マニュアル通り(スコア通り)に弾くにも、難易度があり、
速すぎて弾けないとか、長すぎて息が続かない、とか
そうしたスキルを磨いて演奏力や表現力を高めます。

発想記号を応用してみる

発想記号は100種類以上あります。
例えば
フィエールマンは気高く勇敢に。
ドゥラメンテは荒々しくはっきりと
といった具合。(どちらも競走馬の名前ですが、音楽用語が由来の馬名です)
これって、演奏者の解釈にかなり自由度がありそうだと思いませんか?

そうしたことの積み重ねが、オーケストラの演奏に個性をもたらすのです。

業務マニュアルも個性の違いは出た方がいい

会社のマニュアルにも同じことが言えると思います。
同じマニュアルでも技術の有無で変わる業務はありますし、
「迅速に」というマニュアルがあったとして、その速さに個性は出ます。
そうした会社の余地を残さないマニュアルの作り方もありますが、
実際にはそうした余地が残っていて、
現場やチームごとに状況に合わせた個性を発揮したり、抑えたりをしていますし、
むしろその余地がある方が上手く業務が回る事例が多いのではと私は思います。

交渉とか、管理方法とか、伝達方法とか、表記方法とかの場合、
会社の社風に合わせて
「大胆に」とか、「丁寧に」とか、「迅速に」とか、「客観的に」といった文言を
発想記号で入れてみるといいのではと思います。
品質管理や安全管理に関するマニュアルは「厳格に」とか「正確に」がよさそうです。

こうして考えてみると、業務マニュアルも、個性の違いを促して自由度、裁量を高めてみると、結構楽しそうだと私は思うのです。

一方でそれが苦手だという人は、いい意味で楽譜通りのようにマニュアル通りに行うこともアリとする。

こうした解釈の持ち方ひとつで、私は個性と業務の統一性が両立できそうだと思うのです。

こうした工夫を面倒くさいと思う方もいるとは思いますが、
単なるマニュアルを、その通りにやれ、というよりは
私は楽しいと感じるのです。
上司と部下で解釈の違いがあっても、ある意味許される前提にもなり得ます。

マニュアルを深く読みこんで、作者の思いを理解する

人は言われたことを文句言わずに黙ってやれ、と言われた場合、
それが好きな人もいますけど、どちらかというと嫌がる人が多いと私は感じています。
好きな人も、ずっとそのままだとやっぱり飽きるでしょう。

で、嫌なことをやらされたり、飽きてきた人は面倒くさいことを言い始めます。
不満やストレスを上司やトップにぶつけたり、陰で言い出すものです。
(その気持ちはよくわかりますよ)
これは社長にとってラクじゃありません。むしろ超絶面倒の前兆です。

マニュアル通りにやれ、と言い続けてやらせるより、
オーケストラの一員として、最高の演奏をしよう、そのためにスコア(マニュアル)をしっかり読み込み、その意図を理解して表現しよう。
と言った方が、
かっこよくないですか?
社員もなんか、おっ!なんかすげーぞ!って感じそうじゃないですか?

物は言いようなのですが、
このストーリーは、結構会社で仕事をする上での本質を突いていると
私は思うんですよね。

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