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経営者は売上を伸ばすだけでいいのか?

経営者は売上さえ伸ばしていれば評価される。最初はそう思っていました。
しかし2代目が創業者に言われた言葉は「売上が伸びていればいいってもんじゃない!」
言われたその時は「売上伸びているので何で文句を言われなきゃいけないんだ!」でしたが。。。

どうして役員になりたかったのか?

何度か書いていますが、私は創業社長ではありません。
また創業家の一員でもありません。
創業者はいくつもの会社を創業しました。
私はそのうちの何番目かの会社の設立時に声を掛けられて入社した1号社員です。
私にとっては自分が働く唯一の会社ですが、
創業者にとっては自分が創業した会社のうちのひとつでしかないという背景がまずあります。

とは言え1号社員ということもあり目をかけてもらっていたことは間違いないです。
企画した商品や広告が成功し、売上と利益も伸び自分に自信を持つようになりました。
そんな時に人は欲が出ます。
出世したいなあ、肩書ほしいなあ、名刺に取締役って書いてあったらかっこいいなあ。
そんなことを思うようになりました。
実際は社員パート合わせて10人もいない小さな会社でしかなかったですけどね。

何かのビジョンがあったとか、成し遂げたいなにかがあったわけではなかったのです。
当時30代前半の私は、その年齢で名刺に「取締役」という肩書がほしかった、だってかっこいいから、というのが偽らざる本音でもありました。

いやあ、実に薄っぺらいですね。。。

役員になってみたらどうなったか?

そして実際に常務取締役という肩書を得ることができました。
創業者は若い人に会社を任せて、成功を見守るというスタンスを大事にしている人です。
まだまだ薄っぺらい私に任せる度量もある人で、尊敬と感謝しかない大恩人です。

しかし私は欲はあっても中身が伴っていませんでした。


こちらの記事にも書いた通り、リーダーシップがなく社員はバラバラな状態になりました。
そんな人たちをまとめ上げる力量も熱量も乏しく、
本当にダメな常務でした。

窮した私が見つけた最初の指針がこれです。
「売上あげればいいんだろ!」

企画力には自信があったので、とにかく売上をあげて、利益を増やしさえすれば、
創業者からも社員からも文句を言われなくなるはずだ。
とにかく売上を伸ばしてやる。というものでした。

企画自体は当たるものも結構あったので、
売上そのものは伸びて行きました。
業務量も増えて、中途採用も積極的に進めたので、社員もパートも増えて行きました。
しかし前述したように、社内の雰囲気はガタガタで、私の言うこともブレブレのままでしたが。

悩みは尽きず、日々モヤモヤしていましたが、
自分の気持ちの拠り所はこれです。
「売上は伸びているんだから!」

創業者から言われた一言

当時創業者は週に一度来社し、会議には出席していました。
基本的には見守るという立場です。
社員のアイデアを膨らませたり、別の視点から助言したりが多く、
最終判断は私に任せてくれていました。
今思うと、
意思決定をする為というよりも、
私がどう経営しているかを会議の様子でチェックしていたのかもしれませんが。

決算が終わると、
私は「今期も売上を伸ばしました!」と
自分の成果を誇ります。
しかし、そのことで褒められたことはありませんでした。
「もっと毅然と進めなさい」とか
「語尾をしっかり言い切らないと伝わらい」とか
「話が長くて何を言いたいのか分からない」とかも言われました。
まさにダメだしオンパレードです。

「売上伸ばして社員増えて会社も大きくしてきたのに、何で評価されないんだ!」
私は心の中で叫び、友人や知り合いに愚痴をこぼすことも多かったです。
「もうやめてやる!」とこぼしたこともありました。

そんなことが続く中、私は意を決して創業者に反論しました。
「売上は上がってます!利益もだしてます!」と。

それに対する返事がこれでした。
「売上を上げたって、社風がこれじゃね」
その口調は、怒るでもなく、叱るでもなく、
静かなつぶやきなようなものだった気がします。

「社風ってなんですか?」
とかの反論をしたと思いますが、
特に返事もなく、そのまま帰っていきました。(そんな記憶が残ってます)

その時の私の率直な気持ちは
「訳わかんねー!!!!」

それからしばらくは訳も分からず荒んでいたのははっきりと覚えています。

社風を変えるには?

しかし「社風がね」という指摘は十分に分かっていたのです。
確かに会社の雰囲気はよくない。
社員は自分の成果を上げることが最優先で、チームワークがよいとは言えない。
部署間で文句を言い合う。
体調を崩す社員が増える。

私はそうした社内の状態から目を背けて、
売上という殻に閉じこもっていたんだと思います。

そこから自分で抜け出せずに、益々殻に閉じこもろうとしてる私に対して
創業者の言葉は「最後通牒」だったのかもしれません。

いずれにせよ、
このままじゃ終われない!
負けてたまるか!
という思いが沸き立ったのは確かなのです。

そして社風とは何かを、
そもそも自分はどんな会社にしたいのか?
社員はどんな会社を望んでいるのか?
という経営者としての極々当たり前のことに向き合うようになれたのです。
今思うと気が付くまで随分と遠回りしてしまったとも思います。
この遠回りに巻き込んでしまった仲間たちには申し訳なかったなと思います。

そして今思うことがあります。
それなりに経験、場数を踏んだ私ではありますが、
若いリーダーに対して、
同じような指摘をきちんと伝えられることができるのだろうかと。

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