考える「営業」

「 5W 1H 」‥When (いつ)、 Where (どこで)、 Who (誰が)、 What (何を)、 Why (なぜ)、 How (どのように)‥。これは、思考やコミュニケーションに用いるフレームワークです。

私だけかもしれませんが、若い頃は、このフレームワークの中の5つのWのうち、Why(なぜ)に向き合うのが苦手で、いつも苦労していました。

Why(なぜ)という質問だけは、異質な質問のような気がして、答えがたくさんあって、一言では言えない難しさを感じたり、出した答えにも自信を持てなかったり、いつも答えに窮する苦手な質問だったのです。

同じように、How(どのように)も‥苦手でした。

落ち着く先は、 Why とか How‥って言われても、答えは色々あるよね‥。実際、色々な答えがあるのも事実だし、どの答えも間違ってはいないよね‥と、出した答えの評価を、いつも先延ばしにしていたような気がします。

そんな優柔不断な態度ではダメなんだと思い知らされたのが、配属された報道部での最初のニュース取材でした。1年生記者なら最初に経験させられるデパートが主催した有名画家の「展覧会」の取材だったのですが、私が書いた原稿を見て、デスクが言った言葉は‥

「この展覧会をなぜ取材したのか?」

「あなたが行け!と言ったから‥」

「じゃ、オマエはこの展覧会で何を伝えたいのか?」

「‥‥‥」

「視聴者に、作者の想いを伝えたいと思ったのか、この展覧会は是非、行くべきですよ!と伝えたいと思ったのか、展覧会に行かなくても、このニュースを見れば十分ですよと伝えたかったのか、展覧会一つとっても、伝え方は色々あるんだよ。で‥オマエは何を伝えたかったんや?」

「5W1H」は、ニュース取材をするときや原稿を書くときの基本ですが、なかでも「Why・なぜ取材するのか?」と「How・どのように伝えるのか?」は、最初に考える重要な要素です。そして取材対象と向き合い、記事にする際には「Why・なぜ事故は起きたのか?なぜ、こんなことになってしまったのか?」「How・どうすれば事故は防げたのか?どうすればよかったのか?」も当然、探らなければならない真実なのです。

でも忙しさに追われて、多くの記者が、警察発表や行政発表をそのまま記事にするだけで、独自の取材を通して「Why」と「How」の追求をすることなく、記事を仕上げているのが現状です。「Why」と「How」の追求は、常に主体的で情熱的な報道マンでないと続けられない、難しいテーマなのです。

社会人になって間もない、早い段階で、苦手な「Why」と「How」に向き合うことになりましたが、いま考えると、この経験が自分の人生にとっては、非常に良かったと思っています。いまは、テレビ局を卒業し、企業や団体の「アドバイザリー」をしていますが、取材だけでなく、ビジネスにとっても「Why」と「How」は重要です。「アドバイザリー」を始めるとき、最初に企業の経営者の方々に投げ掛けるのは、私が苦手だった「Why」と「How」の質問なのです。

さて話は少し脱線しますが、「Why」と「How」に繋がる話なので、許して下さい。最近、読んだ本の中で、社員の能力を次のようなピラミッドで記していました。

    レベル6:情熱

    レベル5:創造性

    レベル4:主体性

    レベル3:専門性

    レベル2:勤勉 

    レベル1:従順 

(「経営は何をすべきか」ゲイリー・ハメル著・ダイヤモンド社)

さて、みなさんの会社は、従業員をどのレベルに育てようとしていらっしゃるのでしょうか?デジタル化が進み、大きく社会が変わろうとしているいまは、従順な従業員、勤勉な従業員、専門性を持った従業員を育成するだけでは生き残れない!これが、この本が伝えたい内容です。

では、どうしたら、主体性を持った従業員や創造性豊かな従業員、情熱的にビジネスに取り組む従業員を育てることができるのでしょうか?

その答えが‥従業員に「Why」と「How」を問い続けさせることだと思うのです。

みなさんは、つねに「Why」と「How」を問い続ける従業員を育成しようとしていらっしゃいますか?


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