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『水五訓』を考える

今夜は冷え込んでいます。厚手のスウェットの上下を着込んで、近所のコンビニに夕飯の弁当を買いに行きました。レジで支払いを終え、電子レンジで温めてもらっている弁当が出来上がるのを待っている間、無意識に「寒ッ……」と呟いていました。つい1ヵ月前には、半袖短パンで「暑い…」と嘆いていたのが幻に思えるような急激な気候の変化です。

さて、本日は有名な『水五訓』について、考えてみたいと思います。


黒田官兵衛のことば(と言われている)

『水五訓』
① 自ら活動して他を動かしむるは水なり
② 障碍に遭いてその勢力を百倍するは水なり
③ 常に己の進路を求めて止まざるは水なり
④ 自ら潔くして他の汚れを洗い清濁併せて容るるの量あるは水なり
⑤ 洋として大海を充し、発しては蒸気となり雪に変し霰と化し凝りては玲瓏たる鏡となり而もその性を失わさるは水なり

水五訓

この『水五訓』は、豊臣秀吉の軍師として知られる、黒田官兵衛孝高(1546/12/22【天文15年11月29日】-1604/4/19【慶長9年3月20日】)が遺したことばとされています。経営者やリーダーの地位にある人に人気があり、座右の銘にしているという人も多いそうです。

官兵衛は、あまりに優秀過ぎたが故に、天下人となった秀吉から警戒されていることを察して距離を置き、晩年は剃髪して「如水(じょすい)」と号していたことでも知られます。「水五訓」は、名軍師にして人格的にも高潔だった、と言われる官兵衛らしい名言と言えそうです。

五訓の教え

それぞれを簡単に要約すると、①率先垂範せよ、②逆境は好機に変えよ、③ビジョンを描き、針路を示せ、④清濁併せ呑め、⑤本質は守りつつも、変幻自在に振る舞え、という風に解釈されることが多いようです。水の特質を見事に捉え、人としての重要な振る舞いになぞらえています。確かに、人の上に立ち、組織を率いる立場の人にとっては、どれもずっしりと刺さる教えのように思えます。特に、④の清濁併せ呑め、の教えは納得で、お仕えするのに、誠実さの欠片もない権謀術数だらけのリーダーも嫌ですが、高邁な理念が先行する清廉潔白過ぎる人も苦手です。

私はこの五訓について、最近まで完全に忘却していました。組織の長にある人が、このような高尚で強固な精神をまとう人であれば、安心し、信頼できそうです。十数年前の、まだモチベーションを保っていた頃の私であれば、深く感服し、完璧には実践できないまでも、神妙に心に刻んで努力していたかもしれません。

水というのは、不思議な物質です。常に身近にあり、生きる為には不可欠なものです。時と場所によって、姿、形が一瞬で変わり、変幻自在です。状況次第で、敵にも味方にもなります。暴れ狂えば、人の命を簡単に吞み込み、人間が長い年月をかけて積み上げたものを一瞬で破壊していきます。かと思えば、静寂に包まれた美しい光景を見せてくれ、私たちの心に深い安らぎを与えてくれる時もあります。

この五訓、日々の生活の中でも少し意識してみると、乾いた毎日も潤いが生まれ、効果があるかもしれません。

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