『どん底作家の人生に幸あれ!』を観る
本日は、チャールズ・ディケンズ(Charles John Huffam Dickens 1812/2/7 - 1870/6/9)の小説『デイヴィッド・コパフィールド David Copperfield』の映画化作品となる『どん底作家の人生に幸あれ! The Personal History of David Copperfield』の鑑賞メモです。
映画鑑賞は安全というイメージ
2021/1/8に二度目の緊急事態宣言が出されてから、映画館で映画を観る頻度が増えています。昨年4月の緊急事態宣言発動の際は、感染予防優先で映画館も休館が相次ぎました。
しかしその後、映画館設備の空気循環装置が優秀であること、観客が声を出す機会が少ない=飛沫感染リスクが低いことが知られるようになると、映画館発のクラスターが一度も発生していないという実績もあって、「映画鑑賞は安全」というイメージが世に醸成されてきました。
コンサートや演劇、スポーツ観戦など競合するライブ性の強いエンターテインメントイベントが、観客数制限を受けざるを得ない状況下、作品映像を映画館で観ることの価値が相対的に向上する結果となっています。
『映画はNETFLIXやamazonで家で見ればいい』という風潮が根強くある一方、最新作を映画館の大きなスクリーンと圧倒的な音響設備で楽しみたいという需要もまだまだ根強いように思います。
昨年秋公開で歴代興行収入記録を塗り変えた『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の大ヒットも、この状況が一役買っているように思います。
ルーティン化しつつある月曜日の映画鑑賞
映画鑑賞は、時間に追われない生活を送ってうる私にも好都合です。精神衛生管理上、積極的に外出したいタイプなので、個人で映画を観る行動が許されているのは大変ありがたいことです。TOHOシネマズの劇場では「auマンディ特典」を利用すると、1200円で鑑賞できるのでコスパもグッドです。
そんな背景もあり、最近は月曜日に映画を観る習慣が出来つつあります。上映中の作品の中から物色して、昨日探し当てたのがこれでした。
ディッケンズの名作とは知らず…
監督・脚本・製作は、スコットランド人で長くテレビドラマの放送作家として活躍してきた、アーマンド・イアヌッチ(Armando Giovanni Iannucci, OBE 1963/11/28-)。主人公のデイヴィッド・コパフィールドを演じるのは、『スラムドッグ$ミリオネア Slumdog Millionaire』(2008)でスラム出身の若者役を演じたことで知られる、インド系英国人のデヴ・パテル(Dev Patel 1990/4/23-)です。
この映画がディッケンズ原作の映画化だと事前に知らずに鑑賞しました。『デイヴィッド・コパフィールド』は、ディッケンズの自伝的要素が強い小説で、過去何度も映像化されていますが、私は内容を全く知りません。
『対自核』などで知られるイギリスのプログレッシブ・ロックバンド、ユーライア・ヒープ(Uriah Heep)が、この作品の重要な登場人物から取られたものだということも今回初めて知りました。
丁寧に、明るく作った映画
イアヌッチ監督は、放送作家時代に喜劇作品を数多く手掛けていた経歴があるせいか、全体的にユーモラスに仕上げられています。台詞だけではなく、役者の動きやカメラワークで笑いを生む工夫が随所に盛り込まれています。
● 傲岸な継父に虐待され、生母を喪い、酒造工場で丁稚奉公させられた少年時代
● 裏切りによる経済的貧困
● 親友の身勝手な行動と死
といった暗いエピソードを詰め込んでも、観る側の絶望を誘わず、最後までうまく消化していると感じました。
魅力的で個性的な登場人物が多いのが特徴です。悪役にも愛情を注いで丁寧に描きたかったんだろうなあと感じました。ロンドンの街の抱える貧困や嫌な部分や、盗っ人や追い剥ぎも登場させて人間社会の暗部を隠さずに挿入されています。悪党のユライア・ヒープが抱える屈折感と反骨心も十分伝わってきました。「許されないけど、わからなくもない」という気持ちにさせてくれる演出は見事です。2時間ある比較的長めの作品ですが、途中退屈せずに最後まで観ることができました。
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