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【追悼】ジェフ・ベック

『三大ロック・ギタリストのひとり』『孤高のギター吟遊詩人』などと称された天才ギタリスト、ジェフ・ベック(Jeff Beck 1944/6/24-2023/1/10)氏の、突然の訃報が飛び込んで来ました。細菌性髄膜炎に罹患し、治療を行ったものの、1月10日に急逝したと報じられています。昨年6月にスイスで行われたモントルー・ジャズ・フェスティバルに雄姿を現し、健在ぶりをアピールしたばかりだったので、死去の情報を信じられない驚きを持って受け取りました。

Jeff Beck 1944-2023

またカッコいいオトナが逝ってしまった……

「またカッコいい大人が一人、天に召され、逝ってしまったのか...」というのが、訃報に接して驚くと同時に思い浮かんだことでした。

洋楽を聴き始めた頃、エリック・クラプトン(Eric Clapton 1945/3/30- )、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ(Jimmy Page 1944/1/9-)を、三大ロック・ギタリストと呼ぶこと、三人が英国の伝説のバンド、ヤードバーズ(The Yardbirds)に在籍したこと、『ベック天才、ペイジ商才、クラプトンは枯れた人』と言われていたこと、等の豆情報を仕込んでは、自慢げに仲間と語っていたことを思い出します。

実際の所は、ベックのプレーを生のステージで観たことはないし(レコードの数倍カッコいいという噂は知っている)、熱心に作品を聴き込んだ経験もありません。恥ずかしながら、レコードもCDも一枚も持っていません。(中古レコードで『ブロウ・バイ・ブロウ』が実家にあるかもしれない)耳学問で聴き齧った知識やビデオから流れてくる映像を観ては勝手にイメージを膨らませて、ただただ「カッコいいオトナ」と憧れるだけの存在でした。彼の音楽や演奏の真髄に触れる機会についぞ恵まれなかったのは、誠に残念です。縁がなかったのでしょう。

ベック=ピープル・ゲット・レディ

彼の死に際して、彼の人間的魅力、音楽的才能、天才的な演奏技巧、あらゆるジャンルの音楽を融合した革新性など、巷で広く知れ渡っている情報をさももっともらしく語る資格は、私にはありません。私はベックに夢中だった少年ではないし、ギターキッズでもないし、世代も違うのです。

私の記憶に最も強く残っているベックは、かつての盟友、ロッド・スチュワート(Rod Stewart 1945/1/10-)と組み、インプレッションズ(The Impressions)の『ピープル・ゲット・レディ People Get Ready』をカバーしたミュージックビデオなのです。あのビデオの中のベックは、完璧でした。ふと惹かれ、憧れてしまう魅力に溢れていて、ノックアウトされました。

私の勝手な妄想ですが、ベックは日本を代表するギタリスト、チャー(竹中尚人 1955/6/16-)とイメージがかぶります。二人とも普段はユーモラスなことも喋る好漢でありながら、ギターを弾いている時は、楽しさと余裕を見せながらも、寡黙で真摯に弦に向き合う厳しさを感じさせます。チャーも2022年は、同級生同士でコラボした『時代遅れのロックンロールバンド』で久々に雄姿を見せてくれて、嬉しい気分になりました。

またひとり、私の知る偉大なロック・ギタリストがこの世からいなくなってしまいました。終始天才らしく、駆け抜けていった78年の生涯に合掌。




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