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しっかり考えてみる②:オークション理論

本日は「しっかり考えてみる」シリーズの第2回で、『オークション理論』のさわりを学んでみます。普段強く意識しないとサボりがちな頭のトレーニングの一環です。

2020年ノーベル経済学賞を受賞

2020年のノーベル経済学賞は、アメリカ・スタンフォード大学の2人の研究者、ポール・ミルグロム(Paul Robert Milgrom 1948/4/20- )教授とロバート・ウィルソン(Robert Butler Wilson Jr. 1937/5/16- )名誉教授が受賞しました。

選考にあたったスウェーデン王立科学アカデミーによれば受賞理由は、

電波の周波数の割り当てなど、従来の方法では売ることが難しかったモノやサービスに使われる新たなオークションの制度設計を行い、世界中の納税者などの利益につながった

としています。彼らの研究は、「オークション理論」の発展に多大な貢献をしたとされます。基礎の基礎だけを短時間でサラッとみようと思います。

テキストに使ったのは、横尾真・九州大学主幹教授が、日本経済新聞「やさしい経済学」に連載した「オークション理論の基礎」(全9回、2018年2月23日~3月7日)の第1~4回です。(place171のサイトより)

オークション理論【超基礎】の学び

● ミクロ経済学の一分野。ゲーム理論などを活用して市場や制度の設計・修正を行う研究分野(マーケットデザイン)の主要な構成要素。
● 端的には、ある商品(特に稀少の商品)を「誰に」「いくらで」販売するかを決める方法を扱う理論。
● 希少な商品は、売り手が買い手にとっての商品の価値を正しく見積もることが非常に難しいため、適切な値付けをすることが難しい。
● そもそも誰が商品を入手するのが望ましいのか、望ましい人に商品が販売されるべきかという問題も議論の対象となる。
● 数理モデルに基づいた精緻な理論構築=数学なので、理論の正しさは厳密に証明可能であり疑いの余地はない。しかし、理論の帰結を現実の状況に適用する場合には、理論の前提が現実と合っているかのチェックが必要。(前提が間違っていれば、帰結が正しいと保証できない)
● 入札方式の場合、入札者は自分の評価値より低く入札しても意味はなく、評価値で入札することが最適な戦略(支配戦略)になる。

周波数オークション制度の導入へ

両教授の研究の貢献で有名なのは、電波周波数割り当てのオークションの制度設計だと言われます。日本はこの部分がグレーです。既得権益を持つテレビ局が、周波数帯域を超格安費用で独占使用しているのが実態です。

国民全体が利用する周波数のような公共財は、オークション方式で適正価格で落札した事業者に特定期間の占有権を付与した方が、公平で透明性が高く、効率的分配もでき、国の収益にも貢献する、というのが研究成果です。米国の事例を日本にも導入すれば、社会全体の利益が大幅に増えるというシュミレーションがあるようです。

スマホの普及、動画コンテンツや通信サービスの拡充により、電波の周波数需要が逼迫しています。そしてこの問題は、テレビ局が独占使用権益を得ているプラチナバンド周波数を開放させれば、簡単に解消すると言われます。

しかしながら、管理権限を手放したくない国も、既得権益で恩恵を得ているテレビ局も自身に不利に働くような情報は、積極的に報道しないので、一般的にはあまり知られていないし、前向きな議論も進んでいません。

利益独占を許さないために

オークション理論は、本来人類共通の資本財(コモン)として扱われるべきものが、特定の利益集団によって独占されてしまうことで、社会や大多数の人々が不利益を被り続けるという問題の解消に役立つ理論だと言われます。

このあたりには、【共通価値】という議論の理解が必要になります。

石油採掘権、水利権、漁業権、森林伐採権など、人間が生きていく上で必要なコモンを、悪質な私人が独占して、そのコモンから生まれる利益や恩恵を独占してしまうと、社会には甚大な不都合が生じます。

私も、電波周波数割り当ての問題は、ノーベル経済学賞の報道やYouTubeの『高橋洋一チャンネル』の動画を観るまで興味を持っていませんでした。引き続き、興味を維持して、学びを続けていこうと思います。


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