私の好きだった曲⑧:ホールド・ミー・ナウ
『私の好きだった曲』シリーズの第八弾は、トンプソン・ツインズ(Thompson Twins)『ホールド・ミー・ナウ Hold Me Now』です。
トンプソン・ツインズとは
トンプソン・ツインズは、1977年に英国シェフィールドで結成され、1982年からは、トム・ベイリー(Tom Bailey 1956/1/18-)、アラナ・カリー(Alannah Currie 1957/2/20- ニュージーランド出身)、ジョー・リーウェイ(Joe Leeway 1955/11/15-)の男女三人で活動するようになりました。
一世を風靡した英国発のニューウェイブ、ニューロマンティック、シンセポップにカテゴライズされる音楽を得意としていました。バンド名はベルギーで人気の絵本、「タンタンの冒険旅行」に登場する“Thomson and Thompson”という“twins”から拝借していると言われています。
この曲を含む通算4枚目のアルバム『ホールド・ミー・ナウ Into the Gap』は全英1位、全米10位の大ヒットを記録し、『ドクター・ドクター Doctor! Doctor!』(全英3位、全米11位)のスマッシュ・ヒットも飛ばしています。
その後人気は下降気味となり、1986年にはジョーが脱退。1991年にトムとアラナは結婚(後に離婚)したものの、1993年に解散を発表しています。
ブリティッシュ・インヴェイジョン
この曲は、彼らの最大のヒット曲で、1983年11月に英国で発売され、全英チャートでは最高4位を記録しています。1984年2月に発売された米国では、21週に渡ってチャートインを続け、1984年5月には最高3位を記録しています。
当時は『第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン Second British Invasion』 ~1982年にヒューマン・リーグ(Human League)が『愛の残り火 Don't You Want Me』を大ヒットさせたのがきっかけというのが通説~の真っ最中で、米国ヒットチャートを英国のアーティストの楽曲が席捲していました。
本作もそのブームに乗って売れたという印象が強く、1980年代の空気感を象徴するような楽曲です。私は、全体的に熱量低目ながら、印象的で静かに盛り上がるサビと、計算され尽くしたシンプルで心地良いメロディ・ラインで進んでゆくこの曲の世界観が、気に入っていました。今でも耳に残り、時々聴きたくなる曲です。
プロモーションビデオのカメラワーク
この曲が私の記憶に強く刻み込まれている一因に、プロモーションビデオの存在があります。基本的には三人が楽器演奏するシーンを組み合わせたものですが、ビビッドな色彩の背景と慌ただしく切り替わるカメラワークの編集で魅せる作りになっていて、当時はとても斬新に感じました。
このビデオをプロデュースした、ティム・ビーヴァン(Tim Bevan 1957/12/20-)は、後に映画『ノッティングヒルの恋人』『エリザベス』『ブリジット・ジョーンズの日記』『つぐない』『レ・ミゼラブル』『博士と彼女のセオリー』『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』などの作品を手掛ける売れっ子プロデューサーになっています。
編集を担当したブライアン・グラント(Brian Grant)とニック・モリス(Nick Morris)も1980-1990年代に活躍した著名なプロデューサーで、数多くの作品を残しています。
グランドでは、デュラン・デュランの『ハングリー・ライク・ザ・ウルフ Hungry Like The Wolf』や『ニュー・ムーン・オン・マンデー New Moon On Monday』(バンドメンバーからは不評のようですが…)のプロモーションビデオは印象に残っていますし、モリスは、ヨーロッパの『ファイナル・カウントダウン Final Countdown』などを手がけています。