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歌詞を噛み締めて名曲を聴く愉悦の時間
本日は、『歌詞を噛みしめて名曲を聴き直す』がテーマです。
お気に入り曲の聴き直し
その昔お気に入りで何度も聴いていた曲を、歌詞を丁寧になぞって噛み締めながら聴き直すとまた新たな発見があります。noteを書くようになってから、ことばの響きや言い回しに敏感になっているのも影響しています。歌詞を味わいながら繰り返し聴く曲が増えてきました。
「曲」で好きになっていた頃
10代~20代前半、私の聴く音楽は洋楽が中心でした。当時、好きになる理由としては圧倒的に、「アーティストが好き」「曲がいい」でした。日本のアーティストの楽曲の場合は、「歌詞の世界観」が気に入って好きになったものもありましたが、洋楽の場合は殆どありません。
歌われている歌詞の世界は、だいたいの雰囲気や情報誌などで確認するだけで、歌詞の意味を深く理解して聴き込んでいた曲は数える程です。歌詞の世界観に着目して聴かなかった理由は以下の通りだろうと思います。
① 英語力がお粗末で歌詞が聴き取れなかった
② アーティストの人物像や歌詞に唄われている情景や背景を知らなかった
③ 幼く、経験不足で、歌詞の世界観が理解できなかった
理由①:英語力の欠如
単純に歌詞を聴き取るだけの英語力がありませんでした。私が好きになる曲は、サビの部分がキャッチーでそこだけは意識しなくても一緒に歌えるようになっているものが多かったので、それで十分でした。
私が音楽をよく聴いていた頃は、基本的に歌詞は有料情報で、歌詞を確認するにはレコードやCDに付いてくるライナーノーツが必要でした。好きな作品を片っ端から買える状況でもなかったので、歌詞を気にしない習慣がついていました。
今はネットで歌詞検索も簡単にできるし、多少は英語力もついたし、じっくり細部まで理解しながら聴く時間的余裕があることも大きそうです。
理由②:知識不足
当時は英語力の問題で片付けていましたが、歌詞の背景を理解する為の知識がなかった為に深みを味わい切れていなかった曲もあります。
例えば、U2の『ブラディ・サンデー(Sunday, Bloody Sunday)』は、1972年に北アイルランドのロンドンデリー市で起こった血の日曜日事件がモチーフになっている、という表層的情報は当時から知っていました。
しかし、IRA(アイルランド共和軍暫定派)とか複雑な政治的背景や当時の大英帝国内に流れる空気感のようなものは知らなかったので、歌詞のキワドい言い回しに込められた機微の理解までには至っていませんでした。
理由③:人生経験不足
年齢を重ねたことで、当時は掬い取れなかった歌詞の凄み、深み、驚きを今になってやっと感じ取れた曲もあります。私が味わってきた失恋、絶望、結婚、仕事の失敗、子供の誕生、外国生活の経験などが深い共感となり、思わぬ再発見となっています。
ブルース・スプリングスティーンやニール・ヤングの書く歌詞の魅力を、10代の私が感じ取れていたとは思えません。勇気が無くて全く手を出せなかった、ボブ・ディランの散文詩のような歌詞も今なら挑戦できそうです。
知識(情報)で愉しみ方は深まる
楽曲に限らず、演劇や絵画や映画などの芸術作品は、知識(情報)で武装して受信能力を高めておくと、愉しみ方が深くなると感じます。
作品から発信されるメッセージや価値を、持って生まれた感性だけで受け取れる人はそう多くはないでしょう。作品の持つ魅力を理詰めで理解した方が深く味わえます。誰に対しても一律に届くレベル以上のメッセージまで感じ取れるようになると、また印象が違ってきます。
持って生まれた審美眼に自信が無くても、正しい理論と分析手法の知識と作品や作者に関係する情報を豊富に持ち合わせていれば、作品理解の解像度は上がります。センスは大量の情報を飲み込むことで、ある程度まではカバーできます。最近はそういう理論を説く書物も増えています。遅まきながら、私はその路線で芸術を愉しんでいきます。
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