魂は惑星の影響を超えている。
よく使われるメタファ。
「コップの中に半量の水が入っている。まだ半分ある、と考えるか、半分しか無いと考えるか。違いは大きい。」
まだ半分あるという発想のほうが、人とコミュニケーションする上で歓迎されるし広がりもあるんだけど、単純なポジティブ発想ばっかりやってると偏っていく。その点はネガティブも同じ。
インド占星術をやってると、物事には本質的に、ポジティブもネガティブも無いという事実にぶち当たる。理論上もっともツライと思われる惑星配置をひょいと乗り超える人がいる。かと思えば、幸運な惑星配置が一生保証されているのに、同じ悩みをぐるぐる抱え続ける人もいる。インド占星術に関心を持つような人はむしろ後者のほうが多いくらいだ。
わたしは鑑定でポジティブ発想のアドバイスをあんまりしてない。
この地上で生きてる間に有効な「生きとし生けるもの法則」に違反しない行動をすること、それ以上の開運はないから。
この信頼が確信レベルに上がったのは、2年半くらい前の鑑定。
その彼女は家族・健康・社会的地位や経歴のどれについても成功し、お金も潤沢で容姿も悪くなかった。初対面のときも、決して安からぬ服装や装飾品を身につけていた。しかし、彼女は実年齢より10歳上に見えた。なぜそういう印象を持ったのか自分でも不思議だった。
彼女は一般のカウンセリングやスピ系のヒーリングなども試していて、話をしていても感じが良かった。知的で積極的できちんとした言葉遣い。自己啓発系には数十万円単位でお金を使っていたらしく「本当の自分」が出した答えを行動に移す、というポジティブな実践を何年もやってきたという。しかし結局、現実は変わらなかったらしい。必死で頑張り最初と同じ地点に戻ってしまう。車輪を回すネズミのようで苦しくて仕方ないと彼女は言った。
面談していて、彼女の苦しさが伝わってきてわたしも苦しかった。
彼女の、藁をも掴む想いというのにたいして出来ることは何だろう?こんな立派な方に上手いアドバイスができるわけがない、と開き直ったわたしは、こんなお願いをした。
” 生きとし生けるものが幸せでありますように ”と毎日唱えてください。
わたしのことを信頼しなくてもいいですし、心からそう思う必要もありませんので、やってみるだけやってください、と。
それから
一ヶ月くらいしたかと思う。
不思議なことに彼女は苦しい状態から解放されてきたという。アタマで考えることや日常は変わらないけど、意味もわからず落ち着いてきたらしい。 そして、半年か1年くらい経って様子を聞いた時の彼女は、落ち着いて安定していた。自分の思い通りにならない部分は相変わらず叶わないのに、現実のほうが変わってくれていて、家族関係が良好な様子だった。
インド占星術の大家でヨーガ修行者でもある、K.N.ラオの言葉
占星術家も、占星術の限界について理解する必要があります。スリマッド・バガヴァータムには、このように書かれています。
「もし幸福と不幸の原因が惑星だとするならば、どうやって惑星が永遠の存在である魂に影響を与えることができようか? 惑星は、生と死の支配下にあるこの肉体にしか影響を与えることはできない。惑星が引き起こす苦痛は、肉体にしか降りかからない。魂は惑星の影響を超えている。だとすれば、人は怒る必要はないではないか。」
占星術家が凶星の影響を読み取って、いくら恐ろしい予言と運気の変化を指定しても、真に宗教的な人の幸福には全く影響を与えません。
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