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ハナちゃんと不思議の島、ハワイ  #5

⛵️Sailing 5:ハワイは不思議体験であふれている


信じるか信じないかは、あなた次第⁉️

留学中、日本にいる家族に親戚間のトラブルが発生し、私も巻き込まれてしまった。当時は、その後5年間も裁判が続くなんて予想もしていなかった。
人生最悪の出来事だ。

悩んだ私はハワイ通のヨウコさんに相談してみることにした。すると彼女は予想外のことを教えてくれた。

「すっごくあたるサイキックの人がいるから、その人に相談してみたら?
私は普段はそういう怪しい話は信じないタイプだけど、その人は別。
ホストマザーにすすめられて見てもらったら、父親が病気で亡くなったこととか、父親の癖、私が手術した場所もピタリと当てられて、本当にびっくりしたよ。
彼女には手術した場所が光って見えるんだって。鳥肌が立ったよ!」

ヨウコさんは、日本ではバリバリのキャリアウーマンだった人だ。いつも冷静沈着で、論理的な考え方をする人だったので、非現実的な答えに私はかなり驚いた。

なんでも、その人は観光客を相手に商売でやっているのではなく、親しい人や紹介された人しか相談にのらないらしい。

最初は半信半疑だった私だが、だんだんと「手術をした場所がピカっと光って見えるなんて、どういうこと?」と思ったりして、いつのまにか
「行く行くー!」
と興奮して連絡先を教えてもらった。

帰ってからふと我にかえった私は、「ところでサイキックって何?」と思い、調べてみた。簡単に言うと「超能力者、超自然的な様子」といったところだろうか。
ふむふむ。なんだかよく分からないけど、面白そう。
興味半分で早速連絡を取ってみる。後日、彼女の自宅で会うことになった。

当日、教えてもらった住所へバスで向かった。バスはにぎやかな街中からどんどん遠ざかり、山に囲まれた緑豊かな地域へと進んで行った。空気がとても澄んでいる。家がポツンポツンと建っていて、私は教えてもらった住所を探した。

あった!とうとう見つけた!普通の一軒家だ。
もっと怪しそうな建物を想像していた私は、ちょっと拍子抜け。

彼女の名前はエマさん。旦那さんとお子さんと三人で住んでいた。いたって普通の人のように見える。ホンマにサイキックの人なのかなぁ。

私達はあいさつをして、リビングのソファに向かい合わせになって座った。
サイキックの方法はこうだ。まず自分の名前を言う。彼女が目を閉じて集中し、私の手の平を見る。たったそれだけ。占いのように生年月日を言ったりはしない。
私は「え?」と思った。本当にこれだけ?大丈夫?

エマさんは目を開くと、次々と話し始めた。

「あなたは、2年の予定でハワイに来ているでしょ?もう既に1年は終わったから、あと1年ハワイにいますね。あなたはハワイがとても好きで、大学を卒業した後にハワイのどこかの島に何度か旅行に来ています」

当たっている・・・。鳥肌が立った。ヨウコさんの言ったとおりだ。
どうして分かったのか、思わず聞いてみた。
なんでも、彼女の頭の中に映像が次々と流れてくるらしい。

私はまずは、親戚間で起きたトラブルについて相談したいとだけ伝えた。彼女は少し集中してから、顔をしかめてこう言った。

「あなたの叔父さんは強欲な人でしょ?心の中は真っ黒です。私は彼を好きではないわ」
「悪いニュースかもしれないけれど、彼は近い将来大きな病気になる」

そして、このあたりだと体のある部分を指した。
これは5年後に知るのだが、すべてドンピシャリだった。

「おじいさんはシルバーグレイの髪で、長さは耳の下ぐらいでしょ?あなたの側にいますよ。いつもあなたを見守ってくれています。悩んだら、自分の心に聞いてみなさい。あなたは心の中ではどうしたらいいのか、分かっているはずです。おじいさんは時々あなたの耳元で囁いてくれているんですよ。ハワイに来られたのも、おじいさんのおかげです」

いつのまにか涙が溢れた。私は祖父がとても好きだったのでうれしかった。
やっぱりハワイに来られたのは、祖父が導いてくれたおかげだったのだ。

本当にこんな不思議な能力のある人がこの世に存在するんだ。
鳥肌が何度もたった。
とはいえ、今から思えば全部当たっていたわけではない。
彼女曰く、未来を見るよりも過去を見る方が簡単なのだそうだ。
未来は常に変化するから。

結果云々よりも、この時の私は彼女にとても救われたし、勇気づけられた。
サイキックと聞いて怪訝な顔をする人がいるのは分かっているが、私はカウンセリングのような印象を受けた。
実際、彼女は普段はカウンセラーとして働いているそうだ。

私のトラブルの話はさておき、恋愛について聞いた話を書こうと思う。

「あなたは7月から10月までの間に二人の男性と出会って、どちらかの人を選びます。その人は日本と深いつながりがあって、何かのスペシャリストです。
その人は日本人のようにも見えるし、そうでないようにも見えるけれど、あなたとは日本語で会話していますね。そして1年以内に結婚します」

「あなたは帰国してから1年以内に、再びハワイを訪れます。何かやり残したことをするためです」

私が?遂に運命の人と出会えるの?やったー!と叫びたい気持ちだったが、すぐに頭の中のもう一人の自分がこう言った。
「いやいや、ちょっと冷静になろう。そんなにうまくいくわけないよ」
私は彼女の未来予想が外れた時にショックを受けないよう、あまり期待しないように努めたのだが、それは無駄な努力だった。
本当にそのとおりになったからである。

その後も驚いたことがあった。帰国して4年目のことだ。
私は当時、裁判や不妊治療などで精神的にとても落ちこんでいた。
ふと、「これがハワイだったら、エマさんに話を聞いてもらえるのに。また会いたいな」と思った。

すると、なんと翌日、彼女からメールが届いたのだ。私は久しぶりに鳥肌がたった。メールには、私からのメッセージが遠くハワイまで届いたと書かれてあった。

私が事情を説明すると、彼女はとてもていねいに彼女自身の不妊治療の経験などを教えてくれ、私を励ましてくれた。

もしかしたら、彼女を思い出しながらこれを書いている今も、届いているかもしれない。ハワイは本当に不思議な場所だ。

炸裂⁉️ご先祖様パワー

留学して最初の一ヶ月間だけ通っていた語学学校がある。そこで知り合ったサオリさんから、ゴルフの練習に誘われた。
彼女は私よりも一回り年上で、人生経験豊富な頼もしい女性だ。姉御肌で知り合いが多く、おまけに美人。私の憧れの存在だった。

彼女と同じ語学学校の日本人男性が、ゴルフが上手でコーチをしてくれるという。一人で習うよりも二人で習った方が楽しいからと、私を誘ってくれたのだ。
日本ではゴルフはお金がかかるイメージだが、ハワイでは練習場の金額も安く、気軽に楽しめるスポーツらしい。
私はゴルフをしたことがなかったが、きっとハワイでしかこんな経験はできないだろうと思い、一緒に習わせてもらうことにした。

サオリさん曰く、コーチは私と同世代で真面目ないい人らしい。
早速次の日曜日に三人で会うことになった。

私はふとエマさんの予言が頭をよぎった。
「もしかしてこのコーチが一人目の人かな?」
あれこれと、たわいもないことを考えているうちに、日曜日がやってきた。

昨日まで心配だった空模様がウソのように晴れて、とても気持ちの良い朝だった。
サオリさんとゴルフ場の駐車場で待っていると、少し離れた場所に車が停まり、男性が降りるのが見えた。彼女が手をふりながら言う。
「来た来た。彼よ!ヒロさーん!」

私は彼を見た途端、頭の中が?マークでいっぱいになった。
「いやいやいや、この人がいい人??絶対にありえないって!どう見ても危険な匂いのする怪しい人やん!サオリさーん!いい人ってホンマですか?」

髪型はちょっとロン毛でウェービー。日によく焼けた肌にサングラスをかけている。白のゴルフウェアに白のスニーカー。笑うと口元からチラリとのぞく銀歯が怪しさに拍車をかけていた。

練習が終わってコーチと別れた後、サオリさんから
「ね?いい人だったでしょ?ゴルフもとっても上手なのよ。ハワイのトーナメントに出場して優勝したりしているそうよ」
と言われた。
その後の練習でも、何度も「彼はいい人だ」と言われ続けた私は、
「はて、私のこれまでの人を見る目が間違っていたのだろうか?」と思い始めた。
人生経験が豊富な彼女が何度も言っているのだ。彼はきっといい人なのだろう。
第一印象で人を判断してはいけないのだ。

ゴルフの方はと言えば、運動音痴の私はさっぱり上達しなかったが、彼はお手本を見せてくれながら根気よく教えてくれた。物静かで余計なことは言わず、的確にアドバイスをしてくれたので、きっとコーチとしても優秀なのだろう。

しばらくして、サオリさんからこんな情報を入手した。
「ヒロさんは結構イケメンだから語学学校の女の子達に人気があるんだけど、若い子には興味がないんだって。残りの人生を一緒に歩んで行ける、落ち着いた同世代の女性がいいらしいよ。ハナのこと気に入っているんじゃない?」

ちょうどその後、サオリさんが練習に来られない日があった。私は彼のことがちょっと気になり始めていたのだが、いざ二人きりになると何を話したらよいのか分からず、居心地の悪さを感じていた。
するとしばらくして、彼が驚くべきことを言い始めたのだ。

彼は結婚していた。自分探しをするために、奥さんを日本に残して一人でハワイに来ていた。しかも二ヶ月前には赤ちゃんが誕生していて、いまだに会っていないと言う。

彼があまりにも自然に言うので、私は頭が混乱した。「こんなのよくある話でしょ」といった具合だ。まるで私の方がおかしいかのような雰囲気だったので、私は平静を装って、何事もなかったかのように彼と話し続けた。
今考えると、詐欺師はこんな風に人を騙すのだろうと思うのだが(まあ、結婚詐欺師ならば結婚していること自体言わないだろうが)、別れ際に彼から「次は練習が終わった後に夕ご飯を食べに行こう」と誘われて、つい流れでOKしてしまった。

ところがその後、彼と会うことは二度となかった。
約束をしてもなぜか延期になるのだ。
ゴルフの練習は何度も雨で延期になった。
彼の車のタイヤが高速道路でパンクしてしまい、急遽キャンセルになった日もあった。彼はリアルタイムで写真まで送ってきたのだから、ウソではないのだろう。
しまいには私が土曜日に参加していたハワイ大学での日本語クラブのボランティアに一緒に参加したいと連絡が来たのだが、それも直前になってダメになってしまった。

最初はなぜ延期ばかり続くのだろうかと不思議に思っていたのだが、途中からだんだんと可笑しくなってきた私は、延期の連絡がある度にカレンダーに✖️印を書き始めた。
するとなんと8回も続いたのだ。
私は大学時代の友人の言葉を思い出した。
「ハナちゃんはご先祖様にものすごく守られているから、そんじょそこらの変な男はハナちゃんに近づけないんだよ」
言われた時には「本当かな?」と疑問に思ったのだが、なんだか妙に納得した。
なるほど、そういうことだったのか。
いつの間にか彼からの連絡が途絶えた。
ずいぶん経ってから、彼はカリフォルニアへ旅立ったと風の便りに聞いた。

捨てる神あれば、拾う神あり

怒涛の夏が終わり、秋になった。
サオリさんはヒロさんに妻子がいたことを知ってショックを受けていたが、しばらくすると、すっかり過去の話になった。もうバカバカしすぎて、私達の間では笑い話にすらならなかった。

10月になり、3月の帰国日がだんだんと迫ってきた私は、カレンダーとにらめっこをしながら悩んでいた。
「もっと英語が話せるようにがんばらないと!でもその為にはどうしたらいいんだろう?」
「今よりも更に英語を話す機会を作らなきゃ!」

そこで、知り合いの多いサオリさんに、誰か話し相手になってくれそうなアメリカ人がいないか聞いてみた。

彼女は考え込みながら、こう言った。
「ひとり思いつく人がいるけど、性格暗いよ!絶対にハナとは話が合わないよ。難しそうな哲学的な話をよくする人」

私は、性格が暗くても英語の話し相手になってくれたらそれでいいやと思い、会わせてくれるようにお願いした。

人の印象って面白いと思う。
サオリさんの予想は今回は良い意味で外れた。
なぜなら私は彼と会った瞬間、握手をする彼の笑顔を見ながら、「あ、なんかこの人とうまくいくかも」と思ったのだから。

打ち上げ花火はメッセージ⁉️

ハワイ大学の近くにあるレストランで、サオリさんと彼と三人で待ち合わせした。
初対面の彼は汗まみれだった。なんと1時間以上かけて自転車でレストランまでやって来たと言う。インドア派の彼がそんなことをするなんて、ハワイパワーはやっぱりすごいな、と今になって思う。
彼は汗を気にして手の平をハンカチでふいている。それから笑顔で握手してくれた。

レストランは日本人が経営していて、焼き鳥が有名だ。
久しぶりにおいしい焼き鳥が食べられるとあって、私はルンルンだった。

話しているうちに、彼はかなりの日本オタクだということが分かった。
日本文化が好きで、特に茶道が大好き。
なんと神奈川県のお師匠さんのもとで10年も住み込みで学び、講師免許まで持っているという。ハワイに来たのも、ビザの関係で一時的に日本を離れなければならず、日本と関わりが深いハワイなら茶道を学び続けられると考えたからだった。ハワイには表千家同門会ハワイ支部があるのである。
更に陶芸や和菓子作りが趣味で、私よりもずっと日本文化に精通していた。

彼とは映画の話で盛り上がり、お互いにスパイ映画が好きなことが判明した。
『007』や『ミッション・インポッシブル』、子どもの頃にテレビで観た『特攻野郎Aチーム』の話など、彼とは初対面であるということを忘れる位、自然に会話がつづくのである。
もうすぐ『007』の新作映画が公開されるということで、私達は映画館へ一緒に観に行く約束をした。

ところが初デートは映画ではなく、ドライブだった。
彼から、車を数日間借りられることになったから、どこかにドライブに行こう、と連絡があったのだ。

私のハワイでの移動手段は、もっぱら徒歩や自転車、市バスだった。車の運転が得意ではなく、右車線を走らなければならないハワイの道路事情は考えただけでも恐ろしかった。

だから「ドライブができるなんてラッキー!」と気分上々で出かけた。行き先はノースショア。浜辺でウミガメを見たり、ガーリックシュリンプを食べたり。楽しくてあっという間に時間が過ぎていった。

日が落ちてから帰宅した時のこと。
私の住むコンドミニアムに到着して、彼が玄関前のアプローチに車を停車してくれた。するとその瞬間、まるで私たちを待っていてくれたかのように、空に打ち上げ花火が上がったのだ。とてもキレイで、終わるまで車の中から二人で眺めていた。

私は内心、ビックリしていた。
なんてタイミングがいいんだろう。
まるで私たちを祝福してくれているみたい。

自分の部屋に戻って、私は思った。
「これはきっと、おじいちゃんの仕業に違いない。恋愛が苦手で鈍感な私に、彼こそが運命の人だよって、花火で知らせてくれたんだ!」

留学前に学生時代の友人が「おじいさんがハナちゃんをハワイに呼んでいる」と言っていたのを思い出した。

今から思えば、彼は運命の人だったのかもしれないし、そうではなかったのかもしれない。でも単純な性格の私は、すっかりそう信じるようになった。
その思いは「一念岩をも通す」、「猪突猛進」の勢いで、一年後には強引にゴールを決めるのであるから、人生とは分からないものである。

国際結婚、アリかナシか

夫と出会った頃、私は留学して2年目で、40歳だった。
私は留学中、コミュニケーションの大切さをひしひしと感じるようになっていた。
自分なりに英語の勉強をがんばってはいたものの、思ったようにはなかなか上達しない。今まで当たり前だと思っていた、自由に意思疎通できることのありがたさを痛感した。
だからもし人生のパートナーと巡り会えるのならば、やっぱり日本人がいいなと思っていた。

実際、国際結婚をして、意思疎通ができずに悩んでいたり、離婚してしまった
ケースを何組か知っている。

恋愛当初はラブラブパワーでなんとかなる。
でも結婚となると、話は別だ。

私の出会った人はアメリカ人。でも彼は日本語がペラペラだった。

私が帰国するまでの数ヶ月、二人で色々な場所に行った。お気に入りはカピオラニ公園やダウンタウンにある州立図書館、ホノルル美術館など。
彼に誘われてハワイ大学の側にある日本文化センターにも行った。茶室があるのだ。そこで私は生まれて初めて茶道を体験させてもらった。ハワイで茶道初体験というのも、面白い経験だった。

ビーチにも行った。
私はそれまで、せっかくハワイにいるのに、数えるほどしか泳いでいなかった。住んでいると、意外に行かないものである。家から遠かったし。

海辺の芝生に座ってのんびりと過ごすのは最高に気持ちがよかった。
波の音と潮風が心地よい。
彼のおかげで私の行動範囲はグンと広がった。
やっぱり一人よりも二人の方が楽しいな。

ハワイで外れた色眼鏡

二人とも車を持っていなかったので、よく散歩した。日本では考えられないくらいの道のりを歩いた。
ある日の夕方、私達は海岸沿いへと続く長い並木道を歩いていた。するといつの間にか、黄金色の木漏れ日が辺り一面に降り注いできたのである。
私は彼と手をつなぎながら、キラキラと輝く光景に、なんてキレイなのだろうと見惚れ、幸福感に満ち溢れた。

私はサオリさんに感謝している。
彼女は意図していなかったと思うが、結果的に二人の男性を紹介してもらったことになる。
ヒロさんは、ちょっとお金に余裕があり、イケメン。素敵な車を持っていて、お洒落なお店を知っている。口数が少ないところがクールでミステリアス(だと思っていた)。
「おいおい、その上で性格がいいなんて、ドラマか雑誌の見過ぎだよ。第一、本当にそんな人がハナちゃんの望んでいる人なの?」とご先祖様が念力パワー全開で教えてくれた(多分)。

一方、夫はお金もない。車もない。お洒落にも興味ない。でも、なんだか一緒にいて安心できるし、楽しい。
もしあのまま日本にいて夫に出会っていたら、付き合っていなかったかもしれないな、と思う。
でも、ハワイという特別な空間の中で、私の色眼鏡は外れ、素の自分にもどって出会うことができた。世間体という名の呪縛から解放されたのだ。

一ヶ月間だけ通っていた語学学校で知り合ったサオリさん。
今から思えば、もしそこに通っていなければ、私はサオリさんとは出会っておらず、もちろん夫とも出会っていないはずなので、人生は面白いなと思う。
サオリさん、ありがとうございました。

武将が転生したら茶道外人だった⁉️

余談だが、帰国する直前に、エマさんに再び会いに行った。夫と出会えた報告と、帰国後の裁判の行方を知りたかったからだ。

私は、
「前回言われた通りに7月から10月の間に二人の男性と出会って、一人の人とお付き合いするようになりました。彼は日本と深いつながりがあって、茶道が大好きです。とても優しい人です」
と伝えた。エマさんは静かに目を閉じて、しばらくしてから
「彼はあなたよりもずいぶん年上に見えるわね」
と言うので、私は
「いいえ、彼は年下です」
と答えた。すると彼女は
「彼はこれまで前世で何度も生まれ変わって人生について学んでいるので、精神的にはずっと年上で、成熟しています。とても思慮深く賢い人よ」
と教えてくれた。そして、
「彼は前世は日本の武将でした。彼が大きな屋敷の中に座っていて、背景に雄大な山が見える。でも彼は戦が嫌いな文化人でした。だから今でも茶道が好きなのね!」
と言って笑った。

私はこの話に関してはどうも眉唾だと思っている。だって温厚でシャイな夫が武将だったとは百歩譲っても思えないからだ。

たまに夫から着物や襦袢のほつれを直してほしいと頼まれることがある。ものぐさな私は「裁縫なんてめんどくさーい!」と思いながらも、「この人がもし本当に前世で武将だったとすると、私はその妻だったりして?戦国時代辺りに、今みたいに夜中に夫の着物をチクチクと縫っていたりして?」なんて想像して、日本史好きの私はちょっと面白くなり、まぁいいかと思うのである。
夫には内緒の話だが。


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