言葉の生まれかた
「走らないでくださいね」
ニュースキャスターがそう言うと、番組が切り替わった。
いつからか、この国では「走らないでくださいね」という、相手を気遣う言葉が使われるようになった。
あれは、そう…50年ほど前の、ちょうど今のような肌寒い季節だった。
毎日を走るように生きていた私。
ゆっくりと、深呼吸して、歩きましょ。
そんなやさしい心のこもった言葉をかけてもらった。
その言葉は、自分を癒し、また他人も癒すこととなった。
「走らないでくださいね」
「じゃ、またね。くれぐれも、走らずに」
「大丈夫?最近、走りすぎじゃない?」
「走らずいこう」
そして、今。
テレビのニュース番組のキャスターさえも使うようになった。
こんな風に、人は言葉を生みだして行くのだろう。
長い年月をかけ、この言葉の広がりを見守ってきた。
走らずに、走らずに。
いい言葉でしょう?
今の若い方たちはご存知ないかもしれませんね。
昔むかし、noteというプラットフォームの、とある文芸部から生まれた言葉らしいですよ。
今もゆっくりと、走らずに、言葉を綴っている老婆からのメッセージです。
あなたも、そちらのあなたも、どうか走らずに。心に余白をもって過ごしましょう。
小牧幸助さんの楽しい企画に参加させていただきました。