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母と飲む缶ビール

家でお酒を飲むことがなかった20代。
そもそもビールが好きではなかった。苦いし。

母は毎日夜に缶ビールを1本、フライビーンズをアテに飲んでいた。絶対に1本だけ。ゆっくりと。

20代半ばで実家を出て、それからは母とは別々に暮らしている。たまに実家に帰ると、やはり母は缶ビールを1本飲んでいた。

30代。ビールに目覚めた。居酒屋で飲む生ビール、最高。ちょっとオシャレなイタリアンで飲む逆三角形のグラスに入ったビール、乙。流行りのクラフトビール、クセが強くて好き。そして、家で飲む缶ビール、至福。

なんならもうビール以外飲まなくていいかもなーと思うくらい、どこでもビールばかり飲んでいた。

実家に帰ると、母がいつものように缶ビールを飲み始めた。

自然と、わたしも冷蔵庫から缶ビールを取り出す。

一緒にフライビーンズを食べながら、飲む。

この時間を大切にしていた母の気持ちが、少し分かった。気がする。

でもわたしは、2本飲むけど。

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