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【2021/8/7】ニラは食べるしニンニクは増すし③

何となく続き物になっています。
②→https://note.com/marioshoten/n/n84293d903c8f

あに子の夏に食べるものは大抵決まっている。

一に冷やし担々麺、二に冷やし中華、三四がなくて、五に冷麺。

30代に入ってからと言うもの、夏の食欲の減衰は留まることを知らない。暑い中で料理はしたくない、そして熱い料理は食べたくない。万が一、食べるとすればキンキンにクーラーの効いた中華料理屋だけだと決めている。あぁあの店の冷やし担々麺が食べたい…でも遠い。もう夏に遠出する元気も環境も今の世の中には整っていない。あに子は嘆いた。

そこに突如現れたメシア、つまり救世主がいる。

それは、そうめん。

そう、あの白くて、細くて、何の特徴もない、そうめん。
たまにピンクや緑色がメッシュのように入っているそうめん。
実は揖保乃糸以外のメーカーもたくさんあるそうめん。
夏が終わると”にゅうめん”になる不思議なそうめん。

買い物が億劫で食材が尽きかけていた頃、少し前にスーパーで気まぐれに買ったそうめんが目に入った。そうめんならば、ゆで時間が短く、麺とつゆさえあればすぐに食べられる。あに子は冷蔵庫にあったレタスとトマトとパプリカを切って乗せ、さらにこれまた気まぐれで作ったサラダチキンを添えて、最後にごまドレッシングをかけた。

美味いじゃん。ありじゃん。

そうめんに興味を持ったあに子はレシピサイトを眺めた。アレンジレシピが多く掲載されており、パスタ感覚で色々な味を楽しめるようだ。

それからというもの、あに子はステイホームでリモートワークしている時は大抵そうめんをゆでていた。サラダそうめん(ごまだれ)、納豆そうめん(ラー油)、ベーシックそうめん(めんつゆ)がクリーンナップ。と言うか、この3パターンしかないのだけど。

しかしあに子は感じていた。明らかなる体力の低下を。たまに外へ出て日差しを浴びれば、帰ってから動けなくなるほど疲弊する。やはりそうめんだけでは夏を乗り切れないのか…

そして恐るべき食の大敵、「飽き」も迫っていた。

いくら色んなアレンジが出来るとはいえ、やはりそうめんはそうめん。アレンジも今ある環境の中でできるアレンジであり、そこはどうしても想像の域を出ない。

そうめんだけではこの夏乗り切れない…

あに子はもはや罪悪感のなくなったクーラーをつけた部屋で寝転ぶと、急に疲れを感じて、うとうとし始めた。

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麻利央書店
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