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集中力がない

 文章を書いている人間は集中力があると思われがち。だけど実際、私は自分の自覚する限り、集中力がない。
 その集中力が”ない”思い出と言えば、高校のバレーボール部での出来事だ。

 高校の頃、私は全国大会に出場するのが常連のいわゆる強豪校に属していた。私のポジションはセッターで、始めたのは高校からだった。セッターと言うのは分かりやすく言うと技術職みたいな感じで、コートに立っているメンバーの中に大抵一人しかいない。
(代表的な選手で言うと、元全日本の竹下佳江さん)
 バレーボールのプレーの流れは、レシーブをしたら、トス、そしてアタックとなるが、レシーブやアタックは大抵のメンバーが当たり前のようにするが、「トス」は基本的にセッターがする。つまり、「トス」は誰しもが出来るものではない、と大袈裟に言うとそうなる。
 だからトスを上げるセッターと言うのは、キャリアが長い人がやることが多い。小学校の頃からセッターで、中学、高校もそのまま続けている選手が多い。それだけ、経験や技術を要するポジションなのだ。もちろんアタッカーも経験や技術がある方が良いが、ジャンプ力やパワーなど、持ち前の身体能力の高さでカバーできることも多い。つまり、高校からセッターを始めたなんて、簡単に言うと、遅い。だから、練習もたくさんして(させられて)、何度も何度も怒られた。
 試合に負けたらセッターのせいと言われることも当たり前。でも得点を決めたら褒められるのはアタッカー。これがセッターの運命なのだ。それでも、ゲームをコントロールしていると言う認識もあって、楽しさもやりがいもあったのも事実だ。

 集中力の話から少し反れてしまった。

 ある日の練習。まだセッターになって間もない頃。私は平行トス(ネットとほぼ平行に上げる速いトス)の練習をしていた。監督は目印に「アンテナ(ネットの両サイドに立ててある赤と白の棒、これの外でプレーするとアウトになる)の下から2番目の白を狙え」と指示した。その高さにトスをするとアタッカーが打ちやすいからである。

※アンテナ

そして「最後までボールから目を離すな」とも言われた。山なりならともかく、平行にボールを持っていくのはとても難しい。狙っているはずの白にもなかなか行かない。そして遂に、数回トスを上げた後、めちゃめちゃ怒られた。そりゃそうだ、だって全然思ったところにボール行ってないもん。

ボールから目を離すな!!!!
集中しろっ!!


・・・え? そっち?
っていうか、目、離してました?

 って気持ちではあったのだが、じゃあ絶対に最後まで見たかと言うと自信がない。そのトスを上げる数秒の間に集中力が切れていたのだろうか。トスをちゃんと上げることよりも、最後までボールから目を離さない、これだけのことが出来たか出来ていないか分からないレベル。やっぱり私は集中していなかったのだ。今思えば、集中力がないことを怒られるなんて、恥ずかしや恥ずかしや。

 そんな出来事を思い出したのは、大学の友人に言われた一言だった。

あんた、めっちゃ集中してたやん!


 先日、その友人は私の出演する舞台を観に来てくれた。終演後、話をしていると舞台の感想よりも何よりも、共演者がセリフを言っている間(つまり私が何もセリフがない間)にもちゃんと芝居していたことをえらく感動し、褒めてくれたのだ。彼女の中のこれまでの私だったら「キョロキョロしていた」らしい。

それ、子どもやん。どんだけ集中力ないねん。

 ってツッコミたかったけど、そう言われて、かつての私が蘇って面白かった。そして、今の私が、成長しているかと問われたら、疑わしいのである。
 文章を書いている間にゲームに走るのは日常茶飯事だし、調べものをしていて他のことに目が行くのも、片付けなんかしていたら昔の写真や手紙とか見ちゃうのも当たり前である。でも逆に5~6時間ぶっ続けで書いていることもある。
 人の集中力は普通1時間もない、という説もあるくらいだから何が本当か分からないけど、私は「締切」があれば集中力が出るという、そういうナマケモノ体質であるし、恐ろしいくらいに波があると言うことだけはここに認めておこう。

やっぱり、集中力は、ない。

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