
介護施設での嘔吐や下痢発生時の適切な対応
介護施設では、利用者さんの体調が急変することがあります。その中でも、嘔吐や下痢はよく見られる症状の一つです。原因はさまざまで、食事の影響や感染症、持病の悪化などが考えられます。特に、高齢者は免疫力が低下しているため、感染が広がりやすいという特徴があります。
嘔吐や下痢が発生した際に、適切な対応をすることで、利用者さんの負担を軽減し、感染拡大を防ぐことが可能です。
今回は、介護施設での嘔吐や下痢発生時の対応方法や、日頃からの予防策について詳しくお話しします。
嘔吐・下痢の主な原因
嘔吐や下痢は、さまざまな原因で起こります。まずは、どのような要因が考えられるのかを知ることが大切です。
1. 感染症(ウイルス・細菌)
ノロウイルス、ロタウイルス:冬場に流行しやすいウイルス性胃腸炎。感染力が強く、施設内で集団感染しやすい。
細菌性胃腸炎:食中毒菌(サルモネラ菌、大腸菌など)によるもの。夏場に多い。
2. 食事や飲み物の影響
冷たい飲み物や消化しにくい食べ物を摂ると、一時的に下痢を引き起こすことがある。
食物アレルギーによる嘔吐・下痢も考えられる。
3. 持病や服薬の影響
便秘が続いた後の下痢(溜まっていた便が一気に出る)
糖尿病や腎臓病などの持病による影響
抗生物質などの薬の副作用
4. ストレスや自律神経の乱れ
環境の変化や不安感が胃腸の働きに影響を及ぼすことがある。
5. 体温の低下や冷え
冬場の冷えが腸の動きを鈍くし、下痢や腹痛を引き起こすことがある。
嘔吐や下痢が発生したときの対応方法
嘔吐や下痢が起こった際には、感染対策と利用者さんの体調管理を両立することが重要です。
1. すぐに安全を確保する
嘔吐の場合:誤嚥(吐しゃ物が気道に入ること)を防ぐため、利用者さんの体を横向きにする。
下痢の場合:速やかにトイレへ誘導し、衣服の汚れがひどい場合は着替えを手配する。
2. 汚染物を速やかに処理する
感染症のリスクがあるため、適切な方法で嘔吐物や便を処理します。
ビニール手袋・マスク・エプロンを着用する
使い捨てペーパーで拭き取り、汚染部分を消毒(次亜塩素酸ナトリウムが有効)
汚れた衣類やリネン類はビニール袋に入れ、速やかに洗濯
3. 水分補給を促す
嘔吐や下痢によって脱水のリスクがあるため、水分補給が重要です。
少量ずつこまめに摂取(一度に多く飲ませると、再び嘔吐する可能性がある)
経口補水液(OS-1など)を活用し、電解質のバランスを整える
嘔吐直後は無理に水を飲ませず、少し落ち着いてから
4. バイタルチェックを行い、必要なら医療機関へ連絡
利用者さんの状態を観察し、必要に応じて医師や看護師に相談します。
発熱や意識の混濁がある場合は速やかに報告
血圧や脈拍の変化、脱水症状(口の渇き、尿の減少)をチェック
5. 感染拡大を防ぐ
嘔吐や下痢の原因が感染症の場合、他の利用者さんや職員に広がらないようにすることが最優先です。
発生した利用者さんの部屋を隔離し、必要なら個室対応
職員は手袋・マスクを着用し、汚染箇所をしっかり消毒
タオルや食器の共用を避ける
日頃からできる予防策
嘔吐や下痢の発生を防ぐためには、日頃からのケアが大切です。
1. 食事の管理を徹底する
消化に良い食事を提供し、脂っこいものや冷たいものを控える
食材の衛生管理を徹底し、食中毒を予防する
2. 手洗い・消毒の徹底
職員だけでなく、利用者さんにも手洗いを習慣づける
トイレの後や食事の前後に必ず手洗いを行う
3. 免疫力を高める生活習慣を促す
規則正しい生活と適度な運動
十分な水分補給を行い、腸の動きを良くする
60歳から介護職を選ばれた方々へ
60歳から介護職を始められた方にとって、嘔吐や下痢の対応は少し不安に感じるかもしれません。
しかし、基本的な流れを覚えておけば、落ち着いて対応できるようになります。大切なのは、
まずは利用者さんの安全を確保すること
汚染物を適切に処理し、感染を広げないこと
水分補給や体調管理をしっかり行うこと
初めての対応では戸惑うこともあるかもしれませんが、先輩職員と連携しながら対応していくことで、次第に自信がついていきます。また、普段から感染症対策をしっかり行うことで、施設全体の安全を守ることにつながります。
まとめ
嘔吐や下痢の原因は、感染症・食事・持病などさまざま
発生時は、利用者さんの安全確保と感染拡大防止を最優先
水分補給やバイタルチェックを行い、医療機関と連携する
日頃からの予防策(食事管理・手洗い・生活リズム)を徹底する
嘔吐や下痢が発生しても、適切な対応をすれば大きな問題にはなりません。冷静に行動し、利用者さんが安心して過ごせるようサポートしていきましょう!
