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第101回箱根駅伝振り返り 日本体育大学 〜捲土重来〜
眠れる獅子は、ついに目を覚ましたか。
そう思えたのもつかの間。
残り28.1キロ過ぎ、その目はつぶりかけた。
10区・二村昇太朗の切ったゴールテープの先が笑顔に包まれることはなかった。
悔しい。今度こそ本気で「行ける」と手ごたえはあっただけに。まだ、この悔しさが晴れることはない。ずっと忘れない。
選手、首脳陣たちは本当に全ての力を出し尽くしてくれた。ありがとうお疲れさまでした。
捲土重来のスローガンを掲げて臨んだ1年間の集大成。77回目の継走。
日本体育大学の死闘を振り返ります。
レースプラン
12月29日に発表された区間エントリーでは完璧な区間配置ができた。10000mチームトップ3の3年生3本柱である全日本大学駅伝1区区間賞の平島龍斗(神奈川・相洋)が1区、エース山崎丞(新潟・中越)が2区。田島駿介(愛知・旭野)を3区ではなく日体大シード落ち後全大会で区間15位以下を記録している4区に配置。
山登りは3年世代4人目の浦上和樹(熊本・九州学院)。72:30を目標に。
ポテンシャルのある3年生中心に往路を組む。前回箱根8区2位分須尊紀(埼玉・東農大二高)・同10区6位住原聡太(愛知・豊川工)・山口廉(佐賀・大牟田)ら4年生が復路で前を追っていく、7.8.9区で波状攻撃を仕掛け10区を3分ペースで入ってビルドアップするプランを描いていた。
アクシデントはなく100点のオーダーが組めた。最後にシードを獲得した第94回大会と選手層・戦略は似ていると踏んでいた。
10人全員が3.4年生と下級生はなし。是が非でもシード権を確保。来季、現下級生にはトラックシーズンからスピードを磨いてもらい自信をつけて3大駅伝の経験値を積ませるのが理想。
目標の総合6位に向けては
1区平島62:00 2区山崎67:20 3区富永62:50 4区田島62:40 5区浦上72:30
6区石川59:30 7区住原63:40 8区分須64:40 9区山口69:50 10区二村71:00
往路5:27:20(昨年6位相当)、復路5:28:40(昨年7位相当)総合10:56:00を目安に考えていた。
往路振り返り
1区・平島龍斗(3年・62:40 区間3位🥉)
1年前、区間最下位に終わった姿はもういない。
今年度は4月に5000mで自己ベスト、全日本予選4組9位、箱根予選19位、全日本大学駅伝1区区間賞。直前の日体大記録会で28:20:32。
ほぼ全ての記録会、主要大会で外したレースはなく充実の一路を辿った。
序盤から自信を持っていた。
中央・吉居駿恭(3年・仙台育英)が飛び出し、第2集団は落ち着いた展開。前回大会は序盤から落ち着かずに、そのまま足取り重くなり、ハイペースについていけずだったが、今回は冷静にスタンバイ。終始表情は余裕を保つ。
比較的スローな展開もあって終盤まで集団で無駄な労力を使わず力を溜めている、こうなれば全日本同様の展開、平島の庭だ。ラスト1キロ、一気に仕掛けて抜け出した。誰よりも強い腕の振り、気持ちで前進。
区間3位。前回大会で区間最下位(23位)からのジャンプアップ。前年の大会から区間順位を20個も上げたのは平島が史上初。
2区・山崎丞(3年・68:44 区間19位)
これが本来の実力なのか。いや違う。
おそらく襷は上の順位で来るため下位から他大学の追撃にあう、先頭で襷もらった全日本2区と同じ展開になるのでは。そう考えていた。得意のアップダウンとラスト3キロ、戸塚の壁で落ちてきた選手をクレバーに拾っていく。順位を落としつつも流れは作る、そうしたレースを期待していた。
3位で貰った襷。やはり全日本同様の展開に。
2.7キロ手前で東京国際・エティーリらの留学生を軸とした集団に交わされ、さらに3秒ほど後ろの大集団にも吸収。この位置で我慢して拾えたら理想だったが余力を持った入りも速い足取りにはついていけず、気づけば15.16位集団の法政・小泉、東洋・緒方らと走る展開に。
2つの強力な集団が襲ってくる展開にペースも乱されたことに違いない。もう少し中位で襷をもらっていれば2度もペースが乱されることはなかった。難しい勝負の分かれ目だ。
現地・保土ヶ谷で見ていた際、表情も動きも悪くなかっただけに終盤以降の登りに備えてるのかと思いきや中々動きは変わらず順位は落ちるばかり。総合18位通過となる。
しかし少しずつ定点順位は横浜〜権太坂18位→権太坂以降16位と上げていたので低いポジションながら13位までは35秒差と堪えてはいた。
区間19位で耐えたという表現はかなり異質だ。
藤本珠輝(現ロジスティード)が3年次に記録した67:20の区間12位ラインが1つの目安だったが、そのタイムから大きく遅れる68:44。
正直、山崎クラスならもっとやれると思った。
少し前なら耐えるタイムとして上出来だったものの、今大会は65分台3人、66分台8人というストップウォッチクラッシュ状態。
1年前、平島が同じ悔しい思いを味わった。今度は山崎がリベンジする番だ。来年こそ揃って好走を。いつもの日体ならここで終戦だった。だがこのまま終わるチームではなかった。
3区 富永椋太(4年・62:44 区間9位)
反撃が始まった。
当日変更で3区に入ったのは前回箱根6区、全日本7区の富永。これで日体大は3年連続3区を当日変更。首脳陣からもガンガンスピードに乗っていく往路タイプと評されてきた彼の3区は理にかなう。暑さが課題なので気温の上がる後半がポイントだった。
長身かつ力感のなさがウリ、武器のスピードに乗って藤沢をまずは区間12位。2区で35秒差だった13位との差は16秒へ。次の定点、茅ヶ崎でも軽やかに前との差を詰めていく。表情はかなり余裕だ。課題だったラスト7キロはさらに伸びて全体7位のタイム。前から落ちてきた専修、大東文化の2人を交わした。
区間9位で4人抜き。さらに12位とは8秒差、10位のシード圏内まで1分5秒に。華麗なゲームチェンジで再びシード権の届く殊勲の走り。
全日本7区では7位集団と競り合うも最後に脱水症状に陥りシード争いに敗れてしまった。今回は自らの手でシード争いのポジションを取り戻すリベンジ。
ポテンシャルはあるもののこれまで主要大会でもう1つ伸びて欲しい走りが続いた富永。最後の最後に大仕事をやってのけた。往路のMVP。
かつて鬼門だった日体大の3区だがこの5年は区間9位から12位で走れている、高速化と攻略をつかんでいる。
4区 田島駿介(3年・61:36 区間5位)
主要レースは絶対外さない安定感と信頼度。
ロードに加えて課題だったトラックでも11月に10000mチーム最速の28:11:41に躍り出た。4区出走者では2番目にいい持ちタイム。
他の選手の後ろについて力を借りるのが田島の得意パターン。それを高い水準でイーブンペースを刻みつつビルドアップ決められる。
今回も区間3位ペースで飛ばす東洋・岸本(3年・高知農)と一緒の展開に恵まれた。ずっと並走を重ねて酒匂橋で3校と10位タイに。最後こそやや東洋に前を行かれたものの順天堂大学を交わして、なんとここでシード圏内に。
4区の日体大記録を2分近く更新。
3区 4区の2区間で8つ順位を上げる。ここ最近はおろか、シードを取り続けていた頃でもこんな浮上の仕方はなかった。今年度、本当に見違えるほど強いチームだと証明した瞬間だ。
5区 浦上和樹(3年・72:18 区間11位)
昨年度の関東インカレ1部ハーフマラソン5位入賞で一躍、その名を轟かせた。今季も全日本予選3組でも先頭に出ながら8位、全日本では前との差を詰めながら8区10位。スペ体質ではあるが主要大会のピーキングとロード適性は抜群。タフな区間で猛威を奮うのはOBの城越勇星を彷彿とさせる。
抜かれても抜き返せる粘りが彼の持ち味。1年前関東インカレ後、全く姿を現わさなかったのは5区山登りだと考えていた。
最初の函嶺洞門を区間19位。12位にダウン。最初をゆったり入って、ここから本格的な登りで順位を上げていくのが山登りのセオリー。ギアが変わる。
大平台で区間14位。ヘアピンカーブの曲がり方を見てるとかなり軽やかで歩数も前を行く選手よりも2歩ほど少ない。これはまだまだ期待出来る。
期待は現実に変わった。続く小涌園から17:51の定点9位タイ。昨年の三好鉱生とは1秒違い。小涌園から芦ノ湯は15:28の7位タイ。
芦ノ湯では東洋・東京国際に追いついていた。肩をダラっと下げてリラックス、まだ切り替えられる。そして芦ノ湯から元箱根を8:41と定点5位!
玉城監督就任後、最速のタイム。
芦ノ湯以降の足の切り替えは日体大伝統の課題だったが、ここで総合9位に浮上。最後こそ東洋・宮崎に交わされたものの往路10位とシード圏内でフィニッシュ。抜かれても抜き返す粘りは駅伝になるほど活きる、1年越しの浦上5区は大当たり。
前とは10秒も後ろは13位まで37秒差。
7年ぶりのシード権へ、久しぶりに胃の痛い2日目を迎えることとなった。
復路振り返り
6区 石川龍芽(4年・59:53 区間18位)
復路のスタートは6区でどれだけ耐えて7区以降の攻撃に転じられるかがポイントだった。抜擢されたのは前回6区のリザーブだった石川龍芽。
箱根予選会、転倒ありながらラスト5キロの根性でチームの窮地を救った選手。首脳陣の評価も急上昇した。この根性はラスト3キロで必ず生きる。自分もそう考えていた。
最初で最後の箱根駅伝で10位スタートと後ろからの追撃に吸収される難しい展開だった。区間順位は最下位ペースで走行、順位も14位に落ちたが、ラスト3キロの平地は11:03の定点間6位で走破。テーピングもしており万全ではなさそうだったが予選会同様の根性は健在。
シード争いしている大学とのダメージを最小限に留めてくれた。
7区 住原聡太(4年・62:56 区間5位)
10位まで21秒、ここからの3区間はひたすら攻撃。まずは前回箱根10区で4つ順位を上げる区間6位の力走の住原聡太。今季は関東インカレ10000m9位で28:41:88の自己ベストをマーク。このスピードは往路3区を考えたほど。
戦略的にこの区間でシード圏内突入は絶対だった。
まず二宮の定点を区間10位。シードボーダーだった東京国際・富永が復活の走りでシードラインは33秒に跳ね上がったのは想定外だったが、順位は1つ上げて13位。足取りも軽快で浮上は十分期待出来た。
15キロ手前、帝京・東洋、少し離れた立教の背後に住原の姿は大きくなる。勢いは断然上。
17.7キロ地点でついに10位浮上。
二宮から大磯までを20:03と前回大会のトップ水準(帝京・小野隆一朗20:01)で通過。この定点間は全体3位。ビルドアップ走ながら、その火力が1つ上なのが彼の強み。大磯からラストも8:40の定点間4位。ラストも直線での振り絞りも力強く腕が振れてキレも抜群だった。
まるで第94回大会、同じ7区で11位→7位と4人抜きジャンプアップした住田優範(現・愛知製鋼)を見ているような走り。
4人抜きで再びシード圏内に浮上。この2年間で8つ順位を上げた。ペースダウンすることなく突っ込み続けられる住原の良さ。近年最強のゲームチェンジャーが箱根路に別れを告げた。
8区 分須尊紀(4年・64:34 区間5位)
前回大会〝8区2位〟の肩書がついて迎えた今回の箱根駅伝。
彼をもう一度8区に起用できたことが今季の戦力の充実度を物語る。復路のポイントゲッターとして期待が寄せられていた。
10位。前とは40秒以上後ろとは10秒という難しい位置での走り。最初の定点、茅ケ崎を昨年より4秒早いタイムで通過。だが差は変わらず。とはいえ後ろに追いつかせていない走りができているのはさすが。昨年ほぼ単独走で区間2位を獲った実力と経験が生きている。
遊行寺を区間3位。後ろは変わらずも前が詰まっていく。後ろもいいタイムで来ているが差が詰まりそうで詰まらない走り。それもそのはず、この定点間を前年同様2位で通過と加速。9位が見えてきた。
だが、ここから東洋大学の3年・網本の反撃にあい、追いつかれる。ただ分須は冷静に対応した。後ろから上げてきた網本の力を借り9位の東京国際を2人で捉える。最後は気持ちでわずかに前へ出る。その並走は「伝統校のランデブー」だった。
単独10位で挟まれる難しい展開。序盤はなるべく差を詰められないように。追いつかれた後は力を利用してビルドアップ。熱さと冷静さを兼ね備えたマルチランナー。
「後輩たちにシード権をプレゼントしたい」
気持ちは走りから存分に伝わった。
我らのキャプテンありがとう。
9区 山口廉 (4年・69:59 区間10位)
前回2区の山口廉を裏の9区に。繋ぎ区間で押していく、ここでシード権争いを優位に進める。かつての日体大の伝統を体現出来る選手だ。全日本6区でシード圏内に浮上させた走りに期待。
5キロ14:04の早い入り。前を吸収して8位集団を形成。シードを取る確率を上げるうえで集団を巻き込むのは最適解。10キロ過ぎ9位に順天堂の前に出る。12キロ再び追いつき山口が引っ張る。
横浜駅前で山崎丞が給水。右親指で「こっちこい」のジェスチャー。
ここで前に出る、帝京についていきシードライン連れて行ってもらおう。表情や仕草から余裕は感じられたものの小林の速いペースについていけない。
雲行きが怪しくなる、18キロ過ぎ、苦しい顔を浮かべる東洋・順天堂が気持ちで前へ。だが山口がついていけず。差し込みも始まった。
終盤には東京国際にも交わされ12位通過。
9区の横浜駅前での表情からこの展開は想像がつかなかった。
早い段階で8位に追いついたのはよかったが、その後引っ張りすぎて体力使ったのと横浜駅で前に出るタイミングが早かった。
それなら抑えていればとなるが、この判断が誤っていたとは思わない。シード取るならひたすら帝京マークしていれば結果はついてくるはずだった。だが序盤抑えめだった帝京のペースアップに体力残らず。
1人で自分のペースでガンガン押せる山口のスタイルは最後まで貫いてくれた。
10区 二村昇太朗(3年・71:00 区間12位)
シードまで22秒。まだいける。
ラストは今季、苦手の全日本予選3組を16位でまとめ全日本5区で1つ順位上げた二村昇太朗(富山・仙台育英)
だがイーブンペースで刻んでいく二村にこの展開は不安もあった。スタート直後5秒前にいた東京国際・大村が突っ込み、1キロも経たずに単独走を強いられる。後半勝負に備えた二村。この判断がどう出るか。
最初の蒲田の定点を区間9位。だがシードラインはそれ以上の走りをしていて差は40秒ほどに。落ちてくる大学もなさそう、前との差も変わらないがそのままペースが上がらず残り距離だけ少なくなっていくだけ。タイムではなく距離からシード争い脱落していった。それに20キロ地点ではまだ44秒ほどだったから一定では走れていた。
余裕持った展開であればこの走りで十分だったが、あまりにもイーブンすぎたかな。中間からビルドアップがもう少し決まっていれば。区間12位と相応の走りはしていたが、周囲はそれ以上の走りだった。そこに適応していけるだけの力はまだだった。
9区山口の走りを見たからこそ安全な入りになったかもしれない。微差は大差だった。
激しいシード争いから1分17秒後、総合12位でのゴールテープを切った。
総合結果
往路 5:28:03(10位)
復路 5:28:19(9位)
総合 10:56:22(12位)
往路10位・復路9位で総合12位。言葉が出ないよ。単体ではシード圏内にも関わらず総合タイムで圏外に弾かれるなんて。
自分の想定から1分以上遅れたのは2区のみ。完璧な区間配置でほぼ想定通りのレースだった。特に8区以降に関しては全員プランどおり。日体大としては実力は出しブレーキを出したわけではなかった。
総合タイムも大学史上初めて10時間台に突入し、ようやく高速駅伝の流れに対応、それどころか区間5位以内を4区間も出し、
(1区平島3位・4区田島5位・7区住原5位・8区分須5位)大学記録は4区間(4.5.7.8区)更新。
2区18位から3区4区の2区間で8人抜きでシード圏内に。これほど華麗なゲームチェンジは過去になかった。
今回の出場校で前回大会から合計タイムを10分以上縮めたのは日本体育大学のみ。それだけ今季の戦力は過去と見違えるほど充実していた。
目標だった総合6位は昨年水準ならこのタイムで間違っていなかった。選手たちはその目標に向かって必死に走ってくれた。だが周囲の大学はそれ以上のパフォーマンスだった。
実際、総合8位以降の東京国際は復路5位、9位の東洋大学は同7位、10位の帝京大学は4位、11位の順天堂大学は6位と復路順位が4位から7位で固まっていたのは不運だった。
届かなかった1分17秒。この差を埋めるべく来季への戦いが始まった。
来年度の戦力
新4年生
4年生の穴は大きい。だが現3年世代は5人出走したうち4人が往路。今回出走したメンバーを軸に来季の区間配置も考えられる。5区の計算が立ちやすいのも大きい。浦上もまだタイムを短縮できる。来季は71:40から71:50を目標にしたい。田島も引き続き3.4区の立て直し役を担ってもらいたい。
今大会、他大学と戦えなかった2区だが山崎丞の実力はこんなものではない。おそらくレースプランは合っていたが周囲のレベルアップに遅れをとってしまったのが正しい。
2区も最初の10キロを28分台で入るのはマストだが、そのうえで28:30台で通過しないと区間12位すら届かない時代になってきた。
気になるのは1区平島龍斗。実は今大会2区で使いたいと思ったほどだった。今の彼にはそれだけの信頼があった。
かつて池田耀平(現kao)、藤本珠輝(現ロジスティード)といったエースたちは1区→2区という流れを確立していた。
このままスターターのスペシャリストになるか、それとも勝負の舞台を花の2区に移すのか。その編成が楽しみである。
新2.3年世代
上級生の層が厚く下級生の3大駅伝、全日本箱根予選会の出走経験者はまだ0名。3.4年生のスカウティングが相対的に良かったこともあり見劣りするのかもしれないが着実なステップを踏んでいる。
まずは今回エントリー入った3人。
2年連続7区当日変更となった吉田黎大(2年・千葉・埼玉栄)だが世田谷ハーフで2年連続64分前半、駅伝シーズンに向けたピーキングは出来ているが本番に向けて状態を維持出来るかがポイントになる。トラックのスピードを磨き復路のタフな区間に入れるように。
瀬戸雅史(2年・長野・上伊那農業)の1500mのキレと小回りの利く走りは6区の重心移動に適する。近年、平地はいいものの本格的な下りでブレーキかけた走りが目立っている日体大の山下りだけに、この区間も59分台は最低限。全日本予選序盤の組から経験を積んでほしい。
1年生で唯一16人入りした佐藤大和(1年・新潟・十日町)。すでにハーフは64:12のタイムを持ち長い距離への適応も問題ない。箱根予選から戦力として計算できるだろう。首脳陣の間では同じ新潟出身・山崎丞クラスとの評価も。公立高校出身でまだ身体的負荷はかかっておらず伸びしろは十分。日体大プロスペクトランク1位と言っていい。
メンバー外では吉岡斗真(1年・長野・佐久長聖)が最も出力高い。負荷をかけずに地道な体力作りから5000mを数本。往路の4区を希望区間に挙げていた。
高校時代15分台から10000m29:34まで縮めてきた天瀬海斗(2年・岩手・盛岡大附属)、ポスト漆畑徳輝(現トーエネック)のような成長曲線辿ってほしい長身ストライダー纓坂倭人(2年・富山・高岡向陵)1年生も山上勇希(福岡・大牟田)國井飛真(栃木・那須拓陽)がロードに定評ある。
現実的には復路でどれだけ攻撃出来る駒を用意出来るか、5000mの高校ベストは目立たなくとも確実に縮めて開花させるのが日体大の伝統だ。
今大会それぞれ4人抜きを記録した田島駿介は14:37、住原総太は14:43、富永椋太も14:55から台頭して今大会の躍進に大きく貢献した。1人でも多くまた選手は伸びてくるはずだ。
総括
世代としては来年度だったが、戦力としてはポテンシャルある3年生と前回大会復路で好走の4年生がもう1度復路担える選手層を築けた今年が勝負だった。絶対シード権を…。
6月の全日本大学駅伝予選を8人全員10位台で走り切っての通過。
集団走崩れるも3年生たちがひたすら前を追い、最後は4年生の根性が必要だと証明した箱根予選会。
1区平島区間賞、2区山崎が冷静に凌ぎ地道にシードラインに浮上した11月の全日本大学駅伝。
月末記録会は山崎平島田島が10000m28:20以内。往路主要区間で戦える自信を手に入れた。本当に手応えはあった。
個々の適性と区間配置のバランスも最高。
新チーム発足当初、目標の6位に対して少し高いなと思ったが、今季の選手たちはその目標は決して高くなかったね。
結果はその倍の12位。例年ならシード権を獲得出来る水準で走り切ったからこそ悔しさしかない。でも最高のチームだった。心から応援したくなる誇れるチームだった。
来年度はいよいよ1年次からチームを引っ張ってきた山崎丞、平島龍斗、田島駿介らの最終学年。かつて吉田亮壱、城越勇星、富安央、小町昌矢、辻野恭哉、住田優範が集結した世代に雰囲気、タイプは似ている。
彼らが在学中に1度もシード権獲れずに卒業していくなんて考えられない、もうこれ以上、悔しい思いを味わって卒業していく4年生を見たくない。
獅子奮迅、捲土重来。78年目の箱根路へ。
悔し涙を力に変えた獅子たちが今日も走り出す。
ヘッダー画像: スポニチ(2025年1月2日)よりhttps://www.sponichi.co.jp/sports/news/2025/01/02/gazo/20250102s10063000099000p.html