【人】ピラミッドから世界が見える
【NHKアカデミア】2月25日
エジプト考古学者河江 肖剰先生の回。
全国から抽選で600人が参加。運良く当たって、オンライン参加しました。
https://www.nhk.or.jp/learning/academia/
河江先生は、ピラミッドの建造方法を調べている。
クフ王のピラミッドで有名なギザの三大ピラミッドの3Dデータを全て記録し、研究に役立てている。
ピラミッド内部のウェルシャフトという場所(縦長)からもデータを収集。ピラミッドの内部の構造体を明らかにしている。
ピラミッドには標準モデルがない。それをデータを取って作成する。そして、誰もがアクセスできるようにする。それができると世界中の人がアクセスでき、ピラミッドの謎に挑めるようになる。
ピラミッドはひとつ200㌧の石の塊だが、石ではなく人間を想像してピラミッドを見ると、全く違った光景になる。
ピラミッドタウンとよばれる遺跡を研究している。ピラミッドに隣接し、建築に関わった人々が暮らした町だ。
この遺跡では、アメリカ人考古学者マーク・レーナー先生のもとに世界中から専門家が集まった。ディガー(発掘家)と呼ばれる人たちだ。骨、石器、土器、写真など、あらゆる専門家が集まった。いろんなメンバーで、26か国から来ている。
国ごとに発掘する区画が決められていた。
河江先生はタウンのゴミ捨て場を担当。ゴミはすごく情報が多い。貝塚のようなもの。
土器の丘、ビール造り用の土器だ。白いのは動物の骨。それも若い牛だ。封泥(言葉が刻まれているもの)には王様の名前や称号、役職などが書かれている。ピラミッドタウンにはパピルスは出ない。封泥が2500個も出た。
河江先生は「ゆきのり」という。封泥は、先生が担当した「ユキの家」と呼ばれる邸宅から出た。持ち主はわからなかったが、封泥から、王子の教育係ということが分かった。
町に住んでいた人たちは、毎日ピラミッドをつくりに通っていた。2~3万人が建築に関わっている。
昔は奴隷と思われていたが、ピラミッドタウンを見ると、ビールや子牛の肉を食べていたようだ。パンも出てきている。カロリーが高いので、たくさん労働をしていたのだろう。ピラミッドタウンは食生活が豊かだ。
ピラミッドはすごく人間臭い建物だ。今までは石しか見ていなかった。
最近はピラミッドを通じて社会や国家を考えている。石はどこから持ってきたのか、石を切る銅をどこから持ってきたのか。
最古のパピルス文書(メレルが書いた)が発見されたことで、それらが明らかになった。
今まで交易はナイル川を使っていたと思っていた。ところが、航海、シナイ半島で銅や採石をしていた。
船は解体して持ち運んだ。
クフ王の棺(みかげ石)に削り跡がある。花崗岩、鉄、船はレバノン杉、ヌビアやスーダンから持ってきた。
Googleアースで発見された道もある。メイドゥムからワディ・エル=ジャラフ(港)の道がそうだ。
ピラミッドをつくる、から出発して世界が広がってきた。ピラミッドはエジプトの国家プロジェクトだった。
開拓の精神、エクスプローラー、国も海も超えて物資を求めに行った。
人類文明誕生5000年からピラミッドができた4500年、この500年間に官僚制度ができて、それはイコール税制度だ。富の再分配
国家の目線として広がっていく。
研究を通じ、そこに行くことで自分の目で見て感じる、追体験することで研究が変わった。
デミスティフィケーション(脱神秘化)。
オズの魔法使いに出てくるエピソードで、偉大な魔法使いは、実はカーテンの後ろに隠れてマジックを使う小男だったというのがある。それと同じで、不思議な事を不思議なままにしない脱神秘化が必要だ。
ピラミッドは挑戦と失敗の産物。誰も、何もしたことがないという恐怖をどう克服したのか。人の知りたいという好奇心で常に進んできたんだと思う。