思い出す風景は物語の中に
妹の職場の方が割と急な感じで亡くなり、かなりショックを受けたと電話があった。
その時、私の中によしもとばななさんの「ハードボイルド/ハードラック」の中のハードラックの一場面が頭に浮かんだ。
姉が結婚するための引き継ぎ中に突然倒れそのまま帰らぬ人になった。
妹の私が姉の荷物を会社に取りに行く場面だ。
その後、妹に今度パスポートを取るから台湾行こうよ!と誘った時も、よしもとばななさんの「王国 その3ひみつの花園」の台湾の温泉での場面が思い浮かんだ。
どちらも本の名前まではうろ覚えで改めて探したのだけど、それはただ読んだだけで私が実体験として経験したわけではないのに、深くくっきりと自分の記憶として刻まれていることに驚いた。
本好きな私なのに、自分の子ども達は本に興味を持たなかったことは残念でならない。誰にも干渉されず1人で出来て、何度も繰り返し想像できる。こんなに面白い遊びはないと思うし、自分の頭の中で作る世界が何よりもリアルで心に迫る…と思う。
しかも読み終えて何年も経っても、頭の中に自分の体験よりも鮮明に残っているってすごいと思った。書き手の力が素晴らしいことももちろんあると思う。
世の中にたくさん作品がある中で、私がよしもとばななさんの作品に惹かれる理由は何とも説明し難い。ただ心にすっと入ってくるのだ。