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紫の髪

小さい頃、塗り絵が好きだった。色々な塗り絵ブックを買ってもらい、せっせと一人でクーピーを使って塗る。時々は色鉛筆も使っていた。細かい部分はよく削った色鉛筆。広い面はクーピーで塗っていた。

たまの休みに数日間、まとめて祖父母の家に預けられることがあり、その時も塗り絵をして遊ぶのは定番だった。ある時、わたしが女の子の絵に色をつけていた時、祖父が心配そうに声をかけてきた。
「どうして髪の毛が紫色なの?」と祖父は言うのだ。後から聞いたところによると祖父は真剣に心配していたようだ。精神疾患なのだと思い、慌てたのだとか。今でこそ髪の毛を何色に塗ろうがそんなナンセンスなことを思う親はいないと思うのだが、時は昭和である。髪の毛を人類の通常の色ではないものに塗るなど、頭が壊れているに違いないという判断になる時代だったのだ。
当の私は、塗り絵の表紙に色ありで描かれていた女の子が紫の髪の毛をしていたという理由だけで、そのまま中の塗り絵ページにも紫で色をつけていただけだった。もちろん祖父に「だってお手本(表紙の絵のこと)が紫だから」と答え、祖父はさらにそれを見て仰天していた様子だった。祖父には理解不可能な世界だったらしい。

紫の色鉛筆を見ると、いつもその話を思い出す。

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