紙とペン
夫はじゃんじゃん海外出張しているのだが、私はしばらく犬の介護のため国内というか国を出る前に家を出ないという犬に密着している昨今であるが、最近時期もあって手帳が話題になることも多く、手書き手帳かデジタル手帳か、手書きメモかデジタルメモか、手書きノートかデジタルノートか、色々と考えている。
デジタルのメリットは荷物が重くならないこと。機密度にもよるがメモリーやクラウドを上手に活用すれば、世界のどこからでもアクセスできるし、今持っているデジタル機器が壊れてもどうにかなる場合も多い。
昔々、クラウドなんてものがなかった時代、大学院で論文を書いていたときに、クラウドもどきのようなことをして、自分の原稿を守っていた。メールアドレスに添付して、あちこちに散らしておくのである。もちろん持ち歩けるメモリーにも保存する。さらに先輩から教えてもらった裏技として、論文作成のために一度プリントした紙(ゼミ発表も含む)は論文提出完了まで絶対に捨てない、という教えがあった。これは最後の最後に、紙で提出しなければいけない論文のためだ。万が一、機械的トラブルが起きた時、このプリントした紙をどうにかハサミと糊で切り貼りしてコピー機にかけ、提出するという、もう最後の手である。実際私は危うくこれになりそうになった。最後の最後にプリンタがーが壊れたのである。恐ろしい。なんて恐ろしい。でもこれ、よくあることらしいので、先輩ありがとうと思ったのである。やはり経験者の知恵は素晴らしい。
さて国内出張ならば、最近はデジタル機器の電源を確保できる方法も多様化され、カフェもコンセント利用可能席が増え、新幹線も場合によってはコンセントがあるので、一昔前よりは必死に電源確保に焦らなくても済むようになった気もするのだが、海外出張ともなるとそうもいかない。海外でGoogleマップが使えなくなったら途方に暮れるし、結構デジタルデバイスがいつでも使えるようにしていることは、なかなかの死活問題であったりもする。そんなわけで、海外出張時はいつも以上にバッテリーを無駄使いしないようにし、飛行機で持ち運べる大容量モバイルバッテリーももちろん持っていく。しかしこのモバイルバッテリー、きちんと持っていける量を事前に確認していたのにも関わらず、なぜか手荷物検査で没収されそうになるという事件が数回起きたことがある。ゴネにゴネまくって毎回どうにか没収を免れているのだが、普通にゴネなかったら没収されていた案件である。そんなこともあるので、バッテリーがいつ失われるかは運次第なところもあり、常に電源には気を使っているのだ。
そんなわけで、飛行機移動中に無駄なバッテリーを消耗しないように心がけている。しかし機内移動の長時間の間、やることは実は山積みで、
・到着したら連絡すべき人の優先順位をつけたリストアップの確認、
・到着した日に絶対に行くべき場所の確認
・到着した日にもし可能なら終わらせられそうな予定の確認
・必要になる英語の用語再確認
・自分の考えを英語でまとめる再確認
など、直前の仕事は多い。
普通ののんびりした旅行なら全然違ってくるような気もするのだが、常にミッションを携えて渡航しているので、なかなかそういう旅ができる日が来る気がしない。いつか「障子に貼るほど」お金持ちになったら(古い表現ですが、聞いたことがある方います?障子に貼るほどのお金。)、なんの予定もなしにビジネスクラスとかでポイっと誰も知り合いのいないのんびりした地域に1ヶ月くらいダラダラするためだけに行ってみたい。クラクフとか。エストニアとか。アイスランドとか。
さてそんなわけで、バッテリー問題なのであるが、無駄にバッテリーを消耗しないために、私は紙のメモ帳とペンを持ち歩いている。先述のリストはこの紙のメモにまとめている。よって現地到着後、Googleマップを開くときと、先方に連絡するとき以外は、この紙のメモを開いている。
今思えば、これは安全対策の一つでもあると思う。ぼんやりスマホを手にしながら歩いていたらスマホ盗難にあった、という話はよく聞くことで、しかしぼんやり紙のメモ帳を持って歩いていて、それを後ろからすごいスピードでやってきて私の手からもぎ取る奴なんて皆無であろう。もしそれをする猛者がいたら、私をスパイだと思ったに違いない。どんな重要なことが紙にメモされているというのだ。しかもほとんどキチャナイ殴り書きの日本語だぞ。おそらく君にとってそれはほぼ暗号だぞ。グーグルレンズもきっとちゃんと訳してくれないぞ。
そんなわけで時代が進んで便利になっているけれど、紙のノートやメモ帳が消えることはないように思うし、紙とペンという方法はある意味無敵でもあるような気さえしている。