極細血管で献血できない人
生まれつき血管が細い。幼少の頃から採血をするにも点滴をするにも一苦労で、私が針を何度も刺されて腕中があざだらけになるだけではなく、看護師さんたちも大慌てで針を刺すのに自信がある看護師さんたちが次々にやってきては交代、破れ去っていくのを何度も見てきた。
今から10年ほど前のある冬の寒い日のこと、ちょっとした空き時間ができた時に目の前に献血ルームがあったので立ち寄ったことがあった。しかし結果は献血不可。血管が細すぎて針が刺さりませんという結末だった。その時の担当してくださった方曰く「夏とか、あったかい時に来たらできるかもしれないから、またもし来れそうだったら次にお願いしますね」とのことで。
そのことをなぜか今になってまた急に思い出したのである。この酷暑。もしかしたら行けるんじゃなかろうか。
一番近場の献血ルームを予約した。10年一昔とはまさにその通りで、予約もアプリになったし、色々と手続きはスムーズになっていた。
しかしである。やっぱり私の血管はこの酷暑も細いままであった。細いどころか「無いね」という結論であった。10年でさらに退化したのだろうか。温かい飲み物を飲んだり、肘周りを温めてみたりしてもだめ。何をしてもだめ。
看護師さん曰く「血管の細さは生まれつきだから、鍛えて太くなったりするわけじゃ無いんだけれど、男性とかですごく筋トレをしている人とかだと血管がぽこっと浮いている場所ができたりして、そうするとそこに刺せたりはするんですけれど。でもこればっかりは生まれつきなので。」ということで。
お菓子もらってジュース飲みまくって帰ってきた人、みたいになったわけだが、帰り道はたと私は10年前には思わなかったことが頭に浮かんだ。
生まれつき血管が細い、ということは、血液がちょっとでもドロドロになったら即終了なんじゃなかろうか。太いパイプの壁面にヘドロがついてきても、多少の猶予はあるかもしれないが、ほっそいストローにヘドロがついたら瞬殺だろう。
父方も母方も、家系に心疾患が多すぎる。
そうか。今日の献血での学びは、「いつが最期の日になってもいいように断捨離をしっかりしておこうね」ってことなんだな。
心疾患になった親戚たちは健康診断の結果に問題はなく、むしろ日常的にとても健康体だった人たちばかりだ。彼らが献血したという話は聞いたことがないが、採血で苦労したという話も特に聞いたことがない。私が知らないだけかもしれない。
ほっそいほっそい血管が、なぜかある日突然、プチュっと、心臓を止めちゃったり、するのかもね。もうそれだと新種の説になるんだろうけれど、心疾患で亡くなった後は誰も解剖しないから、本当はなんだったのか、全くわからないんだわよね。
ああ、私の平熱が生まれつき35度で、最近は冬になると34度が定番であり、去年は33度を記録したというのは、血管が細いからかもしれないわね。無理して体を温めると、頭痛がするのよね。冷えていると体調が素晴らしく良いと感じるのは、もしかしたら血管が普通の人間の状態と違いすぎているからかもしれないわね。うん、ならば、色々と、諦めもつくわ。