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老犬ウイリアムは17歳と4ヶ月

我が家には私が大手事務所に所属していた時代のほとんど全てを共に歩んできた老犬がいる。その名もウイリアム。王子のような名前なのだが、由来はかの有名な映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』に登場するウイリアム・ターナーというイケメンである。演じていたのはオーランド・ブルーム。この映画の主役はジャック・スパロウという海賊で、演じていたのはジョニー・デップ。
当時大ヒットしたこの映画に因んだのは、我が愛犬にウイリアム・ターナーのような勇猛果敢で何事も恐れず、しかもイケメンという、いかにもな感じの子に育ったらいいなと思ったからであったのだが、当の本人はなんと強烈なビビり犬で勇猛果敢どころではなかった。見た目としては祖父母の代に見た目のコンテストで賞を取ったという血筋の経歴があり、確かに見目麗しい、正当なミニチュア・ダックスフントのロングヘア、ブラックアンドタンである。耳の位置も顔の長さも素晴らしく、とにかく見た目はウイリアム・ターナーだったのだが、社交性ゼロ、好奇心よりも防御全開、男の人と子供が大の苦手、大騒ぎして寄ってくる女性も苦手、いきなり触るやつは論外でソッポをむく、のような本当に「もうちょっとくらい頑張って愛想良くしてくれよ」と頼みたくなるような場面もあるほどの犬なのであった。

そのウイリアムも、もう17歳と4ヶ月。だんだんと年相応に弱ってきて、転ぶことも増え、日常生活の中での予期せぬ失敗もちらほらと出てくるようになった。それでも自力でトイレに行き、自力で水を飲み、食べたいタイミングで自己主張をしてくれる。他の老犬たちの介護の様子を聞くに、我が家はほとんど手がかからないと言ってもいい。本当によくできた犬である。


外が見えるこの場所がお気に入り


最近は目が比較的見える時と、全然見えない時があるようで、見えない時は不安そうに私を探し回っている。体の一部がどこか触れていると安心するようで、最近はすぐそばで眠ることが多くなってきた。若い頃は、「今日はもうほっといてほしい」と離れたところで一人でしっかり睡眠をとることもあったのだが。日常のちょっとしたことで、ああ年をとったんだなと感じることが多々ある。

お留守番を頑張れる時間はせいぜい2時間。近くのスーパーまで急いで片道30分、買い物に出てたり、そのついでにあれこれまとめて用事を済ませて帰ってくれば、2時間なんてあっという間に過ぎてしまう。駆け足で買い物し、ネットで注文できるものはネット配送にしてと工夫はしているものの、全く家を出ないわけにもなかなかいかず、秋冬になれば犬用カバンに入れて抱えて一緒に出かけられる買い物先もあるのだが、猛暑だとそうもいかず、この夏は苦心している。


天然素材より化学繊維の方が好きなウイリアムはこのポリエステルのふわふわが大好き

ここ最近、新しい食べ物を夫が見つけて試しているのだが、これが結構気に入ったようで、食欲が増進している。とにかく鶏胸肉かササミしか食べなくなっていたので、バランスが気になっていたのだ。大好きな鶏肉の合間にこちらも食べてもらい、ちょっとでも最後まで元気が補えたらいいなと思う。

しかしここ数日、どうもウイリアムに悟ってきたような感じが見受けられ、ああもしかしたらあと数ヶ月なのかもしれないなと思うようになった。生への執着を手放しつつあるように見えるウイリアムは、毎日自分自身の心と対話をしながら、生きることについて考えている様子である。私への執着の気持ちが盛り上がり過ぎて、私が窒息するぞというくらい密着してくる時もあれば、一人で考えているような時間もある。私にはただ、見守ることしかできない。


こういう表情の時は特に年をとったなあと感じる

抱っこが大好きで、知らない人が苦手で、頑固で、意外と好き嫌いははっきり顔に出るタイプで、食べ物にも意外とうるさく、お風呂が大好きで、犬の友達が少なくて、場の空気を読む力は天下一品という、犬らしさにちょっと欠けているウィリアムは、私との犬生を楽しめているのだろうか。


夫が見つけて買ってくれた、ウイリアムの最近のお気に入りはこれ。とにかくウイリアムのこととなると良いものをと甘々な夫。大切にしてもらえて、本当に感謝でいっぱいである。

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MariKusu
温かいサポートに感謝いたします。身近な人に「一般的な考えではない」と言われても自分の心を信じられるようになりたくて書き続けている気がします。文章がお互いの前進する勇気になれば嬉しいです。