使い捨てないビューラー
まつ毛ビューラーのクッションゴムを取り替えた。
まつ毛をくるんと上向きにカールさせられるビューラーは、マスカラを塗る前の必需品でもあり、私は小さい頃から目頭や目尻に時々逆さまつげが生えやすいということもあり、ビューラーには長年お世話になりっぱなしである。
一時期はまつ毛パーマもしていたのだが、引っ越ししたら近場に手頃で合う施術ができるところがなくなったことや費用の点やどうしても目につける糊やらパーマ液やらからの多少の影響もないとはいえなくて、最近はまつ毛パーマは一時休戦中だ。
まつ毛ビューラーと一言で言っても、実は多様な種類がある。
一番大きな違いはそのカーブが急か緩やかかというものと、長さ。
それぞれ目の大きさも眼球から出てくるカーブも違うので、まつ毛ビューラーにも人によって合う合わないがあるようなのだ。
私はそこまで拘って自分の目のカーブや目頭から目尻までの長さを考慮した上でビューラーを選んだことがないのだが、実は今使っているビューラーは多少拘って選んだ経緯がある。
拘った点は、長さでもカーブでも、まつ毛の上がり具合を左右すると言われているスプリング具合、グリップ力などの、どれでもない。
交換用のクッションゴムが存在するか否か、だ。
「え?そんなもの、当然存在するでしょう?」
と思ったそこのメイク好きなあなた。
ノンノン。
なんと、ここでは具体的なメーカー名は差し控えるが、
雑誌のメイク特集なら高確率で取り上げられるであろう超有名なあのメイクアップブランドから出ている、そこそこ有名なビューラーが、なんと、交換ゴムが販売されていなかったのだ。
大抵、ビューラーを購入すると1個は交換用のゴムが付いてくる。
ここまでは良い。
そしてそのビューラーのすぐ近くには、ゴムだけという販売もある。
それが当たり前のことだと私は思い込んでいたのだ。
しかも某有名メーカーである。もちろん多少の割高だったとしても、あるでしょう、それは、と信じて疑っていなかった。
さて件の某有名メーカーに、ある日、交換用ゴムだけを買いに行った私。
売り場を見渡しても見当たらないし、交換ゴムは陳列はしないかと思って、店員さんに尋ねた。
「ビューラーの交換用のゴムはありますか?」
分厚く塗られたファンデーションとキラキラのラメを輝かせた目元で、店員さんはさらりとこう答えた。
「申し訳ございません。交換用のゴムというのは販売しておりません。」
私は、脳がフリーズした。「え?どういうことですか?」
さらに涼しい顔で店員さんはこう続けた。
「ビューラーのゴムが使えなくなった場合は、ビューラーごと再度ご購入いただくことになります。」
全然、意味がわからなかった。
今、昭和なの?
世はサスティナブルって声高に叫ばれている時代じゃありませんでしたか。
もちろん私はその某有名メーカーでビューラーを再購入はせず、
別のメーカーで交換用のゴムが販売されていることが確認できたものを新たに購入した。
別メーカーのゴムだけ買って、無理やりはめ込んで使ってみても良かったのかもしれないが、買い物は投票であると思っている私としては、ここは無駄が出ても買い直そうと思ったのだ。
某有名メーカーのゴムがダメになったビューラーはリサイクル不可能な金属物質のため、不燃ごみ行きとなった。
そして今日私は、その時買い換えたビューラーの手入れをしてゴムを交換したのだ。
スッキリ。まつ毛もぐるんぐるんに上がった。
そのメーカー、なんだか以前から、おやと思う、気にしすぎなのだろうかという程度の違和感はあったのだ。もっと早くにお別れすべきだったのだが、私も不注意であった。詳しく調べていけばいまだに動物実験もしているメイクアップ用品だった。
そうか、遅かれ早かれ、私とは合わなかったのだなと。
あの金属のビューラーなんて、そうそう壊れるものではない。
なんだったら交換ゴムさえ手に入れられれば、一生に1個でいいかもしれない。
あの某有名メーカーの定員さんも、特に悪気があったわけではないだろう。
それがそこで働く彼女たちの当たり前だったのだと思う。
もしかしたら私自身も、なんの知識や経験もなく社会や世界について深く考えるきっかけもないままの、20年くらい前の私だったら、彼女たちと同じような感覚で、なんとも思わなかったことかもしれないのだ。
本当に物を無駄にしてもなんとも感じない大量生産大量消費の時代になったんだなあとつくづく感じた話であった。
そんなわけで、気になる方は、ビューラーの交換ゴムがあるかどうかも、考慮ポイントに入れることをお勧めする。
余談。私はもうどこの国の手荷物検査場での出来事だったか忘れてしまったのだが、海外ロケ帰りの手荷物検査場でビューラーを没収されたことがある。
機内で、ビューラーで、何を攻撃しろと言うのだろうか。
必殺まつ毛抜き攻撃、だろうか。
そんな高度な技が繰り出せるヒットマンがいるなら、ぜひお会いしたい。