5時間

明け方、カーテンと窓のすき間にはちみつ色がやってきた。溶けそうなまるい光だった。

お邪魔します、すこし休ませてください。

どうぞ、どうぞ。 

おむつ替えをしながらわたしは言った。
赤ちゃんはなかなか寝ない。
わたしは眠たいので、寝てほしい。
しかしさっきまで寝ていたんだからなかなか寝ないのはそりゃそうだ。

わたしが赤ちゃんを抱っこして揺れている間、光はずっと窓のところで休んでいた。
赤ちゃんは散々泣いて、寝た。
わたしは腰が痛い。

麦茶飲みますか? 

と光に聞くと、

ありがとう。でも飲めませんので、わたし。

とのことで、ひとりで飲む。じぶんで昨晩つくった麦茶。

寝室に戻ると光は赤ちゃんの近くにいた。

2時間くらい眠るでしょうね。

と言う。

5時間くらい寝てくれたらなあ。

とわたしはつぶやく。腰を回しながら。

じゃあ5時間寝ているようにしましょう。

と光が言った。

その間、急に泣きだしたりしませんから、あなたもよく寝てくださいね。窓辺のお礼です。

鳥が鳴いていた。
窓が細く開いてカーテンが揺れていた。
わたしは1秒に感じるくらいの5時間を、眠った。

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