かなしい妖精

かなしい妖精がやってきて

ああ
なんだか
かなしい

あの背の高い木の生えた森を思い出す
サクサクいう木の葉のふかふか
遠い空

ああ
かなしい

あたりをぐるりと映しこむ
葉先のまるい雨粒のような
かなしさ

口の中で溶け残った
角のない氷のような
かなしさ

服のボタンもすべて
ひとつひとつが
かなしさ

かえらない日々の

かえりたくない午後の

ずっと昔の別の国のあの子の写真を見つめるときの

ずっと寝ていたあの人の呼吸の

もういない

もうない


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