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今日なんだ、 とわかった朝の、 わたし
もうやめよう と思うころ はじまるのだった いつも 光る雨が降ってきて。 黄金のかまきりが 網戸のところにくっついて。
わたしたちは 世界に打たれた 一つの点 たち
ひっくり返してごらん ひっくり返してごらんよ 重いものが軽くなり 軽いものは重くなり いぢわるはやさしくなって よろこびは悲しくなって 歩いてたのが飛んでる ひっくり返してごらん さむいがあったかいになって かえるは暗いところから明るいところへ出たよ
あの星も あの星も あの星も、 ぜんぶ きみだよ
わたしはみずうみ 空があります 雲があります アメンボがいて波紋が浮かびます 風が織物をつくります たえず形を変えます 鴨が食事を探します 森があります 葉っぱが泳いでいきます 橋の上から人がこっちを見ています ぽちゃんと魚が跳ねる音を聴いた子どもが耳を澄まします わたしは映します 空も雲も木々も わたしのうえを風が撫で わたしのなかに雨が落ち 魚が棲み あなたの瞳にはわたしが映ります わたしの水面にもあなたが映ります 分け隔てなく映ります
なくしたものを探してるやら だれかに会いたいのやら
りんごをおたべなさいりんごを なぜですか りんごをおたべなさいりんごを またですか 格別おいしいりんごなのですか りんごをおたべなさい りんごをひとつおたべなさい わたしはりんごをかじった りんごのなかには蜜が入っていた 指につけて舐めてみた 舐め終わるとりんごのなかには空洞があった わたしは空洞に入った 種の椅子に腰掛けた 上から伸びる紐をひっぱると明かりが灯った べたべたした壁を一匹の蟻が歩いている 足下からさっき舐め尽くした蜜の甘さが立ち上
ぼくの 指と指のあいだに 水かきのあとがあるのなら きっと 覚えているんだろう 海のなかに住んでたときのこと
種持ってる 世界持ってる 宇宙持ってる ここに立ってる わたしのキッチン