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もうやめよう と思うころ はじまるのだった いつも 光る雨が降ってきて。 黄金のかまきりが 網戸のところにくっついて。
わたしたちは 世界に打たれた 一つの点 たち
ひっくり返してごらん ひっくり返してごらんよ 重いものが軽くなり 軽いものは重くなり いぢわるはやさしくなって よろこびは悲しくなって 歩いてたのが飛んでる ひっくり返してごらん さむいがあったかいになって かえるは暗いところから明るいところへ出たよ
ふと目をあげたら、魔女が飛んでいました。 言葉が聴こえました、すぐそばか、心のなかか、どこからか。 「智慧が去ったよ。」
すきないろがなにいろかとか ねこを飼っていたかとか 家にすみれの鉢を置いてきたことだとか そんなことはこれっぽっちも関係なく わたしは記号と番号になりました
みんなはどんどん行ってしまう 立ち止まり 立ち止まり そこにあったのはちいさな光のつぶでした 光のつぶは言いました 見つけてくれてどうもありがとう 川のところへ還してくれる? 川へゆき、手のひらをひろげると 光のつぶは川の無数のきらきらのひとつに還りました
あの星も あの星も あの星も、 ぜんぶ きみだよ
わたしはみずうみ 空があります 雲があります アメンボがいて波紋が浮かびます 風が織物をつくります たえず形を変えます 鴨が食事を探します 森があります 葉っぱが泳いでいきます 橋の上から人がこっちを見ています ぽちゃんと魚が跳ねる音を聴いた子どもが耳を澄まします わたしは映します 空も雲も木々も わたしのうえを風が撫で わたしのなかに雨が落ち 魚が棲み あなたの瞳にはわたしが映ります わたしの水面にもあなたが映ります 分け隔てなく映ります
きみってば すぐ泣いちゃうね ぼくとおんなじだ
なくしたものを探してるやら だれかに会いたいのやら