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#2 取材記事制作の流れ

本マニュアルの対象者

この記事では、弊社における取材記事制作の流れについて解説します。
記事制作には「ライター」として関わる場合と「編集者」として関わる場合がありますが、このマニュアルは主にライターの人向けに書いています。

記事制作の流れ

記事制作は、おおまかに「企画」⇒「取材」⇒「執筆」⇒「原稿完成」という流れで進行します(ちなみに、ブックライティングの場合も、だいたい同じ流れで進行します)

もう少し細かくは、取材の前には「取材準備」、執筆の前には「執筆準備」、執筆後には「原稿修正」というプロセスがあるので、それぞれ内容を見ていきましょう。

企画

「誰に」「何を」語ってもらうかを考えるのが企画です。
基本的に、企画を考えるのは編集者の役割であり、ライターには企画が確定した段階で依頼がくるケースが多いですが、ライターが編集者に企画を提案する場合もあります。

記事や書籍の面白さの8~9割くらいは「企画」で決まります。企画がふわふわしていると、まず良い記事にならないので、企画に疑問や不明点がある場合は、遠慮せずに編集者に確認しましょう。

ちなみに、自分で企画を立てる場合は、「記事出稿の目的」「出稿媒体の概要と読者層」「取材対象者のプロフィール」「語ってほしいテーマの概要」「想定する構成&質問案」などを企画書にまとめ、(必要があれば)編集部会議などの社内承認を経て、取材対象者に打診を行うという流れになります。取材対象者から「OK」の返事が得られたら、企画が動き出します。

取材準備①:取材対象者について調べる

企画が決まったら、取材の準備に入ります。
まずは、取材対象者について調べましょう(基本的には、ここがライティング案件のスタート地点になります)

本を出している人の場合は、最低でも1冊、できればテーマの異なる2~3冊の著書に目を通しておきます(時間がかかるので早めに取り掛かりましょう)

ネット上に取材記事が出ている場合は、ここ最近の記事にはすべて目を通します。それ以外にも、SNSアカウントや会社のHPなど、ネット上で手に入る限りの情報に目を通します(意外と、これができていない人が多いです)

調べていると、「これはどういうことなんだろう?」「ここについてもっと教えてほしい」といった興味や疑問が湧いてくるはずです。これが、取材のタネになります。

逆に、調べてもほとんど情報が得られない場合や、面白そうなポイントが見えてこない場合には、企画した編集者に相談しましょう。

取材準備②:想定質問事項を作成する

次に、取材で聞く質問の一覧「想定質問事項」を作成します。

編集者が質問事項を作成するのか、ライターが質問事項を作成するのかは、媒体によって異なりますが、いずれの手順にしても、ライターと編集者がコミュニケーションをとりながら想定質問事項を完成させ、事前に取材対象者に送付します。少なくとも取材の1週間前には送れるよう、作成を進めましょう。

取材準備③:当日の持ち物

普段の取材で持って行っている持ち物は下記の通りです。

  • 録音機材(最低2個)

  • 企画書、想定質問事項(紙に印刷したもの)

  • その他の資料(著書や会社のパンフレットなど)

  • ノートPC

  • ペンとメモ

録音機材は、対面取材の場合は、スマホとICレコーダーを持っていくことが多いです。Google recorderで録音すると、自動でドライブに保存され、文字起こしまでやってくれるので便利です。オンライン取材の場合は、Zoomの録画機能を使います。

ICレコーダーは、こちらを使っています。会議室など、静かな場所での取材であればスマホで十分ですが、工場や共有スペースなど周囲の雑音が多い場所で取材する場合には、ICレコーダーがあると安心です。

また、他社から編集者が来ている場合には、編集者にも録音を依頼しています。「録音ができていなかった」という最悪の事態を避けるため、かけられる保険はできるだけかけておきましょう。

取材場所に通信環境がない場合もあるため、紙で持っていける資料はできるだけ紙で持って行っておきます。通信環境がある場合や、取材相手との関係性的にPCを使っても失礼にならなさそうな場合には、PCを使うこともあります。ただし、PCの画面を見ていると、話を聞いていないように見えるため、必要最小限の範囲に留めます。

取材

取材当日、一番避けたいのは遅刻です。少なくとも集合時刻の10分前には到着できるよう、時間に余裕を持って家を出ましょう。

また、クライアントの担当者や同席する編集者に挨拶し、取材内容について軽く打ち合わせをしておくと、スムーズに取材が進められます。

取材の冒頭では、取材対象者の領域に対する個人的な興味関心、著書や他の記事を読んで感動したポイントなどを手短に伝えて、軽くアイスブレイクをしましょう。

その後は、事前に送付した「想定質問事項」の内容に沿って取材に入っていくのですが、想定質問事項はあくまで仮説です。面白そうなポイントは追加の質問で深掘り、あまり焦点にならなさそうな部分は軽く触れる程度にして、記事制作に必要な情報を集めていきましょう。

執筆準備①:記事の方向性をすり合わせ

取材が終わったら、できればその場で編集者と軽く打ち合わせ、どんな記事に仕上げていくのか相談しましょう。特に、よい取材ができて、方向性がはっきり見えている場合はいいのですが、「どうしたものだろうか……」と悩むときこそ、早めに方向性をすり合わせることが重要です。

執筆準備②:文字起こし

取材で録音した音源は、文字起こしをしておくと、後の作業が進めやすいです。Google Recorderで録音は、文字起こしまで自動で出力してくれます。Youtube動画の場合には、拡張機能をインストールすることで、文字起こしをダウンロードすることができます。それ以外の機材やZoom録音した場合は、「Rimo」というサービスを使ってAIで文字起こしをする場合が多いです。AI文字起こしの精度があまりに悪い場合は、文字起こしを外注する場合もあります。

文字起こしができたら、「記事に使いたい部分にハイライト」「記事に使わない部分をグレーアウト」といった形で、使う箇所と使わない箇所を整理しておくとよいでしょう。

執筆準備③:構成の作成

構成とは、記事の見出しやそれぞれの項目におけるトピックを箇条書きにしてアウトライン化したもの。ようするに「何を」「どのような順番で」書いていくのかを明らかにしたものです。

ここで重要なのが「順番」という部分だと思っています。なぜなら、同じコンテンツであっても、どのような順番で配置するかによって、文脈やストーリーの魅力がまるで変わってくるからです。

ただ、構成については、ある程度「型」があるので、これは次回の記事で詳しく解説したいと思います。

執筆

編集者との合意が取れたら、いよいよ執筆に入ります。
それぞれの媒体の形式や記事のボリュームに合わせて、実際に文章を書いていきます。Google Documentで制作し、共有リンクを発行して提出する場合が多いです。

原稿修正

最初に提出した原稿のことを「初稿」と呼びますが、初稿を提出すると、編集者から「ここをこう修正してほしい」というリクエストが来る場合があります。

修正リクエストが来たら、内容に沿って修正に対応し、再度原稿を納品します(2度目の提出する原稿のことは「修正稿」「再稿」と呼びます)

修正作業は、基本的には1~2往復程度の場合が多いです。

原稿完成・公開

ライターの作業は、修正稿の提出で終わり。そこから編集者が原稿の最終調整や校正作業を行い、写真などの絵素材を確定して、原稿が完成します。

ライターと編集者の関係性

ここまで、記事制作の流れについて概要を解説してきましたが、「企画」⇒「取材」⇒「執筆」⇒「原稿完成」という一連のプロセスを管理しながら、記事の品質に対する責任を持つのが「編集者」という存在です。

では、ライターにとっての編集者とは何か?

人によって定義はさまざまだと思いますが、私の理解では「伴走者」です。
「文章を書く」というのは、たとえどれだけ「書く」のが好きな人であっても、けっこう負荷の高い作業です。そのため、編集者は、なるべくライターがパフォーマンスを発揮しやすい環境を整えながら、それぞれのプロセスで記事制作を支援していく存在であるべきだと思っています。

同時に、読者の代表として、読まれる“商品”をつくるのが、編集者の役割です。

その媒体の読者は、どんなニーズを抱えているどんな人なのか。どんなタイトルやアイキャッチだと、記事が読まれやすいのか。どのくらいの文章量であれば、最後まで読んでもらえるのか。これらを一番正確に理解しているのが編集者です(この理由から、個人的には、「記事のタイトルは編集者が考えるべき」だと思っています)

そうした情報をも、いかにライターやカメラマンを適切にディレクションできるかが、編集者の腕の見せ所ということですね。

ここで伝えたかったのは、編集者とライターは同じ目的のために協働する対等なパートナーであるということです。

稀に、ライターを部下のような上下関係で捉えてくる編集者がいますが、(ライターのスキルが未熟な場合にはそうならざるを得ないのでしょうが)、一人前のライターであるのであれば、自分の力を適切に引き出してくれる編集者と協働しましょう。

参考書籍

長々と書いてきましたが、取材やライティングの技術について詳しく知りたいのであれば、下記の書籍を一読されることをオススメします。


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