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聴覚障がいのある地域おこし協力隊が、ラジオに出演してきました|2024.春分・雀始巣

■ 聴覚障がいのある地域おこし協力隊が、ラジオに出演してきました

昼の長さと夜の長さがちょうど半分になる春分の日の朝、わたしは岡山県立美術館のカフェでドキドキしながらフルーツスムージーを飲んでいた。

フルーツスムージー プリン ウィンナコーヒー

・手話通訳×ラジオ出演

この日は、ラジオデビューの日。

倉敷とことこの取材でお世話になった手話通訳者でありフリーアナウンサーの遠藤寛子(えんどう ひろこ)さんがパーソナリティを務めるラジオ番組「天神ワイド 朝 」に出演させてもらえることになったのだ。

小学生の頃、まだ左耳の聴力が良かったころは学校の委員会活動で放送委員をしていて。朝や帰り、それからお昼休みの放送を担当していた。当時からスピーカー越しに聴く音はあまり得意ではなかったけれども、喋ることは好きだったのでとても楽しく活動をしていたことを覚えている。

でも、聴力が落ちて補聴器が手放せなくなった今、ラジオというと「キコエル人たちのもの」という印象が強くて、ラジオを聴こうと思うことはなかった。だから、RSK(山陽放送局)のディレクターさんから

ラジオに出演してみませんか。

とメールが届いたときは、心底びっくりした。

ラジオなんて小さい頃に親の運転する車の中で流れていた……くらいの知識で、どんなふうに進行しているのかも、どんな話題が展開されているのかも知らない。そんなわたしが、ラジオに出演するだなんて。

でも、そのメールには続きがあって

番組内では、スタジオ内の音環境やもう一人のパーソナリティの声を、高石さんに対して遠藤が手話通訳をします。

と書かれてあって。

これならわたしも楽しめるかもしれない!とラジオ出演を決めたのが、3月のはじめのこと。

それから数回ほどメールのやりとりを重ねて、プロフィールを送ったり、質問リストに回答したりしていたら、あっという間に本番がやってきてしまった。

当日の朝どころか前夜からソワソワしているわたしを見かねて、スタジオ入りより少し早めに放送局の近くまで送り届けて、その隣にある美術館のカフェでわたしの好きなものを頼んでくれる人が隣にいてくれたことに感謝しつつ、でも、緊張で泣きそうになりながらスムージーを飲んできた。

本当は、あの固めプリンも最高に美味しかったのに緊張で3口くらいしか食べられなかったの、本当に本当に悔しい。絶対に、また食べに行くぞ!と思っている。

スタジオにつくと、まさに本番のさなかで。

今まで何度かメールでやりとりを重ねてきたディレクターさんは、想像以上にかわいらしい方で、お忙しい放送中にもかかわらずニコニコと口をはっきりと動かして迎えてくださった。簡単なあいさつ程度であれば、初対面のかたとでもやり取りはスムーズにできるので、ここは大丈夫。

そして、そのあとのスケジュールは全部レジュメを用意してくださっていたので、それを読めばこの後の見通しも持てたから、ここも大丈夫。

レジュメを読んでいる間に、遠藤さんがスタジオから出てきて挨拶にも来てくれた。やっと、見知った顔に出会えて安堵感。

そのまま、放送中のスタジオを見学させていただいた。

最初に通してもらったスペースでもラジオの音はきこえてきたけれども、聴覚障がいのあるわたしは、その場の情報を視覚で確認できたほうが安心する。

だから、スタジオで話すパーソナリティのお二人やミキサーを操作するディレクターさんのお仕事の様子を目の前で見せてもらえてやっと、「ほおお。わたしは今からラジオに出演するのか」とムクムクと実感がわいてきた。

そして、あっという間にわたしがスタジオに入る時間に。

ドキドキしながらスタジオに入ると、パーソナリティの遠藤さんと石田さんが、とても親しげに話しかけてくださる。石田さんは、最近放送されている聴覚障がい者を取り上げたアニメ「ゆびさきと恋々」の話題を振ってくださって(キコエナイわたしと会うからと、この話題を準備してくれていたんだなぁ)となんだか嬉しくなる。

プロってすごいね。放送中だけじゃなく、スタジオに入った瞬間から、こうやってゲストを和ませて歓迎をしてくれるんだから。わたしも、取材に行くときは取材先のことだけじゃなくて、相手を和ませられるような最新の話題なんかもちゃんとリサーチしていこうと思ったり。

実際に生放送が始まってみると、おふたりとの掛け合いが楽しくてあっという間に13分の枠が過ぎ去ってしまった。

途中、口話だけの話についていけなくなりそうになった瞬間にも遠藤さんのほうをちらっと見ると、すぐに手話で通訳をしてくれて。最後まで、「分からない!」とパニックにならずにお話しすることができた。

ラジオデビューに、手話通訳者さんであるパーソナリティの遠藤さんがそばにいてくれたこと、本当に本当にありがたかった。

聴覚障がい者がラジオ出演って、おもしろいなぁと思っていて。

というのも、わたし自身ラジオの仕組み(リスナーさんからお手紙とかリクエストの曲がくるとか)をイマイチわかっていないのに出演してしまったわけだし。わたしの声が、本当にリスナーさんに届いているのかとかまったくイメージができないし。

後者については、放送後にディレクターさんが「声の大きさも、ちょうど良かったですよ」と言ってくれたので、きっと大丈夫だったらしい。radikoでアーカイブを聴いてみたんだけど、まぁまぁ音声認識アプリが認識してしてくれていたし。

・音のない世界の住人に「聴いたよ」と言ってもらえたの、すっごく嬉しかったな。

そうそう。ラジオって、お耳の仲間が聴けないじゃないですか。

わたし、ずっとそこがひっかかっていて。聴覚障がいのある仲間にこそわたしの活躍を見てほしいのに、ラジオはそういう意味で相性が悪くて。あんまり良い印象じゃないかなぁとか、実はちょっと気にしていた。

でもね、わたしと同じように音声認識アプリを使ってラジオを聴いてくれた友人たちから「頑張っていたね!聴いたよ!」とか「はじめてラジオってものを聴いたよ!」と連絡をもらって。傲慢な考え方かもしれないけれども、音のない世界の住人が、音の世界に顔を出してみようと思うきっかけのひとつになれたのかしらと思うと、やっぱりどこかむず痒い嬉しさ。

・わたしの出演回のアーカイブはこちらから(3月26日まで)

そんなわたしのラジオデビューは、3月26日までradikoでアーカイブ配信されているらしいので、リンクをペタリ。

貴重な経験をさせてくださったRSK「天神ワイド 朝」さん、ありがとうございました!

■ 雀始巣(すずめはじめてすくう)

というわけで、春分を迎えましたね。春ですね。春ですよ。

まだまだ、ダウンコートを手放せない日々ですが県北でもソメイヨシノが咲き始めたのだとか。

ラジオ放送の帰りに、ふらっと歩いていたらとってもかわいい春コートに出会ってしまって「これは、わたしへのご褒美だ」とお迎えしてしまったので、それを身にまとってお花見に行く日を今か今かと待ち望む今日この頃です。

それではまた、次候にお会いしましょう。

【春分】昼と夜が同じ長さになる頃。
初侯:雀始巣(すずめはじめてすくう) 3月20日~3月24日
次侯:桜始開(さくらはじめてひら)3月25日~3月29日
末侯:雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)3月30日~4月3日

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