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ビジネスパーソンが意識したいヨガ哲学「心の動きを止滅する」

『ヨーガ・スートラ』で説かれる「心の動きを止滅する」とは、私たちの心の揺れ動きを鎮め、静かに保つことを意味します。

これは、心の様々な働き(チッタ・ヴリッティ)を制御し、その影響から自由になることを目指す教えです。心が静まり、迷いや不安から解放されることで、私たちはより冷静かつ効果的に物事に取り組むことができるようになります。

私はIT企業に勤めるビジネスパーソンなのですが、この概念は、日常の仕事の場面でも役立つと実感しています。

チッタ・ヴリッティとは?

チッタ・ヴリッティとは、心が動く様々なパターンや作用のことを指します。『ヨーガ・スートラ』では、これらの心の働きを静めること(ニローダ)が解脱や悟りに至る道だとされています。心の揺れ動きを止めるためには、以下の5つの心の作用を理解し、それを日常生活の中で認識していくことが大切です。

1. プラマーナ(正しい認識)

正しい認識とは、感覚や推論、信頼できる証言を通じて得られる知識です。

仕事の中での例を挙げると、人事評価がこれにあたります。上司や会社から良い評価を得たとき、それは「正しい認識」として、自分の努力や結果が正当に評価されたものです。この評価に喜びを感じることは自然なことです。

しかし、その喜びに依存しすぎたり、次も同じように評価されるべきだというプレッシャーを感じたりすることで、一喜一憂してしまうことがあります。このような期待とプレッシャーの間で心が揺れると、ストレスが増大し、仕事のパフォーマンスや精神的な健康に悪影響を及ぼすことがあります。

正しい認識であっても、過度にそれに執着することなく、心を穏やかに保つことが大切です。

2. ヴィパリヤヤ(誤った認識)

誤った認識は、現実を誤解し、間違った解釈をしてしまうことです。

たとえば、上司の「単なる質問」や「単なる指示」が「自分への批判」と感じてしまい、過剰に反応してしまうことがこれにあたります。

私自身も、上司からのメッセージを否定的に捉え、必要以上に気を病むことがありました。しかし、後で確認してみると、その意図はまったく違っていたという経験が多々あります。

3. ヴィカルパ(空想)

ヴィカルパは、現実にはないことを想像し、それに囚われることを指します。

仕事の中で「上司がこう思っているだろう」といった憶測に基づいて行動することは、しばしばヴィカルパに当たります。

私は上司から「資料があれば提供してください」と言われた際に、過剰に想像して新たな資料を作成し、結果的に時間と労力を無駄にしたことがあります。

このような過剰な想像は、無駄なストレスを生み出し、仕事の効率を下げてしまうことがあります。

4. ニドラ(睡眠)

ニドラは、心が無意識の状態にあることを意味します。

私は仕事が楽しくて興奮している時や、人間関係に不安がある時、不眠症になりやすい傾向があります。不眠が続くと、翌日の集中力や仕事のパフォーマンスに大きな影響が出ます。

こうした状態をどうコントロールするかが、心を静めるための重要な課題となります。

5. スムリティ(記憶)

スムリティは記憶を指します。過去の経験や情報を記憶として持ち続けることは必要ですが、過去にとらわれすぎると、心の揺れが生じます。

仕事においても、過去の失敗やトラブルが頭から離れず、新しいプロジェクトに取り組む際に不安を感じることがあります。

このような記憶に縛られることは、現在の状況を正確に捉える妨げとなります。

心を静止するために何をするか

では、どうすればこれらの心の揺れを抑え、冷静な状態で仕事に臨むことができるでしょうか?私の実体験からご紹介します。

1. 呼吸法、アーサナ

1つの方法は、呼吸法やアーサナ(ヨガのポーズ)を通じて自律神経を整えることです。私は、考えが止まらないときにヨガマットに座り、呼吸法を行うことで血流を整え、心を落ち着けます。

太陽礼拝などのアーサナを行うことで、交感神経が鎮まり、恐れや不安から解放される感覚を得ることができます。副交感神経がうまく働けば幸せホルモンにも癒されます。

自然とのつながりに感謝し、自分が愛されていることを思い出すアファメーションを行うと、不安が軽減され、より冷静な視点で物事を捉えられるようになります。

2. 観察し、手放し、再認識するマインドフルネス

心の揺れを観察し、それを手放す練習も重要です。

まず、状況を観察し、自分がどのような感情や思い込みに囚われているかを認識します。そして、それを一旦「棚上げ」して、確証がないうちは過度に反応しないように心がけます。

実際に相手に確認することで、思い込みが正しいかどうかを検証すると良いでしょう。

これによって、「過剰な想像」や「誤認識」から解放され、心の平静を保つことができます。

3. テキストコミュニケーションによって隠される相手の善性への理解

テキストコミュニケーションにおいても、相手の意図を悪意と捉えず、善性を信じることが大切です。

たとえば、相手のトーンがきつく感じられても、それはテキスト形式のコミュニケーションが原因かもしれません。相手の他の行動や優しさを思い出し、自分の受け取るフィルタが正しいかどうか、「再評価する習慣」をつけることが重要です。

心を静めるという考え方は、私たちが日々の仕事で感じるストレスやプレッシャーに対処するための強力な手段です。心の働きを理解し、それを鎮めることで、私たちはより冷静で効果的に仕事に向き合うことができます。

ヨガやマインドフルネスを通じて、心をリセットし、感情に振り回されることなく、本来の自分を取り戻すことができるのです。

おまけ

昔の上司には「上司の意図を想像して仕事をしろ」と教育されました。今の上司には「エスパーするな」「言葉の裏を勝手に補完するな」とよく言われます。

「上司の意図を想像する」を分解すると、「上司の気持ちを理解する」のではなく「上司が向き合っているビジネスの解像度を上げる」ことが正しい解釈だと思います。

人はニュアンスで話し、ニュアンスで理解しているのですね。誤解が起こって当然です。

同じ事象でも経験や性格によって事柄の捉え方も変わります。そんな曖昧で不確かなものに過敏に反応して人は右往左往しているのですね。心穏やかとは言えません。

5000年も前からそこに言及されており、ヨガ哲学はすごいな、と改めて思いました。

「心の動きを静止する」ビジネスパーソンがヨガを求める理由になっていそうですね

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