画家の知覚について
現象学的に言うと、私たちはものを知覚する時に、ものの感覚を経験しています。
どういうことかと言うと、たとえば 私がAという家の周囲をぐるりとまわるときに、実際に私たちに与えられるのは、そのAという家の外観としての、感覚的な一連の外観・輪郭です。
家まるごとを一度に全部とらえることはできなくて、私が動くたびに変化するアスペクトを感覚しています。
でも、私たちはそんなふうには考えなくて、概念的に捉えます。これは家だよねというふうに。
つまり、感覚としての経験は「これは家だ」という概念としての把握によって奪われてしまう。
実際には感覚しているのだけど、そこには気づかないで、「これは家だ」と概念をかぶせてしまう。
これに対して、絵画とは反−知覚である、とフランスの現象学者ミシェル・アンリは言っています。
芸術家の眼差しは、一般的な私たちの習慣的な単調で型にはまった知覚とは異なり、ものの感覚的な現れの方を知覚すると。
そして、芸術家がありのままに知覚した色とフォルムが絵画的なフォルムになるのだと。
画家はものの本質を捉える目をもっている。