栗、くり、クリ…
食欲の秋だ。そろそろ栗ご飯を炊かないと、とは思っていたけどまだ気持ちが整っていなかった。
それなのに台所に立ったことのないごきげんパパ♡が生の栗を嬉しそうに買って帰ってきた。この人はきっと生の栗も甘栗も違いが分かっていないに違いない。だって自分の口に入るときにはどちらも美味しく食べられるようになっているんだから。
栗の鬼皮をむくのは指に包丁の跡かたがつくぐらい厄介なんだよ~そうともしらず栗ご飯食べたーいなんて気軽に言ってほしくないわ。そのうち心の準備ができたら自分で買ってきて作るつもりではいたけど、軽い気持ちで買ってこられたら迷惑だわ。しばらく水につけておこう。
夜になって娘の帰りを待ちながらおもむろに栗に向き合い始めた。ぼーっと待っているよりはいいだろう。まず下の部分を切り落とし、水でつけてやわらいだ外の皮を剥いていく。渋皮はピーラーでむくのが私のやり方。どんどんボールのお水に浸けていく。
コロナが下火になったとはいえ緊急事態宣言はまだ解除されていないんだよ。早く帰ってくればいいのに。娘を案じているのか自分が寂しいだけなのか、綯い交ぜになったような気持ちで皮をむき終わったころにちょうど帰宅した。
3合のお米を研いで栗をのせて小匙1のお塩と大匙1のお酒を入れて炊飯器のスイッチを入れたらあしたのいいご飯ができる。この手間暇を家族は知らない、か見ないふりをしている。けれども自分でも一口いただいたときにそのおいしさにこれまでの不機嫌が一気に吹き飛ぶ。秋が来た。
私がよほど怖い顔をしていたのだろうか。ごきげんパパ♡が機嫌取りにモンブランを買ってきた。これはご近所一押しの名店でピカピカの金箔が振りかけられている。
そして渋谷に出たついでに自分でも栗のお菓子を購入。モンブランどら焼きと栗のテリーヌ。惹かれますよね?
今食べたいのはマロングラッセ。読んでいる小説に極上のマロングラッセの瓶詰が出てきてお砂糖の膜を思い描くともうたまらない。亡くなった老女が庭の栗を蒸して糖衣させて作ったそのおいしそうなマロングラッセはどこで手に入るんだろう。どうしても食べてみたい。一粒で甘くて大満足するに違いない。こうして秋は更けてゆく。
めっきり過ごしやすくなりました。皆様もどうぞよい秋の日をお過ごしください。