まりあるな

実話をもとにした小説(一話 2分で読めます)毎日更新中! あなたには、忘れられない人はいますか? 離れても離れても再びめぐり逢う。友だちにも、恋人にもなれないふたり。 出逢いから“ひとつのこたえ”に辿り着くまでの、34年間の恋の軌跡を綴ります。

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実話をもとにした小説(一話 2分で読めます)毎日更新中! あなたには、忘れられない人はいますか? 離れても離れても再びめぐり逢う。友だちにも、恋人にもなれないふたり。 出逢いから“ひとつのこたえ”に辿り着くまでの、34年間の恋の軌跡を綴ります。

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  • 第2章[小説]34年の距離感 - 別離編 -

    学級委員の藤堂《とうどう》との一件がきっかけで、月桜《るな》は朔玖《さく》への恋心に気づく。ある日の放課後、たまたま教室で朔玖とふたりきりになる。誰もいない空間に月桜の胸は高鳴るが、そんな月桜のおもいをよそに、朔玖が苦しい胸の内をぼそっと呟く。その場は明るく笑ってやり過ごしたが、なんとか朔玖を励ましたい月桜。それから月桜は、朔玖を闇から救いたいと願うようになる。

  • 第1章[小説]34年の距離感 - 別離編 -

    クラスメイトの朔玖に、触れてほしくないことを訊かれた月桜。誰にも見せたことのない怒りを朔玖にぶつけるも、そのとき不思議な感覚を体験する。朔玖は、月桜の噂の真相を知っているのだろうか? そのときから、月桜は、いままで興味も関心もなかった朔玖が気になり出すが……

最近の記事

第4章-2 (#21) 星ケ丘駅[小説]34年の距離感 - 別離編 -

 こんなことで連絡したら、浩緋にウザイと思われそうで、ずっと我慢していた。親友の浩緋にさえ、勇気をふり絞らなきゃ電話ひとつできない。浩緋は、朔玖と同じ町まで電車通学をしている。言語聴覚士になりたいと、遠くても福祉科のある高校を選んだからだ。浩緋なら、朔玖の様子を知っているかもしれない。  星ケ丘駅で電車が到着するのを待っている。5時14分着。後2分か。秒針がカチカチと時を刻む速度を、とうとう胸の鼓動が追い越した。もう心臓が破裂しそうだ。 「もし朔玖が乗ってたら、猛ダッシュ

    • 第4章-1 (#20) 逢いたい[小説]34年の距離感 - 別離編 -

       才女で清楚なお嬢様。星ケ丘女子高の生徒は男子の憧れ。高嶺の花。制服のセーラーの襟に付いている星は、星ケ丘女子伝統のステイタス。入学して2ヶ月。すでにこの学校の古くからのイメージに辟易している。 「先生。うちの親は勉強できるとかえって迷惑だって言ってる。進学させる気はない。星ケ丘女子でがんばって勉強したって無駄なんだよ」 「星ケ丘南じゃ、ぶっちぎりの一番です。なんでこんなに優秀なのにって、周りから浮くよ。それよりなにより、月桜自身が物足りなくなる。月桜、よく考えて」  

      • 第3章-7 (#19) エール[小説]34年の距離感 - 別離編 -

         和乃に許してもらうことばかり考えるようになった。謝ったくらいで解決できる問題じゃない。悩んでも悩んでも、行き着く答えはいつも同じ。サクヲアキラメル。その一方で、心が割れるように叫び続ける。朔玖が好き。好き。好き。  高校受験の私立組は一足先に進路が決定し、県立組との空気感は真っ二つに割れていた。進路が決定している美琴は、県立組の焦りなんておかまいなし。後ろから背中を突っついてくる。 「月桜。バレンタインだよ。チョコあげなくていいの?」 「まだ受験終わってないから。それ

        • 第3章-6 (#18) ささやかな復讐[小説]34年の距離感 - 別離編 -

           翌朝、学校に行くまでは、恋のライバル宣言を、和乃は真っ正面から受け止めてくれたと思い込んでいた。公言=フェア=正義だと信じて疑わなかった。  昼休みに和乃から渡されたメモの切れ端には、まったく想像もしていなかった強い怒りのメッセージが記されていた。  “朔玖が誰を好きかなんてわからないよね?  わたしが朔玖を好きだなんてわからないよね?  勝手に決めつけないで!  月桜のこと許せない!  月桜とは絶交する!”  和乃の強烈な怒りのエネルギーから、自分がやってしまったこ

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        • 第2章[小説]34年の距離感 - 別離編 -
          1本
        • 第1章[小説]34年の距離感 - 別離編 -
          6本

        記事

          第3章-5 (#17) 宣戦布告[小説]34年の距離感 - 別離編 -

           話に夢中でぜんぜん気づかなかった。和乃、いつからそこにいたの? 今の話、聞いてた? 朔玖が好きだって。告白したいって。どうしよう。和乃に知られてしまった!  わたしたちに追いついた和乃は、追い抜いて帰ることもできずに、角の酒屋の物陰に隠れていたらしい。浩緋と別れて、同じ道に向かう和乃とふたりで歩いていた。  和乃にだけは知られたくなかった。長濱くんの悲しい思い出が、浮かんでは消え、浮かんでは消え、また和乃に余計なことをされるんじゃないか? という不安が大きくなっていく。

          第3章-5 (#17) 宣戦布告[小説]34年の距離感 - 別離編 -

          第3章-4 (#16) このままでいいの?[小説]34年の距離感 - 別離編 -

           3学期。これが中学最後の席替え。朔玖は窓際の一番後ろ。わたしはその前の前。  くじ運がいいのか悪いのか? 朝学習のプリントは、一番後ろの人が列ごとに回収することになっているから、毎朝必ず朔玖にプリントを渡すことになる。たかが紙っぺら一枚渡すだけなのに。このぎこちなさたるや。これじゃまるで、毎朝クラスメイトに「朔玖が好きです」って公言しているみたいだ。  朔玖とわたしの間に座っている美琴に、毎回のようにからかわれる。 「後ろ振り返って『月桜が朔玖のこと好きだって』って言

          第3章-4 (#16) このままでいいの?[小説]34年の距離感 - 別離編 -

          第3章-3 (#15) 一枚の年賀状[小説]34年の距離感 - 別離編 -

           朔玖との距離は縮められないまま、冬休みを迎えていた。受験用の問題集に手をつけてみるも、まったく身が入らない。だって、正直、呑気で申し訳ないくらいに落ちる気はしない。  避けられてるのかな?  嫌われてるのかな?  朔玖の気持ちを確かめたい……  そうだ!  いいこと思いついた!  年賀状だ!  でも……朔玖はどう思うかな?  怖い。怖い。怖いけど、朔玖の年賀状がほしい。どうしてもほしい。  恋する女の子ってほんとバカだな。たったひとりからの年賀状がほしくて、カモフラ

          第3章-3 (#15) 一枚の年賀状[小説]34年の距離感 - 別離編 -

          第3章-2 (#14) リベンジ合唱コンクール[小説]34年の距離感 - 別離編 -

           どの教室からも、合唱コンクールの歌声が響き渡っている。わたしたち7組にとっては、昨年惜しくも準優勝に終わった雪辱のリベンジコンクールだ。  本番まで残り日数が半分を切った。連日の練習で疲れも不満も溜まる頃だ。波長が合わない。声が出ない。リベンジだと意気込んでいたはずの合唱コンクールは、いつのまにかただ歌わされている人たちの集まりになっていた。  指揮者の湯浅とピアノの智奏が顔を見合わせて頷く。もう一回の合図だ。焦っちゃダメだよ。わたしなら、ここで一旦止める。  まとま

          第3章-2 (#14) リベンジ合唱コンクール[小説]34年の距離感 - 別離編 -

          第3章-1 (#13) 避けられてる[小説]34年の距離感 - 別離編 -

           夏休み明けの教室は、どこかピリピリとした空気が流れている。部活を引退した中3生は、行き先もわからないまま、受験という名のベルトコンベアに乗せられて運ばれていく。 「おはよう」 「おはよう」  あいさつは返してくれたものの、まともに顔を合わせることもなく、朔玖はそそくさと行ってしまった。なんか変! わたし朔玖に避けられてる?  教室のピリピリ感が、より一層この不安と疑いを増幅させる。日を追うごとに疑いは色濃くなっていく。夏休みを境に、わたしは朔玖から避けられる世界に移動

          第3章-1 (#13) 避けられてる[小説]34年の距離感 - 別離編 -

          第2章-6 (#12) 世界線[小説]34年の距離感 - 別離編 -

           まるで何もなかったかのように日常は続いていく。あれ以来、朔玖の気持ちに触れることはなかった。わたしたちは、何も知らない、何も聞かない世界線にいる。いや、何も変わらない同じ世界線にいるふりをしている。  朔玖に逢えることが嬉しくて。朔玖と話せたらもっと嬉しくて。学校に行きたくない。そう思う日があっても、朔玖に逢えるからがんばれる。朔玖に逢えるだけでエネルギーがチャージされていく。朔玖が好き。大好き。  ねぇ。そのままの朔玖が好きだよ。  わたしのこと、こんなにしあわせにし

          第2章-6 (#12) 世界線[小説]34年の距離感 - 別離編 -

          第2章-5 (#11) 幽霊じゃないよね?[小説]34年の距離感 - 別離編 -

           いつなら朔玖に話しかけられるだろうか? 朝からずっとタイミングを見計らっている。昨夜、何度も朔玖に電話しようとしたけど、どうしても最後まで番号が押せなかった。ひとりリベンジは、無情にも昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り始め、放課後までのタイムリミットとの闘いに変わっていた。  5時間目は、厳しくて有名な担任の理科だ。すっかりと担任に洗脳され切ったわたしたちは、それが厳しいかどうかなんて麻痺している。アイツが作るノートの見本を、一字一句、イラストに至るまで完コピし、出され

          第2章-5 (#11) 幽霊じゃないよね?[小説]34年の距離感 - 別離編 -

          第2章-4 (#10) 透明な壁[小説]34年の距離感 - 別離編 -

          「俺、死んじゃいたい」  朔玖の呟きが、透明な壁を突き破って不意打ちに飛んできた。幽霊の話なんかしていたからかな? 思わず口から溢れてしまった。気づいたときには言葉にしてしまった。そんなふうに見えた。  朔玖がいなくなったらわたし困るよ。毎日朔玖に逢えることが嬉しくて。それを支えに学校に来てるんだから。好きな人が死にたいくらい思い悩んでいるというのに、最初に浮かんできたのは「わたし困る」だよ。どこまでわたしは利己主義なんだろう。 「幽霊になっても学校に来てね」  ナン

          第2章-4 (#10) 透明な壁[小説]34年の距離感 - 別離編 -

          第2章-3 (#9) ふたりきりの教室[小説]34年の距離感 - 別離編 -

           任意という名の強制加入である部活動は、運動が苦手なわたしには毎日が拷問みたいなものだ。引退まで後3ヶ月。なんとかのらりくらりやり過ごしたい。学級新聞を作るという大義名分を使っては、放課後にひとり教室に残っていた。廊下では数名の男子がうだついている。きっと同じように部活に行きたくないのだろう。  その中に、同じクラスの男子は朔玖しかいなかった。クラスメイトが他に誰もいないからか、朔玖が教室に入って近寄ってきた。 「月桜。ひとりで何やってるの?」 「これね。学級新聞。新聞

          第2章-3 (#9) ふたりきりの教室[小説]34年の距離感 - 別離編 -

          第2章-2 (#8) 学級委員[小説]34年の距離感 - 別離編 -

           藤堂のことは、黒崎に頼んで断ってもらった。あれから藤堂とは一気に気まずくなってしまった。どうしても意識してしまう。藤堂の顔を見るたびに、罪悪感でいっぱいになる。  藤堂のことがあって、今年は学級委員を降りてよかったと、心からほっとしていた。今思うと、ほんとは藤堂のせいにしたかっただけかもしれない。  3年生になると、みんな嫌でも高校受験を意識する。○○委員長や○○部長になると内申書が有利になるんだって。そんな噂を信じて「長」が付く役職をやりたがる輩が出てくる。  くだ

          第2章-2 (#8) 学級委員[小説]34年の距離感 - 別離編 -

          第2章-1 (#7) 恋の認識[小説]34年の距離感 - 別離編 -

           あのときから朔玖のことは、密かにずっと気になっていた。あれ以来一度も、朔玖が長濱くんのことを口にすることはなかった。半年が過ぎ、わたしたちは3年生になっていた。 「帰りの会が終わったら、4階の踊り場まで来て」  斜め後ろの席から、一瞬の隙をついて、朔玖がこそっと耳打ちしてきた。なんだろう? 誰もいないところにわざわざ呼び出すなんて。  今日は土曜日だから授業は半日だ。ほとんどの生徒は、お弁当持参で早々と部活に散っていく。ちょっぴりドキドキしながら、人気のない校舎の階段

          第2章-1 (#7) 恋の認識[小説]34年の距離感 - 別離編 -

          第1章-6 (#6) 月桜がいなかったら…[小説]34年の距離感 - 別離編 -

          「長濱くんを取らないで」  幸冬の気迫に押され、わたしはそこに立ち竦んだ。昼間でも薄暗い裏山は、もうすっかり夕闇に飲まれ、嫉妬に揺らめく幸冬の輪郭を一層際立たせている。塾の近くには、山際に建設中の病院に続く工事車両が通る砂利道があった。わたしは幸冬に、その砂利道を少し入ったところに呼び出されていた。  幸冬はポケットにカッターを忍ばせているかもしれない。頬を切られる映像が、まるで映画の予告のように、まぶたの裏に映し出される。幸冬に何かされるんじゃないか? 怖くて体が動かな

          第1章-6 (#6) 月桜がいなかったら…[小説]34年の距離感 - 別離編 -