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チームリーダーにオススメ!「プロジェクト魂~本気で仕事に打ち込む幸せ~」VFXプロデューサー結城崇史著書

本を読むのが好き。
ゆっくりとじっくりと読んで消化していくのが大好きです。好き過ぎて、本を読み終えないように敢えてゆっくり読んだりしてしまう。

でも、ここ半年はなかなか本をゆっくりと読む時間を取ることもできなかったのですが、Quarantine(自宅隔離 - 日本語でいうと硬いデス)のお陰で、プロデューサー見習いのお勉強として読みたかった本に思う存分着手できています。

そんな、プロデューサーとして視座を高める(と、私が思う)を、ご紹介していこうと思います。

初回はこちら。


『プロジェクト魂~本気で仕事に打ち込む幸せ~』

著者は、結城崇史さん。

結城崇史氏
VFXプロデューサー。大学卒業後、米国の大学に留学、レコード会社に就職。ロサンゼルス駐在中にCGの制作に携り、以降CGコーディネーター、CGプロデューサーとしてCM、テレビ、映画、ゲームのCG/VFXを手がける。
InterBeeアジアコンテンツフォーラムディレクター。東京電機大学未来科学部・情報メディア学科研究員。
(Amazon.co.jpの"著者について"から転載)

という経歴をお持ちの著者。


VFXとはなんぞや?CGとどう違うの?

こんな疑問をお持ちという方もいらっしゃるでしょう。私も去年、この映画(Youtubeへ)のローカルコーディネーター(と言う名の末端スタッフ)をさせて頂いた時、まさしく同じ疑問が頭を駆け巡り、急ピッチで触りだけお勉強しました。(いや実際は急ピッチでは到底間に合わない、すごい深い世界です)

VFXとは、「Visual Effects」の略で、視覚効果という意味を持っています。実際に現実では目にすることのできない画面効果を実現させるために、特撮を用いる映画やテレビドラマの中で使われる効果がVFXです。
さらに簡単に説明すると、デジタルカメラやコンピュータを使って映像を加工することです。
例えば、ワイヤーアクションで撮った映像からワイヤーを消去する加工や、沈没する船の乗客を撮影し、船のCGと合成して映像を制作するものなどはVFXにあたります。現実にあるものとつくりあげた架空の映像を合成し、違和感のないように仕上げる効果がVFXで、ファンタジーのような架空の世界もまるで現実にあるように見せることができます。

引用:多くのCGアーティストを輩出しているデジハリさんのウェブサイト
https://online.dhw.co.jp/kuritama/difference-cg-vfx-technology-and-sfx/

との事らしいです。
VFXと言う言葉は、「Visual Effect」の音から来ていると、現場のアーティストから教えてもらいました。

この時の現場でも、本当に細かな作業をアーティスト達が施していて、
その途中まで出来上がったシークエンスを観ても「え?どこで撮ったの?」と見間違うほどのリアルさで。
でも、その時点でもアーティスト達は「いやーあそこがこうでー。おっと、ここに穴が見えるなー。ここのリアクションが違う・・・」と細かいところ(もはや私では可視化できないところ)を細ーーーーーーーく、細かーーーーーく修正を繰り返していました。
そして、修正し終わったシークエンスを拝見すると、確かに「なんか違う!リアル度が上がってる!違うのは分かるけど何が違うのか分からない!!!」というマジックが施されていたのです。
本当にアッパレで毎度感激してました。

それほど、繊細な作業を繰り返し繰り返し行われているVFXアーティスト達。


と、大まかにVFXの事が分かったところで、
じゃVFXプロデューサーのお仕事はなんぞや?って疑問が湧いて来ますよね。

VFXプロデューサーも、まさしく映画のプロデューサーと同じように、VFXに掛ける予算、VFXアーティスト(一つの絵が出来上がるまでにかなりの工程を踏みます=かなりのアーティストが関わります)のリサーチ・手配、プログラミング開発の指揮、などなどVFXに関わる多岐に渡るお仕事をするそうです。責任がすごい。

個人的には、このVFX映画の現場で、VFXってオフィスで静かに制作していくイメージが出来上がっていてまして。それまで朝から晩まで動き回っていた撮影(いわゆるLive action film)のイメージがガラガラっと崩れたいい現場でした。
もちろん、VFXも各部門ごとに分かれグループワークが大事な仕事で、彼らもさらにベターなクオリティを求め、朝から夜中まで働いていて、その作品に掛ける情熱はLive action filmとも何も変わらず同じでした。(当たり前だ)

なので、サブタイトルの"本気で仕事に打ち込む幸せ"って所に、
「VFXの現場で燃えてる人ってどんな感じでチームを動かされるんだろう?」とすっごく惹かれて買いました。

プラス、さらにこの本に惹かれた理由は、
結城さんが、あの「坂の上の雲」のVFXを手掛けられた方なんです!

司馬遼太郎の同名原作を元にし、
NHKが何年も掛けて映像化を説得し、
撮影3年、放送に3年を掛けた伝説のテレビドラマです。

現在は、NHKオンデマンドで公開されている模様です。

このドラマ、歴史ドラマでただでさえ大変なのに、本当に細部にまでこだわってあり、でも、人の成長や、その時代に息づいた人たちの想いが丁寧に描いてありまして、関わった方達の並々ならぬ想いが詰まった作品ですよね。
1話約90分ほどの長いドラマなのですが一瞬で見終わり、続きを待つのがどれだけしんどかったか(笑)超超超大好きな作品です。渡辺謙さんのオープニングのナレーション(の文章の内容も必見!!!)も素敵。

そんな超大作のVFXは、超大変だったに違いないでしょ!!

やっと本題の本について。

その「坂の上の雲」の制作裏側を軸として、この本は進められています。
随所に、著者が仕事上大事にされているモットーや、このプロジェクトで実際に試し成功したこと、失敗したこと、などを熱く書いていらっしゃいます。

例えば、ドラマ「坂の上の雲」のハイライトシーンでもある日露戦争時のバルチック艦隊を破ったとして有名な"東郷ターン"を、いかに再現するか。
実際に、伝説的な場面だっただけにVFXで作るにあたって、視聴者や世界観を裏切らないためにチャレンジした作戦、チームリーダーとして意識された事、などを細かく書かれています。すごいよ。

もうこの他にも多数、面白くて心に刺さるストーリーがありますが、
全てを書き出しちゃうとただの著作権を侵してる事になるので、一部だけご紹介させてください。 (選ぶの難しかった!)

*尚、抜粋は本の順番どおりではないのでご注意を。
*引用ボックスの太文字は、実際の各項目の見出しです。

"分かり合うには「今、ここ」を共有しろ"

分かり合うには「今、ここ」を共有しろ
(略)コミュニケーションツールがいかに発達したとはいえ、最終的にはやはり、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションが不可欠だからだ。
不思議なもので、本当に微妙なニュアンスは、顔をつきあわせ、「今、ここ」という時間と場所の共有がないと、伝わらないものだ。

このコロナが世界を風靡している今の時代、"実際の場所"を共有することは難しいですが、この「今、ここ」を共有するというのは、コミュニケーション上で本当に大切だなと改めて実感します。
筆者が書かれているように"コミュニケーションツールがいかに発達したとはいえ"、例えば文字だけのやり取りだけでは、その人の表情や言葉の運び方(ピッチやスピードなど)までは届けられないもの。そこを、zoomなどを使って「顔を見て」話すことで、グーンと理解出来る事は多いですよね。この隔離された生活だからこそ、人との「対話」がいかに大切か身に沁みている方も多いはず。
日常生活でもそうなのだから、多種多様な価値観やバックグラウンドを持った人たちが一斉に同じゴールへ向かって動くプロジェクトならば、尚更、「顔を見て」のコミュニケーションがいかに大切か想像に難くない。そんな一番大切な事を、改めてご自身のチームの経験からまとめられています。


"苦しい道には「こだわり」と「覚悟」でのぞむ"

苦しい道には「こだわり」と「覚悟」でのぞむ
(略) 手を抜いたり、何かが足りないものは、見ている側に、「なんか違う」と言う違和感として確実に伝わり、視聴者が物語の世界に没入できないという、作り手として許容できない欠陥を抱えた作品になってしまう。
それに、そんな意識の低いものを作っていたら、次がないのは明らかだ。

この項目では、とあるシークエンスがなんとテイク300を超えるほど、修正を何度も重ねたものになったとの裏話を引き合いに出されています。
これだけの大きなプロジェクトならば、煩雑な作業も多く含まれ、1日、1週間、1ヶ月と時間を掛けていても終わらないタスクが槍の様に降ってくる毎日だったでしょうし、実際にその様な事もこの本に書かれています。そんな中で、一つの物事をおなざり(なおざり)にせず、「こだわり」をいかに保持するか、そこにプロフェッショナルとしての覚悟とプライドが垣間見える気がしました。
アーティストやチームを引っ張る人(監督とか)には「こだわり」は必ずあるもので、どんなタスクが降ってこようとも、その「こだわり」は揺らぐものではないのでしょうね。もはや「こだわりって何?これ、普通でしょ」みたいな、「こだわり」は空気の様なものでしょう。そこを言語化し、チームに伝え、実際にゴールに向かって動いてもらうって相当な大仕事です。



"前向きのベクトルがすべてを乗り越える"

前向きのベクトルがすべてを乗り越える
非常に大きなプロジェクトをまとめていくのは大変だ。
(中略)
だからといって、あきらめていたら新しいことははじまらない。
(中略)
そこで、僕が掲げたのは、つねにポジティブであることだった。
「いいものを作りたいんだ」という熱い想いを伝えること。
だたのお仕事・・・・「お金払うのでこれをお願い」という簡素なものではなく、「一緒にチャレンジしていこう」という、前向きなベクトルでパートナーとして仕事をすることを前面に押し出す。

やはり、最終的に人が動き、集まるのは「熱い想い」が根底にあるところ、って事ですよね。(お金/資金も、もちろん大事) 
私も基本"熱い"の大好きなので、こう言ったロジスティックに考えられる人もそのハートを大事にされていると知って、嬉しかったです。
「対人(タイヒト)」で仕事をする意義は、やはり「想い」を共有し、お互いを認め合い、一緒にさらなる成長を目指せるところ。この考えを実際に大きなプロジェクトで用いられて、そうだと言い切られているところが素敵!

*因みに、行動経済学者のダン・アリエリーさんが「仕事のやりがいとは何か?」というテーマで、TEDトークにてお話されてます。リンクはこちら
このTEDトークの中にもで出てくる実験のお話。2つのグループに、同じ作業をさせ同じ報酬(この場合はお金)を与えます。一つのグループにはその作業が終わるとその成果物を保管したまま、また同じ作業を与えます。そして、もう一つのグループには、作業が終わると、目の前でその成果物を壊します。そして、また同じ作業を与えます。
結果、どちらがその成果物を多く作ったか、という実験です。
こちらも面白いですよ。

私が感じ取った「本気で仕事に打ち込む幸せ」

人間は、仕事に対して、金銭的な報酬だけではなく、心理的な報酬といっても過言ではない「やりがい」も求める生き物なんだな、と改めて認識します。
私も日本に帰ってきてから、しばらく仕事がなく一人でいた時に「どうして仕事がしたいのだろう?」と自問自答していました。もちろん生活のために"働かないとい"理由もありましたが(笑)
ただ、もっと根底で何か欠けていた気持ちがありました。
色んなプロフェッショナルと呼ばれる人の仕事への対応や姿勢を目の当たりにしたり聞いたりし、(大雑把に言うと)「仕事がしたいのは、周りに貢献したいからだ」という答えに行き着きました。
*この周りというのは、自分の映画などのプロジェクトももちろんそうですが、大切な友人や家族、仕事の仲間、興味のあるコミュニティ/業界も含んでいます。

仕事がない=> 求められていない=> 貢献できていない。
という構図。

この「貢献できない」が自分にとっていかにショックな事かと気付きました。その後、有り難い事に自分が好きな映像業界でお仕事を頂く事ができていますが、その度に「貢献できる機会」が目の前にある事に感謝の気持ちが湧いています。

だからこそ、自分の仕事が受け止められ、チームに貢献できたと実感できる喜びは大きいものです。「貢献できた」という証も報酬(お金だけでなく反応なども)として得られる仕事やチームに対しては、とことん尽くしてしまいます。そして、ひいては自分への成長にも繋がり、さらにその仕事やチームの作業が向上していくのならば願っても無い事ですね。

それらの結果すべてが「本気で仕事に打ち込む幸せ」なのかもしれません。



そして、随所に書かれていた言葉と意識されていたこと

それは、
感謝。ありがとう。
でした。
この言葉は、とても大きいものですね。

とあるチームでの問題が起こった際、
「そちらに掛かりっきりになれるのは、他のチームがきちんと自分たちの仕事をこなしているから、この問題に集中できたのだ」
と言う表現をされていました。
仕事だからと言って当たり前ではない、各個人の判断やチームの働き。
チームにいるそれぞれの人のちょっとした判断や行動で、結果が大きく変わる。その為には、改めて「ありがとう」と口に出し伝えいく事が非常に大事なんだ、というメッセージを受け取りました。
逆に言うと、ちょっとした機会でも「ありがとう」を言い忘れているトップには、チームは動かされないのかもしれません。
肝に銘じたいと思います。


オススメの本です。
(念のため、このリンクはアフィリではありません(笑))

あ、そうそう、この本にはあのVFX作業のメインでもあった”東郷ターン”を垣間観れる、ちょっとしたトリックが施されていますよー🎵

プロジェクト魂~本気で仕事に打ち込む幸せ~


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