パリ旅行で一番感動した瞬間
友人から「パリの楽しみ方は?」と聞かれて、「朝のジョギング!」と答えたら、少し意外な顔をされてしまいました。でも、これは本当。
昨年の秋、1週間ほどパリに滞在しました。
2日目の朝、目覚めて時計を見るともう8時過ぎなのに、窓の外はまるで早朝のような朝焼けでした。
「そうか、夜明けが遅いんだ」
10月の朝は少しひんやりしながらも、何とも言えない澄んだ空気とオレンジに染まる空。普段はジムトレーニング派の私も、なんだか無性に外を走りたくなって、スーツケースに入っていた数少ない持ち物からランニングできそうな上下の服を身につけて、宿の外に飛び出しました。
土地勘が危うかったので、遠くに見えているエッフェル塔をゴールに、迷わないようにセーヌ川沿いを進んでみることにしました。
走り出して気づいたのは、セーヌ川沿いは地元の人たちのランニングコースになっていること。お水を飲めるポイントもいくつもあり、手ぶらでも死にはしないどころか、とても快適に走ることができます。
身体もいい感じに温まり、気持ちいい汗をかきながら、走ったり、時々歩いたり。マイペースに見知らぬパリの街を駆け抜け、たどり着いたエッフェル塔!
うーん、下から見たら、東京タワーと変わらんな。
そのあたりにいた人たちが、「近くの丘の上にある広場から見るとキレイだよ!」と教えてくれたので、延長戦でそちらの方に走ってみます。
とはいえ、丘の上…ということは、当然ながら坂道なわけで。
ぜいぜい息を切らし、「パリまで来てなぜこんなことをしてるんだろう」と心が折れそうになりながらも、なんとか足を進めます。
そんなこんなで一気に坂道を登りきって、広場の入り口らしきあたりで後方を振り向くと、そこには朝日のビームに照らされてキラキラと輝くエッフェル塔の美しい姿が。
オレンジ色だった空は、いつの間にか透き通った水色に変わっていました。
まだ整わない息を感じながら、
「あぁ、これは死ぬ前に思い出す景色かもしれない」
そんな感覚が体の中から湧き上がってきました。
走りたい、なんて、どれくらいぶりに感じたかわかりません。
海外一人旅の開放感が、普段なら押し込めてしまう衝動の背中を押したのでしょうか。あの衝動がなければ、ガイドブックをコピペしたような旅になっていたかもしれません。
衝動に身体を任せて、気まぐれなゴールに向かって、そこまでの距離や時間もよく分からず、「体力持つの?」という疑問さえ「いざとなればタクシーだ」と開き直って、クレジットカード1枚をポケットに入れて、ホテルを飛び出したあの朝。
今でも「パリどうだった?」と聞かれて、一番に浮かんでくるのは、あの丘の広場から見た景色です。パリが大好きになった時間でした。
この出来事の勢いなのか、残りのパリ滞在期間中も、心が動くような出会いが続きました。
東京で暮らす毎日で、衝動を押し込めてばかりいる自分に気づきます。
そろそろ自分の衝動と仲直りして、大切な思い出を作る機会を逃さないように日々を生きたいものです。