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【展覧会】日本を観たまなざしとは~「特別展 かながわへのまなざし」(神奈川県立歴史博物館)に行ってきた~

先日、神奈川県立歴史博物館の「特別展 かながわへのまなざし」に行ってきました。開催期間は2024年10月6日(日)までです。


行く前は、正直あまりに地味な展示ではないかと思っていたのですが、予想外に(失礼!)面白かったです。居合わせた方々も、じっくりご覧でした。「19世紀のかながわ 外国人はなにを観たのか」という副題がついているのですが、さて何を観たのでしょうか……。


以下、印象的だったものを書いていきます。


・南蛮屏風
南蛮人の使用人として、結構な人数のアフリカ系の人々が描かれていました。


・日本風俗備考(フィッセル)
何か変、の一言です。フィッセルさんの目には、当時の日本はこう見えていたのでしょう。


・<ペリー日本遠征の石版画>の内 横浜上陸(ヴィルヘルム・ハイネ)
今でも横浜開港資料館の中庭に残っている「たまくすの木」が描かれている、有名な絵です。

http://www.kaikou.city.yokohama.jp/guide/tamakusu.html

↑このページに説明および絵が載っています。

今更ながら、なぜにこんなに大勢の群衆が見物人として描かれているのかと思ったら、やはり本来はいないはずの人々でした。もちろんそこには、意図があるわけです。


あくまでも絵なのですから、写真のようにその場の風景が忠実に写されているわけではないわけです(今なら写真も加工できますが)。ハイネが同じ人々を、違う絵に何度も描いているというのは、面白かったです。それだけではなく、「久里浜や横浜への上陸といった歴史的瞬間の場面は、大型の画像として別途製作されています。これらの画像は、その後来日した別の人物たちによってまとめられた日本滞在記や旅行記の挿絵として再利用されます。西洋における”かながわ”のイメージが、ステレオタイプ的にかくさんされていったのです」というパンフレットの文言には、考えさせられました。


その思いは展示半ばの「『日本遠征画集』を”読む”3人の研究者が語るアナザーストーリー」で、頂点に達しました。そうか、そうやって絵を読み込むのか、と。当時の外国人の「まなざし」も、理解できました。


明治の主に神奈川県内の名所の写真も、面白かったです。江の島が「日本のモンサンミッシェル」と紹介されていたことには、なるほどと思いました。鎌倉の大仏様の膝に、何人も人が乗っていたのには驚きましたが、そういう風に親しんでもらった方が、大仏様も嬉しいかもしれません。まぁ胎内巡りで「腹の中がうるさい」ことについて、どう思っておいでかは分かりませんが(^-^;


しかし『日本その日その日』のモースの絵は、可愛いなぁ。大森貝塚を発見した、あのモースです。


フェリーチェ・ベアトが写真に付けたキャプションも、なかなか。横浜は「やがて日本帝国随一の豊かな港都に発展するだろう」と持ち上げてくれているし、「どんなに小さなみずぼらしい家でも小ぎれいに片付けている」と褒めてくれるし、金沢(もちろん横浜の)は「休日をすごしピクニックをするに良い」だし、宮ケ瀬までも訪れているとは。神奈川が大好きだったんでしょうか。まぁ外国人が自由に旅行できるのが、開港場から原則40キロ四方だったという事情はあるにせよ。


生麦事件は有名でも、イギリス人士官2名が浪人に殺害された鎌倉事件は初耳でした。


・横浜焼カップ&ソーサー(井村彦次郎商店、中島則親)
「素地は外側の絵付けが透けて見えるほどうすく、実用には向かなかっただろう」という説明に納得。本当に内側から、絵付けが透けて見えるのです。ただ、ということは、輸出途中で割れてしまう危険性も高かったのではと、心配になりました。


・山水之図花瓶(宮川香山)
宮川香山といえば、超絶技巧の立体的高浮彫ですが、これは浮彫なし。こういう作品も作るのだなぁと思いました。山の間のピンクの夕日が、差し色として効いていました。


なかなか満足して会場を出て、ロッカーから荷物を出しながら、ふと目に留まったのが、展示ケース。存在は知っていたものの、ちゃんと見たことがなかったのですが、立派な獅子頭があるじゃないですか。しかも高村光雲先生作ですと? そもそもお神輿の彫刻自体が光雲?


お三の宮日枝神社の「火伏の神輿」

気づかないって、恐ろしいですね~。これもある意味、「まなざし」の問題です。閉館時間が迫っており、じっくり見る時間がなかったので、次に行く時には、もうちょっとちゃんと観たいと思います。以下に説明があります。



入口のオブジェ


そうそう、今回の展覧会の前に県博でやった「近代輸出漆器のダイナミズム―金子皓彦コレクションの世界―」展のレビューもまだでした。これもなかなか良かったので、出来れば記事にします。まぁこのままお蔵入りの可能性も高いですが(^-^;



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