【展覧会】東京国立博物館特別展「東福寺」に行ってきた
昨日は雨の中、東博で開催中の特別展「東福寺」に行ってきました。
ちょうど上野公園の桜が満開なので、晴れていたら、お花見と合わせて展覧会に来る人も多かったことでしょう。しかし「雨だから出足が鈍いに違いない」という読みが当たり、予想よりはるかに空いている中、ゆっくり拝見することができました。
以下、印象的だったものを挙げておきます。
〇「僧形坐像」(50)
開山の円爾のものではないかという説もあるようですが、特定はされていません。お坊さんの像というより、もはや仏像と言って良いような迫力がありました。
〇「虎一大字」(虎関師錬筆)(77)
「虎」という字そのものであり、虎の座っている姿であり、虎関師錬自身の肖像とも言われるそうです。展覧会でポストカードを買うのはそろそろやめようと思っているのに、これだけは買ってしまいました。写真は、以下のサイトの「第2章」からどうぞ。
〇五百羅漢図(吉山明兆筆)(94)
展覧会のポスターにも使われている作品ですが、マンガで絵解きされているので、とても分かりやすいです。分かりやすすぎて、絵そのものの良さに集中できない気もしましたが。
その中でも一番印象的だったのは、羅漢さんたちが地獄の餓鬼たちに食べ物を与えているシーン。キャプションに「三色団子のようなものを降らせている。美味しいかは不明」という内容のことが書かれていたのですが、一見どこに三色団子があるか、分かりませんでした。よーく見たところ、確かに小さい三色団子のようなものがたくさん書かれていたのですが、美味しいかどうかより、餓鬼的にはもっと大きい団子の方が嬉しいんじゃないかなと思ってしまいました。
〇十六羅漢図(141)
これは絵そのものがマンガチックな羅漢さん方。すごい技術で描かれているはずが、ヘタウマ系に見えてしまいます。写真は以下のサイトの「第4章」でご覧ください。
〇釈迦三尊図(愚谿筆)(150)
一見普通の釈迦三尊図なのですが、近くにいた二人連れの方の会話で、思わぬ魅力を発見することになりました。「これさぁ、あの……チコちゃんの……」。名前が出てこなかったようですが、おっしゃりたかったのは、木村祐一ですよね。確かにお釈迦様が、キム兄に激似でした。髪型といい(キム兄は頭頂部に肉髷はありませんが)、目が細いところといい……。もはやキム兄が座っているようにしか見えず、またもや絵そのものに集中できなくなりました。一度そう見えてしまうと、別の釈迦三尊図(137)のお釈迦様も、キム兄に見える始末。
〇禅院額字ならびに牌字(張即之筆)
円爾が博多の承天寺を開堂するに際し送られた、手本用の字ですが、やはり「方丈」が一番良かったです。以下のサイトの「第5章」からどうぞ。
〇通天橋からの紅葉(再現)
これ、結構がんばっている方だと思います。写真撮影可。撮った写真をSNSにアップしてもらい、来場者を増やす戦略ですね。まぁ、載せますけど。
〇釈迦如来(光背化仏)(東福寺旧本尊)(198)
「東福寺旧本尊」コーナーも、撮影可です。
これ、普通に一般的な仏像として通用する大きさなのです。これが光背化仏って、どういうことかと思っていると……。
〇仏手(200)
左手だけで2メートル以上あったそうです。ということは、全身揃っていたとしたら、確かに上のお釈迦様が光背に付いていても不思議はないわけですね。
〇連弁(199)
説明なしだと、連弁だとは分かりませんね。
〇四天王立像(202)
多聞天のみ、運慶作かもとも言われるそうですが、確かに顔立ちに、昨年さんざん見た運慶仏の香りがします。
〇迦葉・阿難立像(201)
日本人離れした(いや、もともと日本人ではないけど)、独特の御顔立ちでした。阿難のまなざしが、結構鋭いです。
〇二天王立像(206)
ある意味、一番印象的だったのは、この天王立像かも。向かって左側に置かれていた天王は、見た瞬間に表情といい、ポーズといい、「蔵王権現だ」と思いました。なぜか右側の天王には蔵王権現感はないんですけどね。
〇金剛力士立像
この金剛力士立像、2体とも剣を持っています。私が不勉強なのかもしれませんが、剣を持っている金剛力士って、珍しいのではないでしょうか。
感染症対策で、「なるべく90分を目安にご覧ください」となっているのですが、何と全てを観るのに約2時間かかりました。出口右側の窓から、見事な桜が見えました。
平成館のそばの桜もきれいでした。
時間も1時近くで、お腹も空いたので、東博内の「ゆりの木」でお昼に。ホテルオークラのレストランなので、一応お味は確かです。私は東福寺展にちなんだスペシャルメニューの「鴨南蛮そばとミニかき揚げ丼」のセットを選択。
鴨南蛮そば、大変美味しかったです。しかしかき揚げは、もう一回り大きくても良いのではと思いました。ご飯の量とのバランスが良くない。鴨肉やシシトウの天ぷら、白和え、お新香をおかずに食べましたけどね。お値段1900円は、ちとお高いと思います。
お腹がいっぱいになり、元気も出たので、総合文化展(常設展)にも突入。驚いたのは、東福寺展より総合文化展の方がはるかに混んでいること。主に外国からのお客様です。東福寺展は大人2100円(総合文化展も込み)、総合文化展だけなら1000円とあれば、そりゃ外国からのお客様方、大喜びですよね。
この四天王立像は「大仏殿様四天王像」と通称され、東大寺の大仏殿の像に姿形を似せて作られているそうです。
東大寺に行った時の記事は、以下の通り。
菱川師宣の「見返り美人図」の振袖を複製したそうです。
「博物館でお花見を」と題して、2023年4月9日まで桜が描かれているなど、お花見関連のものが要所要所に出ています。材質が桜という、やや苦しいものも混ざっていますが。
鳳輦とは、天皇が行幸の時に用いる乗り物です。明治天皇が東京に行幸される時に使われたものだとか。結構大きいので、重そうです。
本館の大階段の上にある大時計。昭和13年のものだそうです。意外と撮る機会がないので、パチリ。
「日本文化のひろば」は体験型コーナーで、今は浮世絵の製法を理解する手段として、スタンプを5回(だったかな)重ねて、写楽の有名な浮世絵を作ることができます。
ちゃんと枠にはめて押したのに、ちょっとずれているのが残念ですが、スタンプを押すだけとはいえ、これを自分の手で作れると、なかなか嬉しいです。外国からのお客様、特に大人の皆さまが、大喜びで作成しておいででした。
この後、同行した友人との相談の上、東福寺展に再入場しました(当日のみ再入場可です)。キム兄似のお釈迦様や蔵王権現チックな天王などを友人に見せたかったので。
出たら雨も上がっていたので、お庭に行きました。お庭に入れる期間は限られているし、桜も見頃だしね。
キリがないので、桜の写真はこの辺で。
ちょっと、おおと思ったのはこれ。
これ、もともと法隆寺にあったものなのです。法隆寺宝物館で展示されているもの同様、法隆寺献納宝物の1つですね。
帰り際、私のわがままで、東洋館の「王羲之と蘭亭序」をちらっとだけ見ました。
王羲之は書聖と称され、楷書・行書・草書の書体を完成させた「書道の神様」のような人です。彼の書は非常に美しいことで知られ、それを愛した唐の太宗が、真筆を自分の手元に結構強引に集めた上、自分の副葬品にしてしまったため、現存していません。皇帝は死んでいるんだから、その指示に従わなくても良いのにと思ってしまいますが、そうはいかなかったんでしょうね。よって王羲之の書は、拓本や模写でしか残っていません。
説明が長くなりましたが、資料集とかで見る王羲之の書って、もちろんきれいな字なんですけど、何か心に響くものがないんですよ。それが、資料集の写真だからなのか、真筆ではないからなのかが以前から気になっており、せめて拓本や模写の現物を見れば、印象が変わるかなぁと思って、見にいったわけです。
見てどうかといえば、もはや疲れていたのもあるのか、結局印象は変わりませんでしたね。きれいだけど、心に響くものは、どうも感じられない。真筆を見たいものですが、太宗のお墓の中で朽ち果てているでしょうね。
太宗、何てことをしてくれたんだ、という結論でした。
なおnoteとは別に、主にマンホール蓋をご紹介するブログをやっているのですが、東博オリジナルのマンホール蓋の記事は、以下の通りです。