2足目のブーツ作り
朝の6時前に起き出してきて、猫のマールにカリカリのご飯を用意して、わたしはオートミールのお茶漬け。
それから、お留守番をお願いするマールに、彼女の好物のチュールで我慢してもらう。
前に飼っていた犬のポッポなら、こんな餌で誤魔化されたりしなかった。わたしが着替え始めると車の前で待っていた。
マールはチョロい。
大型の台風が近づいているせいだろう。車窓から見える太平洋の波が高い。海全体が膨れ上がって見える。
テトラポットを幾重にも積み上げているが、高潮や津波が来たら、どんだけの踏ん張りを見せてくれることやら。
ハザードマップでは、わたしの家の周辺は3m~5mの浸水予想。治水工事もされたが、果たしてどうやることやら。
海から川を逆流して水が流れ込んでくるのは想定内で家を建てた。でも、自然を舐めたらあかん。
そんなことを考えながら、津波は無縁の山の工房へ向かった。
前回から冬に履く黒のブーツを作っている。皮を裁断し、靴の後側にあたる部分を縫ってから前回は終わった。
今回は、そのつづき。2枚の皮を縫い合わせていたので、その上に細長い皮を当てて縫う作業をした。
見た目はバッチリ。しかし、この細長い皮の下の縫い目は悲惨だった。
皮を縫い合わせるとき、「攻めてよね!」と師匠に言われていた。しかし、1足目を作るときに、際を攻めすぎて縫い合わさっていなくて、穴があいた。
だから、今回は攻めが甘かった。そのために縫い目を叩いて、皮を平らにする作業をしていたら糸が切れた。
前回の失敗から学んだことが仇となり、失敗からの学びの難しさを知った。でも、同時にリカバリーの方法を学んだ。
おとなしく黒のブーツなら内側も黒にする、なんてことをやらないわたし。というか、 どうも県民性のようだ。
師匠は東京にも工房を持っているが、東京の人たちは当たり障りのない色の取り合わせが多いと言っていた。
わたしなんぞは、どこに「個性」を入れるか悩むタイプ。今回は、ピンクっぽい赤と黄で自分らしさを出してみた。
靴を脱がないと見えない内側だけど、気分があがる。
糊をつけてから裏表を貼り合わせて、丁寧にミシンかけをしていく。少しくらい針の目がよたろうが、他人の靴に顔をくっつけて見る人はいない。それでも、綺麗に越したことはない。
これで、靴の後ろ半分ができた。靴の後面の絶妙なカーブ。これが美しいと足そのものが綺麗に見える気がする。
貼り合わせてたら、内側のピンクっぽい赤の皮を、縫い目ギリギリで切り落としていく。そうすることで履くときに引っ掛かりがなくなる。
最後に、足首に当たる皮の端っこを専用糊で磨いて、美しさと強度を与えた。
当たり前のことだが、丁寧に仕上げると履き心地もいいし、長持ちする。何より、ただの皮が革になる気がする。
もちろん、毛のある皮を処理して革になっているのだが、そこに自分のひと手間が加わることで、自分の手の温もりや手の脂なんかが混ざりあって、わたしだけの「革」に生まれ 変わった気がする。
次回は白のブーツを作ろうと目論んでいる。真っ白なブーツで来年の夏は弾けるよ。