わたしで生きる(わたしはアリ?それともトンボ?)
伊藤忠商事の元社長だった丹羽宇一郎さんの本に「アリとトンボと人間」という花留さんお気に入りの話がある。
「ワタシハ、アリニナレル。
ワタシハ、トンボニナレル。
シカモ、ワタシハ、人間デアル」。
アリのように
黙々と勤勉に働けるか。
トンボのように複眼で
ものを見ることができるか。
何より血の通った温かい
人間の心を持つことができるか。
・・・
自分という人間を振り返るとき、自分は今、どこの段階に達したのかなあと、丹羽さんの「アリとトンボと人間」の話を知ってからは考えるようになった花留さんだ。
「まだまだ、私はアリかなあ~」
アリ、トンボ、そして人間というこの3つのステップには、社会人として進むべき段階を示しており、優れたリーダーへ成長していくプロセスでもある。
アリの時期とは、入社してから10年くらいの間のことだ。社会人としては、まだヨチヨチ歩きのひよっこの一年生。目の前の物を運ぶだけで精一杯ということだ。
まだまだ視野も狭くて、広く世の中を見渡すこともできない小さな存在だ。まるで足元を這うアリのようだが、アリのようにコツコツと働き、経験を積むことで仕事に関するさまざまな知識や常識を身に付けていく。
ただ、その多くは言葉で表現できないような「暗黙知」であり、そのままでは概念化できない。そこで勉強を通した「形式知」を得ることで経験と理論が結びつき、トンボのような複眼的な思考を身につけることができるということらしい。
ふむふむ
新人看護師として就職したとき、看護学校でこれでもか!と知識を詰め込んでいたのに、いざ臨床現場に入ると知識だけでは役に立たない。ひたすら先輩看護師の技術を盗んで、経験を積むしかなかった。
そのうち、知識がなくても手先が器用な人や要領のいい人は頭角を表してきて、頭はいいのに不器用な人は居場所がなくなってきて、自信を失くして離職していった。
丹羽さんはアリの時期は10年と長いスパンで人の成長をみているけれど、花留さんのいたような人員がカツカツな中小規模病院の人材育成は、アリの間に新人を踏み潰してしまいそうだ。
実際、4月に中旬に急性期病棟に配属され、遅くても9月には夜勤ができるように担当の看護師に鍛えられた。
社会人とは斯くあるべきとか、人として大切なことは○○だ、みたいな新人教育も少しはあったけれど、それよりも、"一人前"と数えられる看護師に育成することに必死のように思えた。
看護の技術以上に人柄とか人間性が大切だと思うのだが、人柄や人間性で注射針を上手にうまく刺せるかと聞かれたら、、、。
技術と人間性、どちらもバランスよく育てる職場が理想なんだろうが、花留さんが長年、関わってきた医療現場はいつも戦場だった。コロナ禍の現在は尚更悲惨な気がする。
ブルブル
・・・
トンボの時期とは、30代前半から40代前半までを指しており、仕事の何たるか、社会とは世の中とは、そんなことが広く分かるようになる時期だ。
アリの時期を卒業しトンボになると、もっと色々な視点で多角的に物事を見る(観る)力を身に付けなければならない時期に突入だ。
トンボのように、クルクルとあちこちから様々な可能性を探ろうとする姿勢、あらゆる角度から多角的に仕事を検証する視点を持つことが望まれる。
こうなると、アリの時期以上に更に勉強して自己研鑽を積まないとならない。本当に一生勉強なんだなあ~。
花留さんにも覚えがあるが(と言っても自分がトンボかどうかは不明だけど)、アリの時期の勉強よりもおもしろくなってくるのが、実はトンボの時期だということ。
基礎的な知識や経験、そして、周囲の人的な資源も手に入れたこの時期は楽しい!
そして、学び続けることで、私たちは人間の時期に達すると著者は述べている。
・・・
人間とは、血の通った温かさ、自分自身をコントロールできる力、部下や後輩を思いやる優しさ、皆をグイグイ引っ張る力強さ、自分ではなく他者を思いやる「利他の精神」を持つこと。
もしも、人間まで到達できたら、自分自身の過去のすべての経験を土台にして、不退転の心意気で人間を生ききるだけだ。
自分の両足は、現実にしっかりと踏みつけられて、足元からわき上がる自信は強固な信念となっているだろう。
ふむふむ
私は、アリからトンボになれたかな?
それとも、トンボになりかけのヤゴ?
丹羽さんは、すべての人が「アリ・トンボ・人間」の成長段階を通るが、すべての人が、必ずしも人間になれる訳ではないと言っているのだ。
あわあわあわ
トンボで終わる人もいれば、亡くなるほんの数日前に、人間になれたりする人もいる。
それでも、大事なことは人間の基礎をつくるアリの時期をどう過ごすかだ。
どうも、自分の一生は、アリで終わりそうな予感がする花留さんだが、アリにも羽のあるアリもいるので、少しでも高く地面から飛び上がってみたいもんだ。
ひょいと1mくらいなら、軽々と飛べるだけのアリの下積み時代をやってきた自信はあるんだけどなあ。
いつか、私も人間になりたい、、、。