Money!Money!Money!
外国にルーツのある生徒を担当したことある人なら一度は聞いたことがあるセリフがあります。
うそみたいな本当の話です。だからといって高校が大学受験する前に、親に銀行預金の通帳を提出させるわけにはいかず…数年に一度このような悲劇が繰り返されます。夏の三者面談の時は、お金あるって言ったじゃん!?みたいなこともよくありますね。
でもやっぱり難しいのです。
お金ってそんなにぽっとは出てこない
日本生まれのお子さんはおそらく生まれた直後から貯金をしたり保険をかけたりして小学校・中学校・高等学校・大学に通えるように準備をしていると思います。でも、外国にルーツを持つ子どもたちとその親は、日本に来ることで大幅に人生のプランが変わってしまいますし、多くの場合想像以上のお金がかかることになります。高校入学したころに、日本の大学では文系で450万円くらいかかりますよ、(学校推薦や総合型が多いので)3年生の11月には80万円くらい一気にお金を払わないといけないですよって言われても対応できないのが普通だと思います。18年かけてお金をためている人と3年でそこまで到達しなければならないのであれば、大きな差があります。
支援を受けられる人には手厚く、支援が受けられない人はますます薄く
「定住者」以上の在留資格を持つ生徒は、日本学生支援機構の奨学金の対象になったこともあってか、比較的その後自治体や企業の奨学金でも対象となることが増えました。一方で、家族滞在に関しては今のところ「放置」といってよいでしょう。
就学資金が不足した(不足すると予見される場合)次のように対応しています。
①入学前の資金
定住者以上であれば
1)自治体の母子父子寡婦福祉資金貸付金制度の修学支度金
2)自治体の社会福祉資金貸付制度の教育支援資金
3)市町村の修学資金貸付
4)大学独自の減免、納付猶予
→明海大学や聖学院大学は「給付型奨学金」に採用された場合
(あるいは申請をしている場合)、授業料の納付を申請すれば猶予が
認められる。
などを検討していきます。
これでダメ、あるいは、家族滞在の場合
5)国の教育ローンの検討をします。
ただ、この場合遅くとも夏休みには申請を始めなければいけませんし、親が銀行に出向いて手続きをしたり、書類をかき集める必要もあり、ハードルは高いです。
②入学後の資金
定住者以上であれば
1)日本学生支援機構の奨学金(給付・第1種・第2種)
<普通ここにひっかからないことはない>
家族滞在
1)大学独自の特待生制度にかける
例)東京国際大学(総合型・E-track)、聖徳大学(英語資格優遇)、
桜美林(外国学生選抜)、嘉悦大学(英語資格優遇)、
川村学園女子(英語資格優遇)、明海大学(総合型)
→結果が出ないと減免額が分からない、授業料免除というものの、
授業料を抑えて、施設費が高めな大学がもあり、あまり経済的軽減
につながらない学校もあります。
また、留学が必須のカリキュラムになっていると減免額を食いつぶ
す勢いでお金がかかるので、効果が薄れることがあります。
2)国の教育ローン
3)生徒自身がアルバイトをしてお金を稼ぐ
なお、難民に関しては別途制度がありますがここでは触れません。
家族滞在というだけでいかに選択肢が狭まってしまうかがお判りいただけたと思います。
まとめに代えてーQ&A
Q お金ないなら働けばいいじゃん。
A お金がないからといって教育に投資しなければ、さらに経済的な困窮度は増していきます。日本が、外国にルーツをもつ子どもたちが日本に来てよかったと思ってもらえ、未来ある若者の可能性を与えることができる国であってほしいと思っています。
Q 大変なのはわかるが努力不足では?
色々な優遇措置を受けられなかったり、進学資金が自力で確保できないのは、本人や親の努力不足と片付けてよいのでしょうか?
成績基準がある場合、第二言語である日本語で授業を受けてテストを受けて成績がついています。日本語母語話者の生徒との比較が本当に妥当で、実力を適切に評価していると言えるのでしょうか?あるいは、特別な科目を履修すると、成績に上限をつけているケースも多くみられます。その結果、丁寧に指導をしているように見えて、外国にルーツをもつ生徒を不利な状況に追いやっている可能性すらあります。
Q 日本語ができないから、大学なんていけるわけがない!
日本語を学習言語とした場合、母語話者と同等になるのは5~7年かかるというのはよく知られた話です。中学校1年生で日本へくれば、早くても高校2年生でやっと追いつくくらいです。ですから、長く教育を受けることで、不当な評価を覆し、自らの能力を最大限高めることができるのではないでしょうか?