第45話:満場一致のパラドックスと同調圧力
満場一致は民主主義の理想形、なんと美しい結論!なんて思っていませんか? でも少し考えればわかりますが満場一致なんて怪しいものです。考えてみてください、学級会で「この意見に賛成の人手を上げてください!」とか言われたら反対意見を持ってても手をあげちゃうでしょ? そして満場一致になっちゃうでしょ? それがまぁ、大問題なんですよね‥‥。
てことで今日はそんな「満場一致のパラドックス」についてのお話をしていきます。 実はこの問題、もう結論が出ています。すなわち「満場一致の結論は信用できない」。これが「心理学・論理学」上の常識です。
じゃ、このパラドックスについて掘り下げていきましょう。この件についてはちょっと面白い研究があります。イェール大学の心理学者アーヴィング・ジャニスが著書の"Victims of Groupthink,"で1972 年に言及したんですが、その件について下記のようなわかりやすい例で考えてみましょう!
とある日、銀行強盗が発生しました。 白昼発生した大胆な犯行だったため、警察は威信をかけ徹底した調査を実施しました。そしてその結果、容疑者を6 人まで絞り込むことができたのです。 あとは10 人の目撃者にだれが犯人かを選んでもらうだけの状態まで追い詰めたのです。 そしてその結果、目撃者10 人が10 人A 氏を犯人と断定しました。そして警察はA 氏を逮捕して事件は解決したのでした。
はい、これを読んで何がおかしいの? 手を上げてください。はい、まんまと引っかかりましたね。そうこれが「満場一致のパラドックス」。これが心理学上の罠なのです。
実は人間の記憶はあいまいです。じつは、なにも「バイアス(偏見)」がかかっていない状態であれば、 どんな自信をもった目撃者がいてもその正答率は52%程度しかないことがわかっているのです。つまり10人の目撃者が10人ともA氏と答える可能性はほとんどないのです。
しかし現実は、10 人の目撃者が10 人ともA 氏が犯人と考えた。この興味深い事実が示すことは下記2点。
A.「強いバイアス」によって、判断を誘導された
B.「同調圧力」によって、判断を誘導された
この2つなのです。さて、話を学級会に戻しましょうか。ね、小さい頃の記憶を思い出すと、色々なことが見えてくるでしょ? そして満場一致の結論とういものがいかに歪んだものか見えてくるでしょ? ま、日本の社会なんてそんなもんなんですよねw
てことで、もう少しここで視野を広くしてみましょう。世界に目を向けると、日本の組織は「この傾向」がとても強いと言われています。よく日本の民主主義は名ばかりで、日本こそが最も進んだ「社会主義国」だと主張する学者がいますが、その論拠の1つがこの点なのです。つまり日本は「同調圧力」が強すぎるのです。
その結果、なにがおこるのか? 答えは単純です。同調圧力が続く限り、組織はなかなか変化をすることができません。その結果、組織は老いさらばえ、滅んでいくのです。そう主張したのが、前述したアーヴィング・ジャニスの論文の主張なのです。
では、そうならないようにどうすればいいか? じつはそれにもある一定の結論が出ています。最後に「満場一致」が出た時にどうしればいいか? その対処法の例を紹介しますね!
① 批判的な意見を歓迎する環境作りをする
② 結論を先に提示しない
③ 少人数のグループに分けて議論を行う
④ 会議において異議申立担当(Devil's advocate)を最低一人設定する
⑤ 全員が賛成、あるいは全員が反対、という事例は存在しないとの原則に立ち、もし全会一致が起きた場合、誰かが議論の過程で意見の表明を控えた可能性があると考え、採決を無効にし、議論を振り出しに戻す。
うーん、どれもごもっともですよね。でも、これを知っていても実施できないのが人のサガであるし、日本人のサガなんですよね。てことで、今日もどこかで「同調圧力」による「満場一致」が大量生産されているというわけです。ちゃんちゃん!
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