パンとルパンと秘密の場所
先週のある日、いきなり雷に打たれたような体調の崩し方をした。
具合は悪いくせに、すこぶる食欲はあった。
それも、お粥やおうどんみたいに優しいものじゃなくて、炭でジュージュー焼いた骨つき肉みたいなものが欲しいという。
ハハそんなアホなと思いつつ、そうだ、こういうときは欲しいものをガツガツ食べるに限る!と確信したのにはミーハーな理由がありました。
話がそれるようでつながっているんですが、好きな映画のワンシーンに、ルパン三世のカリオストロの城があります。ルパンがボロボロになってベッドに寝ているんだけど、血が足りねえ、食いもん持ってこい!という場面で、チーズとかハムとかパンとか、ワインもあったかなぁ、とにかくガツガツもりもり食べて飲んでいるのがスカッと気持ち良い。
体調を崩したけど食欲があるとき、どうしてもそのシーンを思い出してしまいます。(これだからアニメーションが日常生活に及ぼす影響力はすごいなと感心する)
そのシーンを思い出しながら、好きなものを、好きなだけ食べる。ミーハーなわたしを客観視しているわたし自身の目線をちょっと小っ恥ずかしく思いながらも、食べ続ける。そんな風に食べて飲んでぐっすり眠ると、次の日にはほどよく元気が戻ってくるのです。
食べ物・飲み物に限らず、本当〜に欲しいものを欲しいだけ摂取するのは、けっこう的を得た養生方法なんじゃないかしら。
そういうわけで先週の具合が悪い日のお昼、骨つき肉はなかったので、買っておいたハード系のパンをがぶがぶ食べた。
あんことカスタードクリームをサンドしたやつと、いちじくとかくるみがいっぱい入ったやつ。ワインじゃなくて、お茶をぐびぐび。
血が胃袋に集結して、頭がぼーっとし、身体のよどんでいたところがゆるゆるになったような気持ちになる。そうやってしばらくたらたらしていたら、少しづつ身体の細胞が盛り上がってきて、「何か、予期せぬ新しい刺激が欲しい!」という衝動がどこからともなくやってきた。
まだ人の多いところに行く気はしないけれど、当てもなく電車に乗って、気の向くままに歩きながら不意に見つけた心ときめく場所に巡りあいたいような、そういう感じ。
我ながら現金な思考回路だなぁ。
そうして、残り香みたいな気だるさも楽しめるくらいに具合が良くなったので息子と散歩に出かけある日、まさに心ときめく場所に出会った。
求めていた場所とあんまりにもドンピシャだったことに興奮して、「え、え?」と道端でひとりごちてしまった。息子もその場所を気に入ったみたいで、ぺちぺち可愛い自慢の歩きを披露してくれた。
「ここへ来るために体調を崩したに違いない!」と、ちょっと無理矢理だけど至極前向きな結論に至りながら、ひとりムフムフしたのでした。
(ほんとにいい場所だったから、しばらくの間は秘密にしておきます)