日報 4月4日 “◯選”にとらわれない
記入者:かくなみ みほ
例えば、あなたの地元へ遊びに来た友人が、
「よかったら街を案内してよ」と言ったとします。
あなたなら、どんな風に地元の街を案内しますか。
「〇〇町で隠れ人気のカフェ5選」
「天然酵母のパン屋で食べるべき3種」
「女子のソロ飲み行きつけ店10選」
こういうネット情報、調べればすぐに見つかります。
サイト場で語られている商品の価値は、
なんとなく万人から認められているような気がします。
確かに、素敵なお店や場所なのでしょう。
だけど、
便利なまとめサイトに自身の感性を預けてしまうのは、
少しもったいないようにも思うんです。
事前情報なしに真っ向から店や場所を味わうという機会は、
近頃とんと少なくなりました。
入るのに勇気がいる場所って、わたしは結構ありました。
店先には看板だけしかなくて、中の様子がまるでわからない喫茶店とか、
電気がついている様子はないけど、のれんはかかっているラーメン屋とか。
そこでは何が起こるかわからない。けれど、
場所の空気や時間を、剥き身の自分で味わえるんですよね。
そういう店や場所は、思い出に深く濃くしみこみます。
だからでしょうか。
ここぞという時、友人を連れて行きたくなるんです。
自分が剥き身で味わった感覚は、
自分をこの世でオリジナルたらしめる道しるべの一つだと思います。
だから、世のメディアが言う“3選”や“5選”じゃなくて、
剥き身の自分が味わった感覚を大切にしたい。
その中でもとくに欲望をかきたてられる場所があるなら、
そこが本屋でも、パン屋でも、工具店でも、写真スタジオでも、
そここそ自分の“ベストプレイス”なんでしょう。
スペシャルなどこかで、
誰もがハッピーになれることをする。
それもいいです。でも、
どこにでもある風景の中で、
誰もやったことが無いようなことをする。
そうやって「無」から「有」を取り出す遊びは、
まるで魔法のようで、おもしろいですよ。