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ひとり親は、ワクチンが打てなくても自己責任なのだろうか。あまりに酷い健康格差が浮き彫りになった話

こんにちは。マーガレットこどもクリニックの前田晃平です。

今年私たちは、新しい挑戦をしました! インフルエンザワクチンをうつ人に、任意で通常の料金(4,000円)に500円を上乗せしていただき、ワクチンをひとり親に“プレゼント”する企画を実施したのです。

実は私たちは、これまでも経営努力の範ちゅうで、安価にインフルワクチンをひとり親家庭に提供してきました。2019年は1,000円、2018年は無料です。

でも、今年は新型コロナウイルスの影響で収入が激減……😢 持ち出しでの実施は厳しくなりました。でも、なんとか今年も継続したい……! そこで、患者さんからの寄付という形で実現したのです。この寄付を原資として、ひとり親家庭の親子どちらでも一人500円でワクチンをうてます。

この取組は多くのメディアで取り上げていただき、結果、本当にたくさんの方々にご寄付をいただくことができました。感謝感激雨霰です。

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皆さまからの寄付のおかげで、多くのひとり親家庭に安価でワクチンを提供できて、本当によかった! 一方、意外な発見がありました。それは、多くのご家庭が、都外から遠路はるばる来られたことです。

渋谷区外からの方が多くなることは、想定内でした。渋谷区では、子どものワクチン接種は補助が出るからです(大人分は出ません)。でも、都外は意外でした。だって、そもそも来院に時間がかかるし、電車賃だってバカになりません。それを押してなお、わざわざ来てくださるとは。

子どもと一緒に来院されたお母さんたちにお話を伺ってみると「自分が倒れるわけにはいかないので……」と、異口同音におっしゃていました。

インフルエンザは、ひとり親にとって極めて深刻な病気です。もし子どもがかかってしまうと、重い場合は1週間近く仕事を休ませねばなりません。非正規雇用だったら、それはそのまま収入減に直結し、生活に大打撃です。自分がかかってしまったら、事態はさらに深刻です。だって、いったい誰が子どもをみてくれるのか……!?

それは、わかっていました。だからこそ、私たちも小さなクリニックながら、できることをやってきたのです。インフルワクチン接種は、本来ひとり親にこそ必要です。でも、遠くから来られる方がこんなに……

嫌な予感がして、ちょっと調べてみました。すると、不安が的中。ひとり親家庭、とりわけ、母子世帯の健康格差が酷いことになっていました。

全日本民主医療機関連合会に加盟する小児医療を扱う事業所が協力し、2014年度の675件のケースを分析。結果、母子関連世帯の貧困率は群を抜いていました。そして、貧困世帯のインフルワクチンの未接種率はなんと非貧困世帯の3.4倍、受診控えは4.3倍……

本当はインフルワクチン接種だってしたいし、体調が悪くなったら病院に行きたい。でも、生活が苦しいからそれができない……。そんな現実が浮き彫りになっていました。

参照元:全日本民主医療機関連合会調査「生まれ育つ家庭で健康格差抱える “貧困と子どもの健康”小児科医たちが調査」

医療とは、本来、その人の生活環境に関わらず、必要な時に受けられるものなはず、少なくとも、そうあるべきです。もちろん、それは理想に過ぎなくて、現実は厳しいことは承知していました。でも、ひとり親にとって必要不可欠なインフルワクチン接種とか、そんな必要最低限の医療すら、もはやこれだけ格差が生じてしまっていたのです。これが、日本の現実なのか……。

クリニックに来てくれる、お母さんたちの声が、本当に切ないです。

毎年のインフルエンザ予防接種。親子3人で1万円超えていました。自宅からは電車に乗って1時間かかりますがそれでもマーガレットこどもクリニックさんに来た方が経済的です。今回はじめてでしたが院内も綺麗でスタッフさんも優しくてよかったです。来年もご支援いただけるのであればお願いしたいと思っております。ご寄付いただいたみなさまありがとうございました。

私は子どもが5人いるシングルマザーです。毎年、インフルエンザワクチンを接種したいと思いながら、かなりの金額になってしまうため諦めていました。新聞で拝見するまでは、「受験生の子だけにしようか、持病のある子も本当はうちたい、いやいや昨シーズン異常行動をおこした子にした方が良いかしら」などと考えていました。ただ、年末の物入りの時期であることや、受験生もいるため、実際誰も接種できずに終わったと思います。本当に感謝しております。どうもありがとうございました。毎年接種しない理由は金銭的な理由だけなので、できれば自治体でひとり親家庭の方や市民税非課税世帯の方、障害をお持ちの方々は無料か低額で接種できるようになると良いなと思っています。

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私たちマーガレットこどもクリニックは、『親子の「つらい」に共にたちむかう』のがミッションです。つらい思いをしている親子のために、やれることはなんでもやりたい。今までだって、そうしてきました。

でも、本当に悔しいけど、私たちは日本の片隅にある小さなクリニックに過ぎません。私たちだけでは、この医療格差を解決できません。

こんな時こそ、ぜひ政治・行政に動いていただきたいです。これは、深刻な人権問題であるばかりでなく、極めて合理的な投資でもあります。上記の調査でも指摘されていますが、貧困世帯は受診控えやワクチン未接種が多い中で、病状が悪化してからの入院は非貧困世帯の2倍です。つまり、今の状態は、結果的に多くの税金がかかっています。保護者、もしくは子どもがインフルにかかって職を失ってしまったりすれば、さらにコストがかかります。

ひとり親世帯は受診したくてもお金がなくて叶わず惨めな思いをし、社会は、みんながインフルワクチンを接種できていればかからなかったはずの多額のコストを支払っています。

今の状況は、みんなが不幸だと思います。

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